税理士業界におけるITの進展(新米税理士のための自己啓発ガイド Vol.10)
税理士法人SBL
八木 正宣
2021/10/20
本シリーズでは、税理士になったばかりの皆さんが一人前の税理士になるために必要なノウハウを紹介していきます。第10回目となる今回は「ITを活用した税理士業務の効率化」について取り上げます。
ITを業務に活用しよう
「IT」とは情報技術のことで、コンピュータやインターネットをベースとした情報システム、ソフトウェアなどの概念です。仕事や生活の様々な場面でITは進展し続けています。税理士業界も例外ではありません。
1.税理士業界におけるITの進展
税理士業界のITは、
へと進展してきました。最近のトピックスは「Fintech」「AI」「マイナポータル」です。
FinTech(フィンテック)とは、Finance(金融)とTechnology(技術)を掛け合わせた造語で、預金取引やクレジットカードの利用履歴を集約して、送金や融資、クラウド会計や会計ソフトに展開するサービスが既に導入されています。
またAI(人工知能)を活用し、次のような新しいサービスが始まっています。
AIは今後も、大量の情報から多くの情報処理がなされ、医師が行うような病気の診断や、裁判官が下す審判、交通規制の最適化による渋滞緩和など様々な分野に今後生かされるでしょう。
令和3年2月よりマイナンバーを利用した「マイナポータル」の本格運用が始まりました。マイナポータルから税務申告や会社設立に必要な情報を入手することができます。
2. IT社会の進展のために税理士が果たす役割
2014年に英オックスフォード大学で、AIに代替される職種について考察した論文が発表されました。いずれ無くなる職種として税務会計サービス業が取り上げられています。
確かに、より高性能のコンピュータ、より高速の通信回線、大量に蓄積されたデータが活用できるインフラの整備などの進展をみれば、AIが単純な記帳代行や税務書類作成などの税理士業務を代替していく可能性は否定できません。
しかし、AIが完全に業務を完遂するようになるまでには時間がかかると思われます。例えば会計ソフトにおける勘定科目の自動判定も精度が不十分で、運用面で人の判断が必要な状況です。
また、AIでは代替できない分野も残されています。人間の感情に合わせて判断することがAIには不向きと思われます。企業経営者への助言・指導や相続における遺産分割のアドバイス、税務当局への対応などはAIで代替するのは困難でしょう。
ITの進展は社会をより効率的なものにしてくれます。税務・会計の分野でのIT活用の旗振り役としての役割が税理士に求められています。一方で、将来に向けて縮小するであろう記帳代行・税務書類作成業務から、コンサルティング業務へのシフトが課題となるでしょう。