提出期限は毎回ドキドキです!<税理士のヒヤリ・ハット体験談 第10回>
税理士法人 古田土会計 社員税理士
土田大輝
2021/7/16
第10回 提出期限は毎回ドキドキです!
皆さん、新年あけましておめでとうございます。ヒヤリハットを毎月寄稿していて、毎回際どい経験を思い出すこととなるので、自分自身の背筋が凍るときもあり、 良い刺激になっています。今年2021年も皆さんに注意喚起をさせていただくことで、我が振りを直す所存です。どうぞよろしくお願いします。
エピソード:提出期限にまつわる話
さて、今回のテーマは『提出期限』のお話です。我々税理士の仕事は、常に締切に追われることに程よいプレッシャーを感じ、それを活用してお客様に最善のご提案 を提供することに喜びを感じることができます。
よくお客様に「いまが、〇〇のチャンスです!」とか「いま△△をしておかないと、税負担で不利です!」などと、お伝えしているのではないでしょうか。
例えば過去のコラムでも、消費税の課税選択について、提出期限までに届出書一枚出すか出さないかで、その後の有利不利(税負担の増減)が変わってしまうことを お伝えしました。お客様の建物取得等の情報を事前にキャッチすることで、課税選択に成功し消費税の還付を受けられたなど、ご提案によっては喜んでいただくこと もあります。届出書・申請書には提出期限は付きものです。是非お客様に寄り添って、タイムリーに情報収集・そしてご提案をしていきましょう!
その提出期限でもっとも悩ましいのが、法律・政令などで期日を読み解くことです。「○○月が経過する日」なのか「○○月が経過した日」なのかによって、1日違ってくることは基本的なことかと思います。他にも、「その初日からカウントするのか?」「期日が休日等の場合はどうなる?」とか。微妙な判定が気になるところです。 さらには、郵便で届出書等を提出する場合の「消印有効」かどうかの判断まで来ると、余裕をもって仕事をしなければと、反省をするばかりです。
【提出方法 4つ】
税務署への提出方法が4つあり、提出日を含めご紹介します。
①税務署窓口持ち込み
開庁時間(平日8時30分~17時00分)に持ち込めば、その日が提出日です。
②郵送
消印(通信日付印)が提出日なのか。別途解説します。
③電子申告
受信通知・メール詳細に記載されている受付日が提出日です。
④時間外文書収受箱(通称『夜間ポスト』)
税務署庁舎の外にある郵便受けのようなものです。提出期限の翌朝に税務署職員がそのポストを開けて取り出すまでにそこに投函すれば、提出期限の提出として処理 されます。(私も一度利用したことがあります。)
【期日について】
期日の解釈は、本当に難しいです。詳細は割愛しますが、過去の税理士賠償保険事例によっても、提出期限が休日等の場合に、翌日に延長されるものと、されないも のがあります。
①翌日に延長されるもの
・所得税の確定申告期限など具体的に日付が明記されているもの
・「○○以内」と規定されているもの
②翌日に延長されないもの
・「○○の前日まで」と規定されているもの
このように大きく区分されます。ただ、国税庁HPタックスアンサー No.5100新設法人の届出書類において、
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(青色申告の承認申請書)
設立第1期目から青色申告の承認を受けようとする場合の提出期限は、設立の日以後3か月を経過した日と設立第1期の事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日までです。なお、この期限が休日等に当たる場合は、休日等明けの日が提出期限となります。
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と、記載されているではないですか!私は正直その規則性がわからなくなってしまいました…。
【郵送による場合の提出日は?】
過去の改正を経て、現在では発信主義(通信日付印の日)で提出日とする書類が多数となっています。ただし注意したいのは、発信主義が適用されるためには、「郵 便」又は「信書便」にて送付することが条件となっています。それ以外の場合は、税務署に到達した日が提出日となるので、注意しましょう。いろいろトラップがあ りますね。
国税庁HPでは、
税務手続に関する主な書類の提出時期の一覧
として、発信主義なのか到達主義なのかの一例を示しています。
この発信主義と到達主義の届出書を見比べていたら、一つのことに気が付きました。
届出書にある『税務署整理欄』において、発信主義の届出書には『通信日付印』の枠があり、到達主義にはこの枠がありません。日ごろ見ることはほとんどありませ んし、『税務署整理欄』は何を目的に使用されているかわからない枠ですが、この『通信日付印』については、チェックしておくと良いかと思います。
毎年、年末年始は確実に、ここで言う『休日等』になります。大みそかの夜、今年一年でやるべき仕事はやり切ったかどうか。なにか忘れてしまったことは、ないだ ろうか。当然仕事納めの日までにしっかり確認をするのですが、毎年ドキドキしながら年越しを迎えています。このコラムをご覧になっている会計・税務に携わる方 も、同じ心持ちになっている方はいらっしゃるでしょうか。共感いただけたら幸いです。今回は、そんな年越し・年明けを迎えて、『提出期限』のことについて寄稿 しよう。そう考えた次第です。