連続提出の正確な解釈<元国税調査官の告白 税務調査㊙ノートVol.25>

元国税調査官 税理士
松嶋 洋

2022/3/4

元国税調査官であり、現在は税務調査に特化したコンサルタントとして活躍する松嶋洋先生が、調査の論点となりやすい税法上の論点、税務調査への効果的な対応等について、法律、実務の両面から解説します。 
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.100(2022.2)に掲載されたものです。

連続提出の正確な解釈


欠損金の繰越控除については、以下の通り連続提出という要件があります。

法人税法57条(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)10項
第一項の規定は、同項の内国法人が欠損金額~の生じた事業年度について青色申告書である確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出している場合~であつて欠損金額の生じた事業年度に係る帳簿書類を財務省令で定めるところにより保存している場合に限り、適用する。

この連続提出という要件について、非常に有名な裁決として以下があります。

平成20年3月14日裁決(J75-3-24)
法人税法第57条第10項に規定する「その後において連続して確定申告書を提出している場合」とは、繰越欠損金を損金の額に算入しようとする事業年度に係る確定申告書の提出時において、欠損金額が生じた事業年度後の各事業年度について確定申告書が提出済みである場合をいうものと解される~これを本件についてみると、請求人は本件確定申告書を平成18年5月31日に提出しており、この時点において、平成14年3月期、平成15年3月期及び平成16年3月期は無申告となっており、請求人が、本件確定申告書を提出した後に、無申告であった事業年度に係る確定申告書を提出したとしても、繰越欠損金が生じた事業年度から連続して確定申告書を提出していることにならない。

したがって、本件の場合は法人税法第57条第10項に規定する「その後において連続して確定申告書を提出している場合」には該当せず、本件事業年度の所得の金額の計算上、本件繰越欠損金控除額を損金の額に算入することはできないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

連続提出の解釈について、「欠損金額が生じた事業年度後の各事業年度について確定申告書が提出済みである場合」を意味するとしています。このため、令和元年度で発生した欠損金について、令和3年度の申告においてそれを繰越控除するためには、令和2年度の申告書の提出が必要、ということになります。

次に、令和2年度の申告をしないまま令和3年度の申告書を提出した場合の、令和4年度の取扱いを考えてみます。この場合、令和4年度の申告をするまでに令和2年度の申告をしなければ、令和元年度欠損金の繰越控除はできません。一方で、その時までに令和2年度の申告をすれば、繰越控除ができます。以下の通り、連続提出の解釈において、順序正しく提出することは問わないとされているからです。

TAINS 法人事例005207
法事例5207 税相版 誤りやすい事例集(改訂版)(法人税7)繰越欠損金
誤りやすい項目 事業年度順と異なった順序で申告した場合の青色欠損金の繰越控除の適用
(平成14年6月)
東京国税局・税務相談室【情報公開法第9条第1項による開示情報】
【誤った認識】
連続して確定申告書を提出していることが要件となっているので、青色欠損金の繰越控除は適用できない
【正しい答え】
確定申告書の提出時に、欠損金の生じた事業年度以後すべての事業年度の申告書があればよく、必ずしも順序正しく申告書が提出されていることは要件としていない 

すなわち、途中で無申告の年度があったからといって欠損金の繰越控除が切り捨てられるというのではなく、控除年度で欠損年度後の事業年度の申告書が提出済であれば、繰越控除を受けられるということになります。

ただし、各年度の申告書提出時で過去の申告書が提出済みであることを判断しますので、上記の例で令和4年度において繰越控除できる場合でも、令和2年度の申告書の提出がないまま令和3年度の申告をしてしまえば、令和3年度で欠損金の繰越控除をすることはできません。

登録後送られる認証用メールをクリックすると、登録完了となります。

「税理士.ch」
メルマガ会員募集!!

会計人のための情報メディア「税理士.ch」。
事務所拡大・売上増の秘訣や、
事務所経営に役立つ選りすぐりの最新情報をお届けします。