結合商標とは<経営戦略のための知財Vol.21>

特許業務法人 浅村特許事務所
会長・弁理士 金井 建

2022/1/14

M&A、経営戦略、融資判断などで知的財産の占める割合が高まる中、その経済的価値を把握することは企業にとって必須です。そこで、業務に最適な知的財産価値評価サービスを提供している浅村特許事務所の金井建先生が、経営に役立つ知財の活用法について解説します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.98(2021.12)に掲載されたものです。

知財におけるマーケティング戦略⑥


ブランド戦略 6
今回は商標マークの種類として、結合商標をご紹介します。

【結合商標】
結合商標とは、2以上の文字、図形、記号を組み合わせた商標のことをいいます。図形や文字のみからなる商標マークと比べ、情報量が多く、印象に残りやすいという特徴があります。そのため、会社、商品、サービスの商標マークとしてよく使用されています。

特に、ハウスマークと呼ばれる会社名を商標登録する際に、会社のマークと会社名を組み合わせた商標マークとすることが多く見受けられます。私が会長をしている浅村特許事務所のハウスマークも、図形マークと事務所名を組み合わせたものです。右ページ右下のマークをご参照ください。

結合商標の例として、アマゾンの商標をご紹介します。自社のドメイン名である文字・記号に矢印の図形を結合させた商標です。図形と文字が横並びになるパターンではなく、ドメイン名と図形の組み合わせが上下になっているという特徴があります。また、“.com”以外の部分は太字で表記するなど、“amazon”の部分を強調した構成となっています。



アマゾンは、「ドメイン名と矢印の組み合わせマーク」と「矢印のみからなるマーク」の2つを、2000年6月に出願し、両商標は同じタイミングで登録になりました。

結合商標は、構成の中で特徴のある部分に注目して、他の商標との類否判断を行う傾向が強くなります。アマゾン商標の文字・記号部分は会社名であるため、特徴のある部分と判断できます。したがって、他人が矢印部分だけを商標として使用した場合に、上記の結合商標を用いた権利行使では不十分であるとの判断から、矢印マークも出願したものと推測できます。



これらの出願当時、アマゾンは本を販売するウェブサイトのサービスを行っていましたが、結合商標の指定商品には、オンラインシステムによる小売・卸売方式での商品・役務の受注事務の代行等が含まれています。今後の事業拡大の方向性を見越した出願であったことが分かります。



上図の商標は2015年に出願されたものです。日本ではドメイン名として“.co.jp”も使用するようになり、その形での商標登録もありますが、汎用的に使える商標として上図ロゴ部分のみでも出願したのでしょう。

マーク自体は、矢印が「a」から「z」に延び、これは「A」から「Z」までのあらゆる商品が揃っているという意味があります。また、笑顔の口元のように見える中央に向かって下向きにカーブしている矢印部分は、「顧客の満足を表す笑顔」が表現されているとのことです。矢印の先が「Z」の下部分を押している表現も、笑顔の口回りをイメージしたものでしょう。

このように、商標にはその商標作成者の思いが込められています。商標出願の時期、タイミング、順序、出願した商標マークの種類、商標出願の際の指定商品や指定役務を確認することで、ブランド化に向け、商標に込められた事業戦略までもが見えてきます。

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