金融機関が必ずチェックすること<銀行員が教える!企業決算書はこう見ている Vol.5>

井村 清志

2021/7/18

金融機関の融資審査において検討の中心となるのは融資先の業績の動向です。
そして業績の動向の検証は決算書分析が中心となります。

その決算書分析ですが直近の決算が黒字か赤字かも大切ですが、過去の決算書内容との比較を行って融資先の状況を見ています。
直近の売上高を見てその水準が過去の実績と比較することで融資先の業績は拡大傾向にあるのか、あるいは縮小傾向にあるのか、横ばいなのかを把握することが出来 ます。

このように金融機関では過去の決算内容を時系列に比較することで融資先の業績動向を把握しようとしています。

 

金融機関が必ずチェックすること

そのような中で金融機関が時系列比較で必ずチェックするのが売掛債権、在庫及び買掛債務の動向です。

この3つの項目は日々の事業活動に直結するものですし、何よりも金融機関が気にしている資金繰りにも大きな影響を与えるものだからです

2つの図はある中小企業の最近3期の貸借対照表の抜粋とさきほどの3つの項目の回転期間を示したものです。
金融機関の決算分析においては各回転期間の時系列推移を必ずチェックしています。
例えば売掛債権回転期間は2.05ヶ月→2.64ヶ月→2.94ヶ月と推移しています。
基本的に販売回収条件というのはそう頻繁に変わるものではないはずです。
今月の売上代金は来月末に販売先から振り込んで回収するという取り決めは基本的に変わることはありません。

したがって売掛債権回転期間も基本的に変化がないはずです。
もっとも貸借対照表は決算期末時点のスポットの数字ですから、月末が休日であったり何かしらの一時的な要因で多少の変動はあり得ます。しかし大きく変わること はないはずです。

この例の場合、金融機関が気にするのは売掛債権回転期間が年々長期化しているという点です。
売掛債権回転期間が長期化するということはそれだけ売上代金回収までの期間が長くなっているということです。それはその会社の資金繰りを圧迫する要因となりま す。
回収が出来ない債権が含まれているのではないかなど何かネガティブなことが融資先に発生しているのではないかと金融機関は考えるのです。

金融機関は異常値がないかどうかを見ています

売掛債権回転期間を例にとって金融機関の見方の一例をご案内しましたが、時系列に決算書の数字を比較検証することで何か異常値がないかどうかを見ています。
そして異常値が見つかればその原因は何かを融資先への質問を含めて解明しようとしています。
異常値があるからといって直ちに融資に応じないということではありませんが、異常値の原因がネガティブなものであれば融資を抑制するなど慎重な取引方針で対応 することになります。

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