税理士は、事業承継の情報発信基地に!<税理士のヒヤリ・ハット体験談 第12回>

税理士法人 古田土会計 社員税理士
土田大輝

2021/7/17

第12回 税理士は、事業承継の情報発信基地に!

近年、『事業承継』というキーワードが、新聞やネットでも多くとり上げられており、中小企業においても重要な中長期的な課題になっています。
中小企業庁の2019年の資料によると、2025年までに70歳に達する中小企業経営者は、約245万人となり、そのうち127万(企業全体の1/3)が後継 者未定とのこと。これは非常に深刻で、当時日経等の新聞紙上でもこの情報が大きく報道されました。

エピソード 「社長!事業承継のことを考えましょう」
経営者は皆、何らかの形で会社を引き継いでいく必要があると考えていると思います。しかし後継者の有無や資質・能力の問題や、それ以前に足元の業績を立て直さ
なければいけない等の短期的な課題が大きいために、どうしても事業承継の話題は後回しになりがちです。

この現状がある中ですが、周りを見渡せば、大企業ではM&Aによる企業再編成が加速し、中小企業においてもM&Aの選択肢が増えつつあります。事業承継の問 題は、対岸の火事ではなくなっています。ぜひ一度、顧問先のお客様の事業承継のあり方について、一緒に考えられてはいかがでしょうか。

事業承継を考える際に、『実際の経営の承継の問題』と『株式などの財産の承継の問題』とで考える必要があります。
どうしても私も含めて税理士は、自社株の相続税評価が高騰し、その承継には税負担が伴うということを第一に考えてしまいます。けれども、まずは実際に承継でき る後継者がいるのかいないのか等の、『実際の経営承継問題』が先になります。

私なりに考えた『事業承継のフローチャート』を作成しました。ご覧ください。



まず後継者の有無によって、道が変わります。
後継者がいる場合は、その後継者の意思や資質により、引継がせるか否かが変わります。(将来意思・資質が変化することはもちろんありますが)
そこで次に確認することは、生え抜き社員に適任者はいるか。
いずれもいない場合は、経営者を外部から招へいすることを検討するか、M&Aにより売却を検討するかになろうかと思います。
最終的な道として、廃業という選択肢も残っています。
実際の承継者がイメージできたところで、会社の財務による判断です。
借金が多く、その保証人にならなければいけないか。これが大きなハードルです。
純資産が厚く、株式の承継(贈与・譲渡)をするために、相当のお金が必要になる可能性も検討しなければなりません。ここは税理士の出番でしょうか。
現役経営者の年齢から、何年かけて承継を考えられるか。この年数も大きな要素の一つと言えます。
贈与・譲渡を一気に実行するよりも、数年にわたってする方が、間違いなく税負担・資金負担は軽くなります。

このように、会社の状況によってその処方箋が異なってくるのは、言うまでもありません。
大事なのは、これらのすべての承継方法について、窓口として税理士が情報発信をすることです。
各種金融機関・保険会社やコンサルタント等は、それぞれが得意とする方法で、お客様に対して事業承継のスキームを提案します。あるいは、それぞれが一番収益の 上がる方法なのかもしれません。当然ですが、それがお客様の状況に合致するとは、限りません。

そこで、今回私からお伝えしたいのが、これです。

税理士は経営者の身近な相談相手であることから、状況を判断し、これらの事業承継スキームを選択して、提案していってほしいです。願わくばコンサルタ ント等より先に!

先月のコラムでもお伝えしていますが、我々税理士がすべての実行者になる必要はないと思っています。もちろん、提案したことを税理士が完遂できればベストかと思いますが、お客様の悩みを解決してさしあげることこそが、税理士の与えられた仕事だと 思います。

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