収益認識に関する会計基準が公表されるに至った経緯<収益認識に関する会計基準 第1回>
佐藤経営税務会計事務所 代表税理士
佐藤 充宏
2021/7/17
第1回:収益認識に関する会計基準が公表されるに至った経緯と適用時期・適用対象
1、収益認識に関する会計基準が公表されるに至った経緯
【当初の日本の状況】
日本では、売上高は、企業会計原則に定められている「実現主義の原則」にしたがって計上する事とされていましたが、収益認識に関する包括的な会計基準はありま せんでした。
売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。ただし、長期の未完成請負工事等については、 合理的に収益を見積もり、これを当期の損益計算に計上することができる。
(企業会計原則第二損益計算書原則三B)
【海外の動向】
一方、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)は、収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行ない、2014年5月にほぼ同一の内容である「顧客との契約から生じる収益」を公表しました。
(IASB:IFRS第15号、FASB:Topic 606)
【その後の日本の状況】
≪2018年≫
企業会計基準委員会(ASBJ)にて、次の会計基準等を公表しました。
「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)
「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第30号)
≪2020年≫
2020年改正会計基準等として、この2018年会計基準等の改正とともに、次の会計基準及び適用指針を公表しました。
「収益認識に関する会計基準」(改正企業会計基準第29号)
「収益認識に関する会計基準の適用指針」(改正企業会計基準適用指針第30号)
「四半期財務諸表に関する会計基準」(改正企業会計基準第12号)
「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(改正企業会計基準適用指針第14号)
「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」(改正企業会計基準適用指針第19号)
【日本と海外の会計基準等について】
この2020年改正会計基準等については、IFRS第15号の規定を基本的に取り入れて、
プラス
適用指針に定める重要性等に関する代替的な取扱いを織り込んでいます。
2、適用時期
2021年4月1日開始事業年度から適用という話もありますが、2020年改正会計基準等については、実際には次のとおり決まっています。
(1)強制適用の場合
2021年4月1日以後に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。(企業会計基準81項)
(2)早期適用の場合
①2018年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用できる。(企業会計基準82項)
②2018年12月31日に終了する連結会計年度及び事業年度から2019年3月30日に終了する連結会計年度及び事業年度までにおける年度末に係る連結財務諸表及び個別財務 諸表から適用できる。(企業会計基準83項)
3、適用対象
(1)連結財務諸表及び個別財務諸表の両方で同一の会計処理を適用します。
(2)中小企業への適用の有無について
監査対象法人以外の中小企業については、引き続き従来の企業会計原則に則った会計処理も可能です。
以上
今回は、収益認識に関する会計基準が公表されるに至った経緯と適用時期・適用対象についてご案内しました。
次回は、この会計基準の概要等についてお知らせしますので、よろしくお願い致します。
出典元:
国税庁:「「収益認識に関する会計 基準」への対応について~法人税関係~」
企業会計基準委員会:改正企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」等公表資料