上場支援クラウド型サービスで新境地
Uniforceの会計士社長、砂田和也に学ぶ「士業の企業化」成功の方程式 Vol.2
Uniforce株式会社 代表取締役CEO 砂田 和也
決算開示やIPO準備に関するクラウド型サービスとコンサルティングを主力事業とし、新境地を開拓し続けるUniforce株式会社。今回は、士業が提供する決算開示やIPO準備関連のサービスとの違いや、士業での経験や専門性は企業化後にどのように発揮されているのか、経営者としてのこれまでの歩みや心構えなども含め、代表取締役CEOである砂田和也氏に話を伺った。
事業会社としての強み
市場全体の動向に関係なく成長されていて、手ごたえも感じていらっしゃいますか。
そうですね。弊社はIPOだけではなく、M&Aや事業承継をしたいといったお客様にもご利用いただいています。例えば、企業の後継者問題には約200万社が直面しているといわれています。その一部にサービスを使っていただけると考えただけでも市場規模はかなり大きいですよね。
IPO支援や決算開示のコンサルティング業といえば、公認会計士の方々が強いとされる分野です。
一般事業会社としてこれらの業務を扱うことによる違いや強みについては
どのようにお考えでしょうか。
クラウドがあることを前提として、通常のコンサルで会計士の方々が「やりきること」を重視する一方で、私たちはクラウドに「残すこと」を重視する点が大きな違いだと思います。私たちはクラウドに情報を残し、次の担当者が使えたり、新しい人材が学びを得られたりするシステムを提供しています。過程の見える化は、ガバナンスを作ったり会社を構築したりする上では非常に大事だと思うので、そこに注力しているのが一つのポイントです。あとは、経済効率も非常に良く、通常のコンサルティング会社に比べて安価で提供できている点も強みですね。
クラウドの機能を充実させていくと、コンサルまでは依頼せず、
より低価格で済むお客様が増えることにはなりませんか。
それはないと思います。クラウドの機能が増えたら、その分オプション料金がかかります。またアカウントを使う人が増えれば、その分料金は上がっていきます。ですので、クラウドとコンサル双方の充実を目指すことに矛盾はないですね。クラウドも完全な自動化は無理だと思っていますが、どこまで進んでいけるかが、今の私たちのチャレンジだといえます。
砂田社長を含め、公認会計士の資格を持っている方は社員50名ほどのうち何名いらっしゃいますか。
4、5名ですね。加えて、ほぼフルタイムに近い業務委託の方、弊社の案件のみ対応している方を入れると20名弱くらいになり、商品開発力は非常に高いと思っています。承継出身者や上場経験者、プロダクト作りのプロもいて、人材も多彩です。
Uniforce株式会社の描く未来
まだまだ会社としても成長していこうとお考えだと思いますが、
求める人材や今後強化していきたい点はどのようなものでしょうか。
コンサルティングをやりたいけれど、ベンチャー企業にも興味がある人って一定数いると思うのです。会計士は、FAS(Financial Advisory Service)の世界で、IPOやDD(財務デューデリジェンス)、M&Aなどがメインの業務になります。
でも、本当はスタートアップでの事業を推進してみたいとか、コンサルタントとして活躍したい、という人もいますよね。弊社では様々な職種に挑戦できるので、全部に興味がある人には良い職場なのではないかと思います。手を挙げる人がいればジョブポスティングも積極的に行いますしね。
私たちは生涯雇用したいわけでもなくて、独立や起業もウェルカムです。しっかり働いてパフォーマンスを出し、場合によってはビジネスパートナーとして連携していくのもよいと思っています。
Uniforceの将来像として、どのような姿を思い描いているのでしょうか。
「ガバナンスを作るならUniforce」と言われる世界ですね。より具体的に言うと、会社の統制や基盤。これらがあれば会社は残るし、継続的に事業活動を見出した上で利益が出て、還元されていきます。
次世代の人たちに、きちんと良い会社、良い経済、良い社会を残していくこと。これが私たちの掲げる「ガバナンスグロース」の裏ミッションで、コーポレートガバナンス全体を援助できるシステムを提供していきたいと思っています。
士業の企業化
士業から一般事業化を進めることのメリットと、
どのような点に難しさを感じているかを教えてください。
専門領域の知見ありきで始められるのは非常にアドバンテージがありますね。その領域の需要に気づけますから、サービスを作るべきかどうかの判断が的確にできる点はメリットだと思います。気づいて行動し、続ければ企業も大きくなりますよね。
あとは組織論になりますが、普段接点のない方たちと関わり、その方たちの人となりを知りながら事業を進めて会社が成長していく点では、士業の事務所とは全く違う世界を経験できると思います。
難しさは、柔軟な考え方が必須なことでしょうか。士業資格を鼻にかけ、頑固に、偉そうにふるまうようでは、一般事業化は成功しません。個人事務所をやっていてオーナー意識が強く、自分のやり方に口出しされたくないなどは難しいでしょう。実は、私も何度か失敗しています。
一般事業化は、新しい領域に進むことです。IT系サービスの方々と協働する機会も多いでしょう。その時に、組織を作って一緒に働いてもらえるような考え方や振る舞いができる必要があります。
漠然と一般事業化したいと思うレベルではなく、
厳しさも覚悟した上でないと、やはりうまくいかないものでしょうか。
考えすぎると動けなくなってしまうので、チャレンジしたらよいとは思います。税務や会計業務に関わらない人を何名か集めて、PoC(Proof of Concept、概念実証)のテストをし、事業化できそうだと思えたら、本格的に動く。はじめは比較的低単価・低コストの業務委託で人を雇って始めるのもいいでしょう。準備段階を経て、道筋が見えてきたタイミングで資金や人材を投下し、アクセルを踏めばいいと思います。
事業化すると、士業と違い無制限に可能性が広がりますが、
それに伴って事業資金もより多くかかりそうですよね。
必ずしもそうとは言えません。先ほどの続きになりますが、単に一般事業化のテストだけなら10万円でもできます。必要なお金は覚悟と方向性、進め方次第です。ただ、「このサービスだ」と決め打ちしたら、スピード勝負になります。そして、スピードを出すにはお金が必要になってきます。
私は元々スタートアップを作るつもりでしたから、スピードも資金も必要で、仲間も集めないといけない。だから資金調達を実施しています。お金があるとできることが増えますが、一番大きいのはスピードが上げられる点だと思います。
貴重なお話をありがとうございました。
プロフィール |
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Uniforce株式会社 代表取締役CEO 砂田 和也
大学商学部在学中の2012年に公認会計士試験に合格し、翌年にあずさ監査法人に入所。この時、IPO支援の専門部署で働いた経験が後の会社設立につながった。公認会計士登録した2016年に起業し、翌2017年には税理士登録して税理士法人wimgを設立。2020年8月に株式会社start-up studio(現・Uniforce株式会社)を設立した。 |