DXの最前線!TOMAコンサル流、生産性を高めるAI活用術
25名体制のIT部門責任者が語る、DX化と人材育成の秘訣とは Vol.2

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役 中小企業診断士 持木 健太

株式会社TOMAコンサルタンツグループのIT部門は、実質1人の担当者から始まった。それが今や新卒を含む25名体制にまで拡大し、社内外を巻き込むDXを推し進めている。今、彼らが注力するのがAI活用による全社の生産性向上だ。労働人口減少という課題に対し、AIを「アシスタント」と位置づけ、業務の効率化を図っている。本記事では、IT部門を率いる持木氏に、推進プロジェクトを立ち上げ、アナログな業務をデジタルへと変革させたDX化の歩みと、AIと共に拓く未来の働き方について迫った。

一からIT人材を育成する教育体制
新人を丸ごとサポートする取り組みとは

ITコンサル事業部には新卒の方も多いと伺いましたが、新卒一年目の社員の方が、
入社してすぐにkintoneアプリを作れるようになるのでしょうか?

できますよ。まず新卒入社の社員にはWeb研修とeラーニングでkintoneの基礎を学んでもらい、サイボウズ社が提供する資格制度の「アソシエイト」という一番下の資格を、入社1ヶ月から3ヶ月程度で取得することを目指してもらいます。アソシエイトレベルの知識があれば、簡単なアプリは作れるようになります。kintoneを担当するチームでは、新卒メンバーは、簡単なkintoneアプリの作成をはじめ、面談に同席しての議事録作成など、比較的難易度の低い保守サポートを1年目から担当します。2年目、3年目になってくると、小規模な案件であればプロジェクトリーダーとして、お客様からのヒアリングから納品までを一貫して担当できるようになります。難易度の高い開発が必要な案件は、部長クラスや私も入ることが多いですね。

ITコンサル事業部の会計系の業務では、どのようなスキルが求められますか?

会計ソフトや給与・販売管理システムの導入、RPA導入、経理改善コンサルティングに携わる場合、会計や給与系の法律知識も習得してもらいます。簿記資格がなければ簿記の取得、会計ソフトの研修、インストラクター資格の取得なども求められます。会計ソフトの導入を支援するのに、簿記も知らないようだと経理担当と話ができないですから。これらの資格を取得し、受託案件の初期設定などを経験しながら、将来的には業務改善のコンサルタントを目指してもらいます。顧問先にシステムを導入する場合は、弊社の税務担当と打ち合わせたうえで、システム運用の部分をITコンサル事業部が担当する形で運用しています。

コンサルタントのキャリアパスはどのように分かれているのですか?

社内ではアシスタント、ジュニアコンサルタント、コンサルタント、チーフコンサルタント、シニアコンサルタント、エグゼクティブコンサルタントという段階があります。コンサルタントは、kintone構築やパッケージソフト導入支援に加え、業務改善コンサルティングのプロジェクトリーダーを務めます。IT知識はもちろんですが、プロジェクトを円滑に進めるためには、ヒアリング能力をはじめコミュニケーション能力も非常に重要です。そこで、社内外のプロジェクトマネジメント研修を受けて、学んでもらっています。

研修をはじめ、社内の教育体制について教えてください。

新入社員向けの研修としては、月に1回、各部門のサービス紹介や就業規則を学ぶものや、外部研修としては営業力アップや報連相の仕方といった基礎的なビジネススキルを学ぶ機会も提供しています。特に新卒向けには「新人育成プロジェクト」というものがあり、研修はもちろん、皇居の周りを散歩して食事をしたりといった同期との交流イベントも実施しています。
弊社では新入社員には、新卒・中途問わず「エルダー」という、公私ともに面倒を見る担当者が一人つく仕組みがあるのですが、新卒の場合は、入社2年めくらいの先輩が担当することが多いですね。

このエルダーは、プライベートも含めて困った時にすぐに相談できる相手となり新人社員の孤立を防ぐ役割を担っています。また他にも、社内のメンバーとのランチや飲み会代として、中途入社だと3万円、新卒入社だと6万円が会社から支給されるので、他のメンバーとも打ち解ける機会が充実しています。

周囲になじみやすい環境を意図的に作っているのですね。
業務に関しても、新人の方に配慮した取り組みはありますか。

中途採用の場合は即戦力として採用しているため行っていないのですが、新卒限定で、他部署での業務を経験するジョブローテーションがあります。勉強会の開催も盛んで、新入社員向けには、各部門の部長が自分の部門の業務内容を紹介する勉強会、全社員対象としては、理念の重要性や経営感覚を学ぶために社長と専務が進行役となって開催している「理念と経営の勉強会」もあります。

新卒採用では、どのような点を重視されていますか?

最も重視するのは、「明るく、楽しく、元気で、前向き」な姿勢と、会社の理念に共感できるかどうかです。事前準備の有無や、会社への質問をきちんと考えてきているかどうかも見ています。スキルに関しては入社してから学ぶことが圧倒的に多いため、それよりも学生時代の活動、特に部活動の部長や文化祭の責任者など、リーダーシップ経験がある方は加点ポイントになります。入社後にプロジェクトを進めていくうえで、率先して人を動かす能力は必要な力ですから。また、内定者には、ITパスポートや基本情報技術者試験の取得を促すこともあります。入社後も、自己学習や自己研鑽の目標設定を行う必要があるので、内定の時点から、資格や検定の取得は積極的にチャレンジを勧めています。


AI活用によるDXの加速化と可能性

社内における作業の自動化はかなり進められているのですね。

これまでのDXの取り組みでは、IT活用レベルのことも多かったのですが、現在、力を入れているのがAIの活用です。AIは完璧ではありませんが、アシスタントとして非常に有効で、今までネットや書物で調べていたことを、AIが常に隣にいるアシスタントのようにサポートしてくれます。例えば私の場合、文書校正用のプロンプトをテンプレート化して利用しているので、誤字脱字のチェックなど、人が行うよりも正確で、漏れのない作業が可能になりました。
また、kintoneと生成AIをAPI連携させた社内AIアプリも運用しており、有料の生成AIツールを全社員がいつでも利用できる環境となっています。全社員分の有料アカウントを用意すると高額な月額費用になってしまいますが、API連携を利用した従量課金制を利用することで、大幅に運用コストを抑えられています。今後は、社内のノウハウも生成AIにインプットさせ、それを基にした質問・回答ができるように進めています。

社員の方々の間でも生成AIの活用は進んでいるのでしょうか。

会社としては利用を促進していますが、現状、利用頻度は社員によって差がありますね。どうしてもITリテラシーや興味の有無が影響するので。その中でも特に若い世代は、文書作成をはじめ、メール作成補助や議事録要約や翻訳など、生成AIが得意とする分野を積極的に活用しています。
全社的にはChatGPTが利用可能で、開発者はプログラミングに適したAIや、Claude、Geminiなど、複数のツールを使い分けています。最近では、複数のAIモデルを一つのツールで利用できる「Stella AI」を社内に導入しました。弊社はこのStella AIの販売代理店も務めているのですが、社内の共有ノウハウを一元管理できる生成AIツールとして、かなり活用の幅が広がるのではないかと期待しています。

先ほど話したように、これまでのアシスタント業務の一部をAIが担うことで、人間のアシスタントはAIを活用しながら自身の業務を効率化していく、という形がAI活用では一番多いのではないでしょうか。ですから、単純作業が少ない管理職はAIの利用頻度は少ないかもしれませんが、私は思考を伴う作業や、イベントのキャッチコピー作成など、相談役としてAIを活用することも多いです。労働人口が減少する中でも、少人数で生産性の高い業務が遂行できる鍵になると実感しています。

プロフィール
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役 中小企業診断士 持木 健太

DX推進の総責任者として、テレワーク環境構築・ペーパーレス化・電子帳簿保存法対応・ビジネスモデルの再構築などで活躍中。 企業の労働生産性向上や付加価値向上を目指して、中小企業から上場企業まで幅広く対応している。

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