AI全盛時代に備えよ!
集約したデータ駆使し一般事業への参入目指す 若き税理士経営者の戦略に迫る Vol.1

AI全盛時代に備えよ! 集約したデータ駆使し一般事業への参入目指す 若き税理士経営者の戦略に迫る

税理士法人SoLabo 代表社員 手島 春樹

2025年6月、「AIを最も活用する会計事務所」を自任し旗揚げされた、税理士法人SoLabo。顧客に関する様々なデータをクラウド上で一括管理し、記帳代行はもちろん、コンサルティング業務をはじめとした「高付加価値」サービスにもAIを積極的に活用しようと目論む。SoLaboの若き船頭・手島春樹代表は、「会計事務所は従来の税務会計業務だけではなく、『一般事業』にも乗り出すことで活路を見出すべきだ」と提言する。業界の常識に挑戦する若き経営者の、発想と戦略に迫る。

あらゆるデータを一元管理
SoLabo流DX化とは?

貴社が進めているDX化の取り組みは、どのような点が特徴なのでしょうか?

税理士法人SoLabo 代表社員 手島 春樹

簡単にいうと、あらゆる情報や業務の管理を、Google Workspaceで一元的に行っている点です。いわゆるCRM(顧客関係管理)はGoogleのAppSheetで行います。記帳代行については、クラウド会計とスプレッドシートを活用し、請求書等々顧客に送る文書などはドライブで管理します。文書を送るのは、Gmailです。また、業務の進捗状況によっては、Google Chatを通じて納期などを社員に改めて周知し、遅滞が生じない仕組みを作っています。
CRMもタスク管理も、もはやGoogle抜きには語れないというのが弊社の現在地です。


なぜ、Googleなのでしょうか?

「全体最適」を実現するのに最も適したグループウェアだというのが、大きな理由です。
これまで会計業界には、「個別最適」に目を向け過ぎる傾向が強かったのではないかと思っています。例えば、CRMは「A」というツールで行う一方、書類は「B」で保存するというように、情報や業務の管理がバラバラに行われてきたという印象を強く持っています。確かにそれぞれのツールの使い勝手はいいのかもしれませんが、当然、ツールごとに維持・管理のコストがかかってきてしまいます。また、互いに連携が取れないという欠点も否めません。連携させようとすると、時間やコストが余計にかかる可能性が出てくるほか、データの齟齬など取り返しのつかない誤りを招く恐れさえあります。
Googleであれば、シームレスな流れを、ほとんど人の手を介せず作ることができます。例えば弊社では、顧客に送る請求書などの書類をドライブで管理し、期日が来たらGmailで自動的に送信する仕組みを整えています。一方で、顧客から送られてくる領収書や、レシートなどが格納されるのもドライブです。それらは、スキャンされた後、各顧客のフォルダーに格納されます。それがAI-OCRによって自動で読み取られ、スプレッドシートに出力されたデータが最終的にクラウド会計ソフトに取り込まれます。
こうした流れをローコストで生み出せる点が、Googleの魅力です。色々な料金プランはありますが、一般的な会計事務所の従業員の規模を考えると、他のグループウェアに比べて手頃な価格設定であるというのは間違いないと思います。これが、弊社が考える「全体最適」です。


「AI」という言葉が出てきました。税理士の業務はAIに取って代わられる、という見方も根強いですが、手島先生はこうした見方をどう考えていますか?

顧客との面談など、まだまだ人が介在する場面が多いとは思います。ただ、そうした状況はあっという間に、劇的に変わる可能性があります。
例えば、半年くらい前までのGoogleの生成AI・Geminiは、質問に対して的外れな回答をしてきたり、日本語の文法に則っていない文章が散見されたりして、正直に申し上げて使い勝手にやや難がありました。しかし目覚ましいスピードで改善が図られ、今やほとんど違和感がない回答をくれるようになりました。この進化のスピードの速さも、Googleが優れている点です。


あらゆる技術が、加速度的に進化している訳ですね。

またGoogleは、Geminiの中にGemsという機能を設け、極めてカスタマイズ性の高いチャットボットの作成を可能にしました。「人格」や「タスク」などを明確に指示することで、精度の高い回答が得られるという優れものです。

Gemsを有効活用することで、税務相談などは大きく変わるでしょう。Gemsに「あなたは税務相談の経験が豊かな税理士」という人格を与えれば、その人格が持っているだろう知見をもとに回答は導かれます。それだけで、多くの税務相談に対する強力な武器になります。
なぜなら、税務相談で寄せられる質問というのは、かなり似通ったものが多いからです。例えば、スタートアップの顧客からは「役員報酬はいくらにしたらいいか」という質問が必ず出ます。そうした典型的な質問への回答を、AIが自動で生み出せるのです。

さらにいうと、Googleドライブに集約された様々な情報を駆使して、経営コンサルティングなどの「高付加価値」サービスにもAIを活用していこうと検討しています。

税理士法人SoLabo 代表社員 手島 春樹

ここまで来ているDXの波
高付加価値サービスでも AIを活用

高付加価値サービスにもAI、ですか?

Gemsや、様々なAIの登場によって、それが当たり前になる時代がすぐそこまで来ているという認識を持っています。それらのAIは、ユーザーが独自に集約した情報や資料を読み取り、質問に答えたり要点を整理してくれたりします。弊社の場合、各顧客の損益計算書や貸借対照表、事業計画など様々な情報や資料がGoogleドライブに集約されています。ネットやSNSに優先して、自社の中に集約されたものが活用されるので、回答の信頼性は増しますし、顧客の経営課題に応じた回答が可能になります。こうした、会計事務所ならではの豊富なデータを、AIの力を使ってより有効に活用したいのです。


具体的に、どのような活用イメージをお持ちなのでしょうか?

税理士法人SoLabo 代表社員 手島 春樹

例えば、「ある飲食店の経営課題を見つける」という目的をAIに与えたとしましょう。するとまずは、経営に関する情報の中でも最も重要な「売上」の概念が、「席数」「回転率」「単価」などというように具体的な構成要素に分解されます。その上で、この飲食店の情報や資料をもとに、前年や前月と比べてどの要素に増減があるのかという現状が分析される。さらに、分析結果に基づいて課題を見つけ、売上を伸ばすための戦略が回答として示されるという流れです。後は、その戦略をタスクに落とし込んで、実績が出るかどうか継続的にウオッチしていくという極めてシンプルなモデルを考えています。

経営コンサルティングはある意味アートの領域なので、知見のある税理士が100人いれば、100通りのアドバイスが生まれます。一方で、知見の程度もバラバラですので、アドバイスという成果物の質にも、少なからず差が出てきてしまいます。AIを活用するメリットは、こうしたばらつきをなくし、一定のレベルの回答を生成できるところにあります。正直、現時点でも、それほど悪くないレベルの回答を導けるところまでAIの技術は上がってきています。少し時間がかかるかもしれませんが、検証を重ね、より精度を高めて本格的な実用化を目指したいです。

AIを活用すればコストが下がる一方、経営コンサルティングなどのサービスはもはや「高付加価値」とはいえなくなってくるのではないですか?

仰る通りだと思っています。これまで、月額100万円とか200万円かかっていたような高付加価値サービスのビジネスモデルは変化を余儀なくされるでしょう。AIによるサービス提供が実用化されれば、もしかしたら、月額5,000円とか1万円という時代になるかもしれません。少なくとも、理論的には可能な訳です。
そう考えると、正直に申し上げてそうしたサービスだけで会計業界を生きていくのは、今後なかなか難しいのではないかという気がしています。

プロフィール
株式会社SoLabo/税理士法人SoLabo
取締役COO/代表社員
公認会計士・税理士 手島 春樹

太陽有限責任監査法人にて、小売業、製造業、建設業、美容業、IT系及び音楽業界等幅広い業界の会計監査に従事。顧客の東証グロース市場への新規上場や、不正案件対応を経験。2023年7月から株式会社SoLaboに入社。2024年8月から同社 取締役COOに就任。 事業部再編やインサイドセールス立ち上げ等の組織づくりからCRMを活用したデータベースの利活用、株式会社での経営層経験を基にした全体最適化コンサルティングを得意とする。顧客ニーズに応えるため、税務サービス提供を目的とし、2025年6月に税理士法人SoLaboを立ち上げる。

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