事務所を加速度的に成長させたのは企業研修だった!
鈴木宏典がたどり着いた環境づくりの2週間 Vol.2

事務所を加速度的に成長させたのは企業研修だった!鈴木宏典がたどり着いた環境づくりの2週間

税理士法人SS総合会計 代表社員 税理士 鈴木 宏典

税理士を超えた経営のパートナーとして静岡県浜松市で50年以上、経営者の悩みに寄り添いサポートを続けてきた税理士法人SS総合会計。令和5年3月期にMAS単独売上が5,000万円を超えるなど、人材・業績共に拡大中である成長まっしぐらの企業を率いる鈴木宏典先生にお話を伺いました。

研修プログラムを組むうえで大事なポイントはありますか。

所作(ビジネスマナー)を通じてトップの思いを伝えることです。その所作が目的ではなく、「所作を通じて」なんですね。あいさつによって事務所の方向性やベクトルを伝えて、マインドに落としこむことが重要だと考えています。当事務所のあいさつは、音階で言えば「ソ」の音で、と伝えているのですが、「今のはファの音だね、おはようございます、どうぞ」と習慣になるまでやり続けています。特にお客様へのあいさつに関しては、研修担当者に私自身の熱い思いを伝えたことで、研修でも熱量をもって指導してくれていますね。気持ちがこもっているから、新人メンバーもその思いを受け止め明るく元気なあいさつを実践してくれています。この事務所はこういうことを大事にしているんだということを理解してもらうためには、ビジネスマナーの研修が一番身に付きやすいと思います。

お伺いしたようなしっかりとした職員研修を行っている事務所は
そう多くないのではないでしょうか。
研修をするべきだと思いつつも、とりあえず実務に突入してしまうことも少なくないと思います。
業界的にも、まずはかばん持ちから始めて…という流れもあるのが実情です。

税理士法人SS総合会計 代表社員
税理士 鈴木 宏典

私はかばん持ちがわるいとは全く思いませんよ。ただ、上司によってやり方が変わってしまうことを危惧しています。組織としてこうしてほしいという指針があっても、別にやらなくていいよ、という上司がついてしまうと、どんどんハードルが下がってしまう。そうすると、結果的に成果物のクオリティも下がってしまいます。しっかりとした仕事のために定めた基準を徹底しないことに慣れてしまった人には、最終的に仕事を任せられなくなってしまう。

その点では、マインドセットができている状態ということは、仕事に対して組織と同じ方向を向くという土台がきちんとできているため、あとは実際の業務を教えるだけで、おのずと動き出せる力が備わっているのです。慣性の法則ではないのですが、少し力を貸すだけで、自力で走り出すことができます。ですから、やはり時間をかけてでも、最初にマインドセットを行うことは、一見遠回りに見えても一番の近道だと考えています。

マインドセット研修の講師はどのような人が務めているのでしょうか。

基本的には複数の研修担当者が行います。職員の教育グループがあって、徹底的に一人ひとりにフィードバックを行います。新人一人ずつのチャットグループを作って、この人はこういう傾向があるので、このような指摘をしました、とグループ内で共有します。フィードバックはかなり重視しています。一方的に教えるだけではなく、きちんとできているか確認して、その結果を本人に伝え、できていないのであれば改めて本人が意識し直すことで、はじめて身についたと言えるのだと思います。研修担当も常に前向きに指導していますね。マインドセット研修を受ける中で、新人たちも顔つきが変わってくるんですよ。大体3日くらい過ぎると、結構変わったなと思うことがしばしばあります。

こういったマインドセット研修を通した新人教育からもわかるように、面倒見の良さや職員が一体感をもって働いていることが、当事務所の強みでもあり、お客様から「寄り添い感がある」と言っていただける所以だと考えています。

やはり主眼はお客様にあるということでしょうか。

ドラッガーの「顧客の創造」の言葉通り、お客様にファンになっていただき、ファンがファンを呼ぶという、「顧客のために」がわが事務所の基本姿勢であることは揺らがないです。お客様に満足してもらうことが自分たちの幸せだとすると、その仕事はやりがいになるわけです。顧客満足が従業員満足とイコールになるのです。

ですから究極的には、顧客満足以外の安楽欲求を拾ってしまうと、どうしても所内にハレーションが起きてしまう。そのためにも、マインドセット研修で、SS総合会計の方向性を認識して納得したうえで、本人の仕事に落とし込んでもらうことが必要なんです。もちろん研修を受けて、どうしてもマインドを合わせられないという方もいます。そういう場合は、「うちで続けることはあなたにとっても苦しいことだから」と根拠をもって言うことができます。

マインドセット研修を長く続けられている中で、課題点や改善点だと感じている部分はありますか。

基本的に、マインドそのものは変わることはないのですが、時流に対して基準そのものを変えていく必要はあると考えています。例えば当事務所は制服なのですが、今後は私服をOKにすることも検討が必要とも思っていますし、所内ツールが新しくなるたびに、適切な使用ルールを設けることも大切ですよね。事務所としての根幹となる部分は守りながら、時代に合わせた柔軟な対応をとっていくことが、今後の課題であると認識しています。

最後になりますが、やはり会計事務所で研修が必要だと思う理由を改めて教えてください。

私は会計業界こそ、研修が最も必要だと思っています。なぜかというと、会計業務は人が粗利を作る商売だからです。会計業を財務分析すると粗利と人件費しかありません。粗利100%の商売は材料で賄えません。原価はなし、人がすべてなのです。忘れがちですが、我々の仕事はサービス業ですから、人で勝負するしかないからこそ、絶対に研修を行ってその人自身を成長させる必要があると強く考えています。

税理士法人SS総合会計 代表社員
税理士 鈴木 宏典
プロフィール
税理士法人SS総合会計 代表社員 税理士 鈴木 宏典

同志社大学法学部・法学研究科卒。税務、財務コンサルティングに加え、コーチング・経営計画・経営会議を通じマネジメントアドバイザリーサービス(MAS)を得意とする。SS経営コンサルティンググループの二代目経営者として、60人を超える社員・パートスタッフとともに500社を超える中小企業の顧問をしている。近時では、地元向けセミナーイベントSSフェスタで200人を超える集客に成功。顧問先に対して、日々経営指導に励んでいる。後継者向け経営塾「経営輝塾」を35期まで開催。また中小企業のみならず、同業者である税理士のビジョンも叶えるべく、東京・大阪・名古屋・福岡など日本各地でセミナーを行い、MAS事業化・人材育成等会計事務所の仕組化を全国に広げている。これらを通じてSS経営コンサルティンググループのブランディング活動を積極的に行っている。
著書に『デキる二代目社長は知っている事業承継5つの鉄則』がある。

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