事務所を加速度的に成長させたのは企業研修だった!
鈴木宏典がたどり着いた環境づくりの2週間 Vol.1
税理士法人SS総合会計 代表社員 税理士 鈴木 宏典
税理士を超えた経営のパートナーとして静岡県浜松市で50年以上、経営者の悩みに寄り添いサポートを続けてきた税理士法人SS総合会計。令和5年3月期にMAS単独売上が5,000万円を超えるなど、人材・業績共に拡大中である成長まっしぐらの企業を率いる鈴木宏典先生にお話を伺いました。
企業研修には大変こだわりを持たれていると聞いています。
特に新しく入所した方向けの研修はどのような内容なのでしょうか。
雇用形態を問わず正社員もパートも全員、入所したらすぐ、まずは2週間の「マインドセット研修」を受けます。
この研修のねらいは、新入職員に事務所の考え方や方向性、価値観を共有して、事務所と同じ方向を向いて力を尽くしてくれるマインドの醸成。入所のタイミングによっては、マンツーマンで行うことも多いです。なぜ入所直後の2週間で行うかというと、人間が新しい環境に対して、忠誠心をもってここで頑張ろうと思えるかどうかを判断する期間が2週間らしいんです。ですから、一般的な会計事務所とは違い、当事務所では、まず実務ではなくマインドセット研修から行います。この研修を始めてもう36、37年。事務所の文化のような存在になっています。
歴史があるのですね。
そのようなマインドセット研修を取り入れたきっかけはあるのでしょうか。
「入所直後の2週間で、事務所の方向性や価値観をマインドセットできたら、一番効率が良いな」という思いが最初のきっかけです。トップの考える方向性に対して、職員が共感や納得をしていないと、やはり組織として生産性は上がりません。あくまでも組織なので、職員がそれぞれ自分のやりたいことを自由に楽しくやって、というのは違うと私は考えています。資本主義社会で勝ち残り、企業として生産性を最大化するためには、しっかりとした組織化が必要で、そこでは当然トップのめざす方向に対して、職員たちがどのように仕事を遂行していくかが非常に大事ですから。
マインドセット研修は、我々経営側にとって効率的な教育システムですが、受ける側の新人メンバーにとっても、詳しい業務内容とともに事務所の方向性もわかって非常に助かるという声も大きいですね。
マインドセット研修の特長を教えてください。
まず前提として、マインドセット研修は理念教育とは違います。例えば当事務所であれば、「すべての人にSpirit&Systemを」という企業理念について、どう思うかを考えるのが理念教育ですよね。けれども理念は抽象的なことが多くて、いくら背景を伝えたとしても、自分の実務に落とし込んだり、今から取り組むことにすぐに生かしたりすることが難しい。
その点、価値観研修であるマインドセット研修は、ビジネスマナーを習得しながら、なぜそれが大事なのかを、トップの思いや組織の目指す方向性をからめて説明しているので、体感で理解しやすいし、実践でもすぐに役立ちます。研修は2週間続くので、学んだ内容は自然と習慣化しますし、長いスパンで同じ企業で働くと考えたときに、代表や組織の言っている方向性と自分の考えとのギャップが生まれにくくなります。
マインドセット研修のスケジュール
長年続く研修なので、内容は定期的にアップデートされているのでしょうか。
ええ、どんどんしています。研修担当者には、私の考えはもちろん、自分の性格や好みも率直に伝えているのですが、それを反映した研修内容に進化していますね。自分で言うのもなんですが、トップから好かれること、上司の性格をつかむことは、組織で仕事をするうえでかなり重要です。本人にとっても、把握している方が仕事を進めやすい。最近、腫れ物に触るように、上司が部下に接する傾向がありますが、これは組織をおかしくする一因だと感じています。部下に話をするときに、傷つけないように話すことが優先されてしまうと、真意がうまく伝わらないこともあるでしょう。その過程でトップの方向性が歪曲されてしまい、生産性アップにつながらないことも少なくありません。
ホワイトすぎる職場で若手社員が離職してしまうという話題もよく耳にします。
職場環境の改善は望ましい変化である一方、企業はコンプライアンスを意識しすぎて
パワハラと訴えられないように、残業させない、叱らないという
見方によっては過度な配慮がなされている職場もありますね。
本当に由々しい問題だと感じています。仕事ができるようになって成長できるようになれば、自然とやりがいを持つことができると思うのですが、その成長する機会を失うということですから。本人のやりたいことやモチベーションにフォーカスしすぎず、与えられた仕事をこなしていくことで成長しモチベーションを上げていくサイクルのほうがよいのではないでしょうか。
よい意味でマイペースに取り組めないような、本人にとって少し上のハードルを設定することがとても大事です。組織にいる以上、仕事はチームワークですから、チームの戦力を上げるためには、本人が自分で認識している以上の力を出してもらう必要がある。そのためにも、本人に正確なフィードバックをすることが不可欠です。簡単に褒めるのではなく、仕事の完成物の評価に関しては、事実をありのまま伝える。それが後々必ず本人のためになるのです。ですから上司は厳しくないといけないというのが私の持論です。
そのためにマインドセット研修を入り口で実施することが、
思いを共有するという意味でも大事なのですね。
研修内容はどのように変化してきたのか教えてください。
開始当初は、社風や価値観を共有するほかは、電話応対や来客対応、あいさつや身だしなみ、職場のマナーといった、単純なビジネスマナーが研修内容の中心でした。その後、会計事務所の現場から、教えてほしい内容のリクエストが入るようになり、都度研修に追加していきました。具体的には、指示の受け方やメモの取り方、経営会議の際の電話対応の方法、所長に対する話し方や接し方、所長から依頼された仕事への取り組み方などですね。研修内容を追加する際は、リクエスト理由を現場に確認したうえで、それが必要である背景を必ず合わせて研修内で伝えることを徹底しています。
研修を受ける側である新人にとっても、なぜそうしないといけないのか納得しやすいと思います。
研修内容がアップデートされていく効果を実感されることはありますか。
先ほど、研修担当者には、私の考えを常に共有しているとお話ししましたが、研修担当が私の意向を確実に汲んで研修内容に取り入れてくれることで、事務所としてのベクトルが明確になりました。事務所側と新人メンバーとの意識のギャップを解消でき、新人の不安が解消され、働きやすい環境を整えることができました。 今の研修は、仕事の目的・背景を明確に伝え、仕事の型を教え、それが実践できれば承認、できなければフィードバックして再度指導という自立型人材の育成を軸に据えています。やはり大変だと思っても、仕事を受けることで成長のチャンスが得られるのですから、自分に打診された仕事はまずは気持ちよく引き受けてくれる人になってほしいと思います。完璧にこなせないのは当たり前。できなくなりそうになったら周りに相談しながら仕上げていくという一連の流れが大事なんです。とにかく仕事は前向きに引き受けて、周りの協力を受けながらこなしていくことで仕事のやりかたを覚えると同時に、やりがいも感じられるようになるはずです。
プロフィール |
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税理士法人SS総合会計 代表社員
税理士 鈴木 宏典 同志社大学法学部・法学研究科卒。税務、財務コンサルティングに加え、コーチング・経営計画・経営会議を通じマネジメントアドバイザリーサービス(MAS)を得意とする。SS経営コンサルティンググループの二代目経営者として、60人を超える社員・パートスタッフとともに500社を超える中小企業の顧問をしている。近時では、地元向けセミナーイベントSSフェスタで200人を超える集客に成功。顧問先に対して、日々経営指導に励んでいる。後継者向け経営塾「経営輝塾」を35期まで開催。また中小企業のみならず、同業者である税理士のビジョンも叶えるべく、東京・大阪・名古屋・福岡など日本各地でセミナーを行い、MAS事業化・人材育成等会計事務所の仕組化を全国に広げている。これらを通じてSS経営コンサルティンググループのブランディング活動を積極的に行っている。 |