「ゲーム化」がもたらす売上10億円超への突破口
成功を生む実験場・さきがけ税理士法人の新戦略とは Vol.2

「ゲーム化」がもたらす売上10億円超への突破口 成功を生む実験場・さきがけ税理士法人の新戦略とは

さきがけ税理士法人 代表社員税理士 黒川 明

2008年1月の設立から16年。現在売上10億円超・従業員数110名超を誇り、自他共に認める多摩エリアトップクラスの税理士法人へと成長を果たしたのが、さきがけ税理士法人だ。売上、組織規模ともに成長の勢い止まぬ同法人。その躍進の秘密はどこにあるのか。さきがけ税理士法人の創設者であり、代表の黒川明先生に話を伺った。

採用そして人材育成でも
スタッフが存分に鍛えられる仕組みづくり

ゲーミフィケーションの成功は、まさに「自社は実験場」という黒川先生の考えのもと、
新しい仕組みを導入した成果ですね。

それ以外でも、仕組化がうまくいった例は何かあるでしょうか。

そうですね。例えば新人教育の場面などは、「やってみる→調整する→続ける→仕組化する」という流れが顕著に見える場面です。
当法人では採用の際も、面接や内定式といった場面で厳しいことも隠さずに伝えています。たとえば「週20時間程度の自己学習はしないと、現場では役に立たないよ」といったことです。実際にやっているメンバーは現職でも半分いるかどうかでしょうが、やった人は目に見えて成長します。
厳しいことを伝えてもミスマッチが生じる可能性はゼロにはなりません。ですが、その可能性を少しでも小さくできるよう、伝えにくい部分も含め、できる限り正直に向き合っています。


入所前からミスマッチを減らせるよう、率直に話す関係を築かれているのですね。
入所した後では、どんな点に工夫をされているのでしょう。

入所後は1か月程度で小規模企業の担当に任命します。どんどん現場(=お客様の前)に出る。これは、経験の浅いうちは本当に怖いと思います。しかし、その恐怖心が人を育てるのです。
これは管理職の育成でも同じですね。当法人では、新卒3年目の26歳ほどで課長職を務めた者もいます。やってみたいという熱意がある者にはどんどん任せる。その一方で、「やってみたけど向いていなかった」と本人が感じたら、きちんと役職を外して個人として活躍できるポジションに戻します。そういう体制を築いていますし、それが必要だと考えているのです。

そうした人材育成の場面で、どんな仕組み化が生まれたのでしょうか。

最近は管理職ポジションにいるスタッフを、どんどん他事務所見学会に連れていくようになりました。よその先生が実践していたのを見て、真似してみたところ、思いがけない効果があったためです。
たとえば、見学先の所長先生が理念について話されるのを聞いて、うちのスタッフたちは「ためになります」と頷きます。しかし、似たような話は私からも何度もしているのです。私が話しても聞き流すのに、どういうことだよ、と(笑)。
おそらく、見学会という場が「何か新しい発見や知識を見つけてこよう」という意識をスタッフたちの中に芽生えさせるのでしょう。そうした姿勢で話を聞くことが、「うちでも課題になっていたことが話されていた。やはりどこもそうなのか。ならば、どうしたらいいのだろうか」と解決に向けて前向きに考え始めるきっかけになるようです。
こうした経験ができるのはとても面白く、スタッフの視野も広がると思いました。本格的に始めたのは昨年あたりからですが、今後も続けていこうと考えています。


理念づくりにもスタッフの意見を反映
率直に話せる社風のもとで、さらなる挑戦を!

さきがけ税理士法人は理念を重視されている印象が強いのですが、
その理念はどのようにして作られたのでしょうか。

理念を作る段階から、スタッフに参加してもらう形式を取りました。当時は40名ほどの規模だったのですが、メンバーを8つのチームに分けて「さきがけの理念とは」をテーマにチームごとで議論してもらいました。

各チームで考えた理念を、また持ち寄って議論をして、他人事ではなく、生みの苦しみから共有することで、「自分たちの理念はこれだ」という気持ちを強く持ってもらえるものになったと感じています。
また、こうした経験を自らがすることで、お客様企業への提案にも応用できるという効果もありました。経験を踏まえた提案で、お客様の経営理念策定のお手伝いができるようになりましたね。

さきがけ税理士法人

そうして作られた理念を、どのように職員に浸透させているのでしょうか。

作っただけでは意味がありませんから、浸透には日々気を配っています。毎日の朝礼や月1回の全体会議、勉強会などで、折に触れて理念についての話をしたり、ディスカッションしたりする機会を設けています。当法人では、理念集を「虎の巻」という名称で共有しています。「理念」と呼ぶと構えてしまいますが、「虎の巻」だと自然と業務の中で「ここ大事だよね」と話されたりします。そうした工夫を各所で行いながら、皆に共有してもらえるようにしてきました。

こうした「さきがけ税理士法人の風土や社風」を守るために、日常の中で行われていることはありますか。

昨今の社会を見ていると、「あれは言っちゃダメ。これもやっちゃダメ」と息苦しさを感じることはないでしょうか。たとえば「叱る」といったことも難しい世の中ですよね。ですが私たち税理士の仕事は、時に「叱られることがない経営者を叱る」ことが求められる仕事です。時には必要なこと、大切なことを伝えるためにお客様とぶつかることもあるでしょう。なのに、社内で言いたいことも言えないようなコミュニケーションを取っていてよいのか。そうは思えませんでした。
ですから、私も社内で率直な会話を意識して行うようにしています。時には少し下品な話などもしてみたり…(笑)。たとえば先日は、「インド旅行で、水が合わずお腹を壊し、漏らしてしまって大変だった」なんて話をしました。もちろん行き過ぎて相手を不快にしてしまった場合は謝って直しますが、気を遣いすぎて何も話せないような雰囲気にはしたくないと思っています。

言いにくいことも言える雰囲気、風通しの良い社内風土といったものを大切にされているのですね。

その通りです。また、社内だけでなく仕事の現場でも、お客様にも「言うべきことを言う」必要があります。そのために、実践的なコミュニケーションを想定した社内ロールプレイングなどの訓練も行っています。まさに本番さながらで、私や幹部が社長役を務め、「こういう流れになったら向こうが言っていることが変なのだから、思い切って一喝してよし!」と、実践的な指導を行っています。
またクレームなどが発生した際は、私や幹部もお客様へ率直に「おかしいことはおかしい」と伝える姿勢を見せています。そうしたところからも意見を言う姿勢を学んでくれていると嬉しいですね。

今後に向けて、現在進行形で取り組まれている「実験」はあるのでしょうか。

税理士という仕事は独占業務で、参入障壁がとても高い。なので、税理士法人を経営しているといっても、何の保護もない一般事業を営むお客様たちと比較して下駄を履かせてもらっている感覚があったのです。
そこで最近、トレーニングジムのフランチャイズ経営をスタートさせました。24時間経営で、多摩センターと永山に開設。合わせて2,000名超の会員さまにご利用いただいています。
お客様と対等に話すためには自らも経営の現場を知り、視点を得ることが重要だと考えています。

事業展開について、トレーニングジム以外にも構想はあるのでしょうか?

現在は居酒屋事業や、サウナ、猫カフェの経営に興味があります。
とくに居酒屋の繁盛チェーンのフランチャイズをやってみたいですね。繁盛店は忙しい中でも店を切り盛りできるよう、視野が広くて動きがいい店員さんが多いわけです。そういう感覚は会計事務所の仕事でも生かせるはず。職員を研修として居酒屋に送り込むのも面白いなと考えています。
本業にもプラスになるような展開を今後もぜひ続けていきたいですね。

プロフィール
さきがけ税理士法人 代表社員税理士 黒川 明

さきがけグループ代表。税理士、社会保険労務士、行政書士、離婚コンサルタント、パワーリフター。1978年うまれ。北海道出身。4年留年し東京都立大学卒。趣味はドーミーインに泊まること、ベンチプレス。バツイチ独身。2008年に黒川税理士事務所(現さきがけグループ)を開業。スポーツではパワーリフティングにハマり2024年は南アフリカ開催の世界クラシックマスターズパワーリフティング選手権大会に120kg超級の日本代表として出場。さきがけグループはGPTW Japanから2024年12月「働きがいのある会社」の認定を受ける。

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