「ネット時代に選ばれる税理士事務所」はSNSをこう使う!
TikTokフォロワー15万人、Instagramフォロワー12万人の税理士・笹圭吾の流儀 Vol.2

「ネット時代に選ばれる税理士事務所」はSNSをこう使う! TikTokフォロワー15万人、Instagramフォロワー12万人の税理士・笹圭吾の流儀

REBFLEET税理士事務所 代表税理士 笹 圭吾

開業1年で顧問先を100件以上に増やしながらも顧問契約を持たない経営に方針転換し、メタバースを活用した士業のコミュニティづくりに活路を見出したREBFLEET(レブフリート)税理士事務所の笹圭吾先生。その活動は2024年に「士業近未来コミュニケーション大学」へと発展し、さらに積極的な展開をみせている。躍進を続ける笹先生を駆り立てたきっかけや、フォロワー数が約15万人のTikTokerが考えるSNS活用のポイント、税理士という仕事の今後のビジョンなどを聞いた。

メタバースを活用したコミュニティづくり

企業の関心は高まっているのに税務の専門家が少ない暗号資産やメタバースなどについて学べる
ネットとリアル両方の士業コミュニティ「SAMURAIバース」を開業翌年から主宰されました。その理由は何だったのでしょうか?

国税を辞めて開業を検討した段階で、税理士業界の課題も見えてきました。これは税理士業界に限らずですが、既に顧問を多く抱えている先行者に有利なゲームルールになっています。また、事務所規模が大きくなったら採用や教育で困ることになり、業界内で顧客と経験者人材を取り合う構図になっていることに気づき、事務所規模が大きくても小さくてもどっちにしても疲弊している事務所が多いことに気づきました。よって、新たな価値提供の仕方や税理士の役割を再定義し、小規模事務所や一人事務所でも得意分野を生かし、共創できるルールを確立するべきだと思いました。

そして、業界内で取り合うのではなく、業界規模そのものをいかに拡大するかを検討するようになりました。そこで、当時はメタバースがシンプルに流行っていたのです。同じような意識を持った士業の方を集める際のキーワードとしてインパクトもあり、いわばマーケティング用語として使った部分もあったのですが、結果としてはメタバースが私自身のブランディングになりました。 暗号資産については、話題になっているものの損益計算がややこしくて、法整備もされていないことから税理士からするとリスクだらけだったのです。そこで、暗号資産に関心のある日本中の税理士を集めて、お互いの疑問やノウハウなんかを全部共有してやっていこうと考えたのです。暗号資産のほかWeb3とかメタバースとか、その辺りの新しい問題で先行して、今後起こる課題を見据えてサポートしていけば、ビジネスとして成立するはずだと思ったのです。

目玉だった暗号資産に関する交流は以前と比べて落ち着いた印象を受けます。
一方で、今年に入ってからはSAMURAIバースの活動の幅を広げ、SNSを活用した情報発信の手法や企業内コミュニケーション活性化などについて学べる「士業近未来コミュニケーション大学」という新しい取り組みも誕生しました。この背景には何があったのでしょうか?

暗号資産については、計算方法を会得するため暗号資産に触れる必要がありますが、DeFi、NFT、ブロックチェーンゲームと次々に新しい取引方法が発生し、その進化のスピードと教育の再現性をバランスさせるのが非常に難しくなっています。再考の必要性を感じていたところトレンドが落ち着いたこともあり、タイミングを見極めていくべきだと思っています。暗号資産については、税務の視点だけではなく資金調達など財務的な視点でも今後大きな存在になるでしょうが、それにはまだ少し醸成期間が必要かと考えています。さらに、2023年にChatGPTに代表される生成AIブームが出てきて、その反動でそれまでのメタバースとかWeb3なんかのブームも下火になってしまいました。自分のリソースでは、この下降トレンドの中でビジネスとしてやっていくのはしんどいなと感じました。そこで立ち上がったのが「士業近未来コミュニケーション大学」でした。
そもそも「SAMURAIバース」自体がメタバースプロジェクトで、日本にいながら世界で活躍できる人をどう増やしていくか、それをサポートする士業をどう作るかというのをやっていたのです。

士業近未来コミュニケーション大学

要は未来でも活躍できる士業を増やす目的で始めたものになります。暗号資産については先ほどの理由で沈静化してしまったので、一旦ビジネス化という目標を「みんなに知ってもらう」という位置づけに変えました。さらに、メタバースが遠い将来必要になるコミュニヶーションツールとするなら、今必要なのはweb2.0を代表するSNSの活用であると思い、SNSの効果的な活用法を伝えていこうという話になりました。

SNSって、フォロワー数を増やすというのは一過性の話で、今のビジネスをどう前に進めるかの方が重要なのです。そのベースにあるものはコミュニケーションです。SNSにもマナーがあって、コミュニケーションの仕方がある。いきなりDMを送ったりするとリアルな世界だとナンパしているようなものだし、プロフィールも相手目線で伝わるものになっていないからせっかくの環境を活用できていない。テクノロジーツールは活用方法が分かっていないから効果が出ないのですが、それが学べるところが皆無だったので士業に特化した近未来のコミュニケーションツールである、SNS、メタバース、AIなどが学べる環境を構築しました。将来的には、この大学で学んでもらい、作業に疲弊しない自由な活動ができる新しい士業と一緒に日本の産業をひっくり返すようなプロジェクトをつくりたいと思っています。

メタバースを活用している税理士事務所は結構あるのでしょうか?

数はまだまだ少ないのですが、活用している事務所はあります。実際に私のクライアントでもメタバースを活用していますが、とても利点は多いです。札幌、東京、大阪と拠点が離れている事務所さんが、朝9時の時点でリアリティーをもって簡単に1カ所に集まれるのです。メタバース上で朝会として代表者の声を聞けるのですが、これは今までなかったことですからね。
メタバース上の事務所に通勤したら、画面内の自分の席に着くというルールを決めておきます。そうすると、札幌の人が遠く離れた東京の人にも「○○について教えて下さい」という質問もしやすくなるのです。席に着いていなかったらメタバースから出たのだなというのも分かりますし、事前にルール決めをしやすいですしね。ウェブ会議と比べて自分が実際にその場にいるような臨場感がずっとあるのがメタバースのいいところです。
税理士事務所はリアルの世界でも連携や協業、合併などをすることが多々あります。メタバースになることで、小さな事務所同士が地理的に離れていても協力し合える可能性がずっと高まるのです。

私が今やろうとしていることの一つに、ひとり税理士さんをどう稼がせてあげるかというものがありますが、これにはDX化や効率化が必要になってきます。そうすると、どうしてもわざわざオフラインで現地まで行く頻度は減るし、コミュニケーションの数も減ってきてしまいます。だから、例えば「週1回、定例でここに集まりましょう」という形でメタバース内に待ち合わせ場所を作っておくことによって、ひとり税理士さんが簡単に交流できる機会を作っているわけです。
また、現在、一般向けの税金が学べるコミュニティ「らく税」内のメタバースで朝活、昼活、放課後、夜活と時間を決めただけで、簿記検定部やAI活用部が組成され、会員さんどうしの交流が始まっています。これが、LINEやメールでは不可能だった効果だと思います。家でも職場でも無いもう一つの居場所がメタバースにはあります。

税理士の仕事はもっと広げられる

税理士の仕事の幅を広げたい、新しい可能性を探りたいと模索されてきた先生は、現在の業界をどうみておられますか?

まだまだ、顧問契約を重視した伝統的なビジネススタイルに価値を置く意識が根強いと思います。ですが私は、顧問契約を意識していないビジネススタイルというのは、十分に成り立っていくと思います。
税理士だったら顧問業をやらないといけないみたいな発想がどうしても抜けませんよね。顧問契約で1社から月3万円もらっていたら、もっと契約数を増やしたい、月の金額を引き上げたいと考える事務所が多数派でしょう。その考えを否定はしませんが、それを増やすことでリスクも労働時間も増加します。これで、開業時は疲弊する税理士が多く、しばらくすると開業税理士は作業から解放されるものの、疲労感は従業員に移動しただけで、リスクは大きく残り続けます。
そこで、税理士の新しい働き方としてもっと別の視点がないのか模索しているという感じです。

例えば、月3万円の顧問契約が思うように増えないと限界を感じているのなら、顧問契約の内容を分解して、知識要素は無料または安くして提供してみるのです。もはや知識自体には大きな価値がなく、知識を顧客ごとに最適化するコンサルティングサービスに価値があることの整理にもつながるでしょう。そして、税の知識に人は集まります。これは、本当にすごいです。世の中の事業者がマーケティングを駆使して、経営者を集めようとしていますが、税金というキーワードの集客は効果が非常に高いといえます。
1人月額1,000円程度でも人数を集めれば母集団としての価値が生まれ協賛なども募れますし、作業とリスクさえ負担しなければ、低価格で大人数を集めることができます。さらに、ほかの税理士さんがすでに付いていても問題なく集められるという利点もあります。
経営者をたくさん集めたい事業者とアライアンスを組むことで、自社でサービス設計する必要なくマネタイズすることが可能になります。この思考をまとめると、時代の進化に逆らわないよう仮説を立ててみたという感じです。知識を独占できていた時代ではなくなり大衆化されているのだから、低価格で提供し、テクノロジーが発達したのだから作業は自分でやってもらって、法律が複雑で税賠リスクが高くなっているからリスクも取らない。その分、価格は安いのです。

ただ、税務相談となるとヒアリングしたり、状況整理して真摯に向き合ったり必要があるので価格は適正にもらうことになり、月3万円ではなく、月10万円以上のコンサルフィーを設定するというイメージです。これは、資格を持つ税理士よりも財務コンサルタントの方が高単価を得ていることからも理解できると思います。顧問報酬があることで納得感を得た結果、税理士が取れるはずの市場がほかに奪われているのです。
開業時の持たざる者には守るものがない分、進化を遂げやすいという利点があります。

別に伝統的な顧問業がダメだなどと言っているわけではないのです。僕も顧問業を今後やらないというわけではなく、今はやっていないという選択をしているだけでしかなく、本質はもっと自由な活動をベースにしたうえで税理士という資格を活かすということで良いと思っています。
今あるものを当たり前として受け入れるのではなく、もっと自分たちの独自性や強みを活かしたビジネススタイルを見つけるために柔軟な発想をしたら良いのではないでしょうか。決まりきった人生ではなく、将来の自分に期待ができるわくわくした税理士が一人でも増えたら良いなあと思っています。そのほうが業界全体にとっても、きっとプラスの効果が生じるはずです。

プロフィール
REBFLEET税理士事務所 代表税理士 笹 圭吾

大学時代から税理士を志すが、会計事務に勤務していた母親のアドバイスもあって卒業後は大阪国税局へ。17年間の在職中、国税調査官として1000件以上の税務調査にあたった。
2020年9月、REBFLEET税理士事務所を開業。SNSでの情報発信に積極的で、TikTok、Instagramフォロワー数は税理士としては異例の合計総フォロワー数約28万人を誇る。2016年、税理士資格取得。

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