「ネット時代に選ばれる税理士事務所」はSNSをこう使う!
TikTokフォロワー15万人、Instagramフォロワー12万人の税理士・笹圭吾の流儀 Vol.1

「ネット時代に選ばれる税理士事務所」はSNSをこう使う! TikTokフォロワー15万人、Instagramフォロワー12万人の税理士・笹圭吾の流儀

REBFLEET税理士事務所 代表税理士 笹 圭吾

開業1年で顧問先を100件以上に増やしながらも顧問契約を持たない経営に方針転換し、メタバースを活用した士業のコミュニティづくりに活路を見出したREBFLEET(レブフリート)税理士事務所の笹圭吾先生。その活動は2024年に「士業近未来コミュニケーション大学」へと発展し、さらに積極的な展開をみせている。躍進を続ける笹先生を駆り立てたきっかけや、フォロワー数が約15万人のTikTokerが考えるSNS活用のポイント、税理士という仕事の今後のビジョンなどを聞いた。

「顧問契約ゼロ」という大胆な方針転換

17年間国税調査官を務めた後、2020年9月に大阪市でREBFLEET税理士事務所を開業されました。
半年後には顧問契約が70件ほど、1年後には110件ほどと順風満帆なスタートでしたが、そこから顧問契約を持たない現在のスタイルへと転換した経緯を教えて下さい。

色々と理由はあるのですが、一番大きな要因は僕よりも有能な税理士がたくさんいたから、その税理士を紹介してあげた方が顧客は喜ぶと思ったからというシンプルな話です。逆にほかの税理士が苦手とすること、僕にしかできないことに注力する方が社会的な価値が高いと感じました。

当初は一般的な事務所でいこうと考えてはいたのです。私は元々国税出身なので、調査というか出口の部分は見えるし、入口部分である集客にも自信がありました。入口と出口の間の部分については、税理士事務所で働いた経験が長い友人がいたので、彼と一緒にやったら良いのではないかと始めたのです。その先に、ゆくゆくは税理士法人化していくという流れがビジョンとしてはありました。

方針転換後から顧問業は一切されていないとのことですが、
現在はどのような業務を主軸としていますか?

メインとなるビジネスとしては、コミュニティ運営です。SNSのフォロワー層ごとにコミュニティをつくっています。税理士向けとしては「士業近未来コミュニケーション大学」で、SNSや交流会参加作法、営業手法など開業士業にとって必要なノウハウが一式学べる環境を提供し、一般向けとしては「日本で一番楽しい税金の授業(らく税)」という税金やSNS、動画編集などが学べる環境をつくっています。らく税の会員さんは主婦やシングルマザーも多いので、在宅で稼げるように簿記3級や動画編集を学べるようにしていたり、仕事も斡旋したりしています。ここで、税理士のSNS発信にかかる動画編集とSNS運用作業をらく税の主婦が請け負うことでお金を動かしています。さらに、収益が発生し確定申告をする場合、ライトなものは自分でしてもらい、ハードなものは税理士に仕事としてお願いするという仕組みで、お金の循環を生み出しています。
収入額でいうと、4割くらいがコミュニティ運営の会員費、5割以上が税理士向けの税務調査相談や、SNS運用代行のようなコンサル的な要素のある仕事で、残り1割ほどは私がテレビやセミナーに出た際の出演料という感じですね。あとはSNSの再生数に応じた収益や、ライブ配信もしているのでギフト(投げ銭)もあります。ライブをしてギフトを投げてもらっている税理士は私ぐらいしかいないと思います。

笹先生のTikTokフォロワー数は約15万人と税理士としては異例の規模ですが、
SNSでの情報発信に力を入れ始めた経緯を教えていただけますか?

SNSをやるのか、やらないのかと聞かれれば、私は「やらない選択肢はない」とずっと思っています。もう10年以上前からSNSの時代が来るぞと言われていて、情報強者というべき経営者が軒並みやっている現状から考えると「やらない理由がないからやってみる」という単純な理由です。
みんな考え過ぎていて、すぐに「どんな効果があるの?」「集客できるの?」と言っていますけど、私は「まずはやってみればいい」と思ってしまうのです。短期的なメリットを考えて時間の投資が行えないこと自体が機会損失に繋がっていると感じています。だからメタバースでもAI(人工知能)でも、世間の関心が高まっていて、時代がそちらに行こうとしているのだったら、ぜひやってみればいいと思います。

疑問に答える場を提供する

最近はSNSに力を入れる事務所も増えてきました。認知度向上や集客、採用など狙いは様々のようですが、先生はどのような狙いで情報発信をされていますか?

税理士事務所開業時は、集客目的でした。しかし、税理士顧問業を辞めた後は、サービスや商品がなかったので、目的は明確でなくなっていました。ただ、SNSをしないとか辞めるという選択肢はありませんでした。私は、人には「集客や採用に役立たせるというゴールを見据えないといけない」とか「アカウントをきちんと設計していきましょう」とアドバイスをします。でもそれって今となっては言えることで、僕が配信を開始した当時は集客や認知獲得できるかどうかなんて分かっていなかったし、そもそも、そのプラットフォームが流行らないかも分からなかったのです。僕がTikTokを始めた時、どれだけバカにされたことか……
要するに、開始するタイミングによって配信する目的が変わると思っています。今、僕が配信し続けている理由はSNSが文化になったからという感じで、インターネットやメールを当たり前のようにビジネスで活用しているように、僕にとってSNSはビジネスするために当たり前のものだからです。そこにフォロワー数の獲得は全く目的にしていません。どちらかというと、不特定多数の人とコミュニケーションしやすいからです。具体的には、僕はお酒のお付き合いが苦手なので、開業後は一切していないのですが、人脈は拡がっています。さらに、その人脈の関係性の深さも構築することができています。もし、SNSのない時代に独立開業していたなら、ゴルフやお酒の付き合いもしていたと思います。SNSのおかげで僕みたいな社交場の苦手なタイプに市民権が発生した気がしています。 また、SNSで毎日投稿するのが大変そうだと言われるのですが、他の方が毎日飲みに行っていることと変わらない感覚です。習慣化されれば感覚が変わります。誤解のないようにお伝えすると、これは、オフラインの付き合いを否定するものではなく、人とのコミュニケーションの選択肢を増やし、コミュニケーションの要素を分解することで、オフラインの価値をより高めることに繋がっている感覚です。

TikTokでのネタ選びや若者への伝え方など、SNSで情報発信する際に意識している点はありますか?

これは至ってシンプルなのですが、私は質問に答えているだけなのです。ようは、世の中の需要に対して供給しているだけですね。SNSをやっている事務所には肩肘を張りすぎているところが多いですが、私がやっているのはシンプルで、質問しやすいような雰囲気を出すのを大切にしています。
質問してもらったら、「これ、確かに難しいなあ」なんて言いながら答えていきます。すると、それに対してまたコメントや問いが来るので、さらに答えていくというのを繰り返しているのです。質問が一番の需要といえるのではないでしょうか。
SNSをやっている税理士事務所さんは、みんなコンテンツにこだわって作り込もうとし過ぎています。実際は、世の中の人は税理士にそこまでハイレベルなものは求めていないし、深い知識を別に必要ともしていません。
自分が気になっている問題について、例えば「103万円の壁」に自分は該当するのか、今の収入だと該当しそうかどうかを聞きたいだけだったりするので、その疑問に答えてくれる場がほしいのです。私はそういう、素朴だけど相手にとっては重要な質問に答えているだけですが、そういう場って意外と少ないのですよね。私も以前は結構コンテンツを作り込んだ時期もあるのですが、現在は基本的にライブしかやっていません。もはや作り込む時代ではなくなってきていますね。それなのに逆行してみんな作り込んでいますが、むしろお金をかけない方がいいでしょう。シンプルであればあるほど情報だけが入ってくる見やすい動画になります。プロは色々足し過ぎています。今は、引き算が良いと考えています。

SNSは「教育道具」でもある

ネット時代の税理士事務所が「選ばれる存在」となるためには、どのような広報・マーケティング戦略が効果的だとお考えですか?

SNS展開とWEB戦略は、ネットを使っているという点では同じでも、アプローチが全然違うと思います。SEO対策や広告などが今までの基本的なWEB戦略の一つだったと思うのですが、これでは目に見えている需要しか拾えませんよね。 ネットで何かを検索しようとしている人って、要は税理士を探していたり、解決したい課題を持っていたりするからそうしているわけです。でも、すでに顕在化した需要だけをターゲットにしてもなかなかうまくいきません。潜在的な需要を拾っていくには、もっと早い段階からアプローチしないといけません。大企業のクライアントが欲しかったら、それより前のスタートアップのところから意識してWEB戦略をやっていく、みたいな感じだと思います。

それでいうと、さらに潜在的で、今はまだ起業していないみたいな人に刺しにいけるのがSNSなのです。SNSは情報を効果的に飛ばす道具という側面もあるけれど、それだけではなくて「教育道具」でもあると思うのです。コミュニティに招き入れて教育していくということです。このコミュニティに招き入れた状態がフォロワーです。この後の方が重要なのに、フォロワー獲得に邁進しがちです。だからとにかく一本バズらせたいという短期的な視点ではダメで、この本質的なコミュニケーションの仕方を理解していかないと集客や採用につながりません。
また、SNSの良さは集客だけではなく、発信を通じて自分の能力を高められるメリットもあります。よって、SNS運用を丸投げしてしまうとノウハウが貯まらず、1年後には微妙なフォロワー数のアカウントだけが残るということになってしまいます。
SNSの活用でフォロワー数はそれほど重要ではありません。フォロワーが増える、増えないは運でしかないのです。

私もフォロワー数が100とか200くらいの時でも、素人ながらにブランディングはきちんと意識していたので、普通に集客はできていました。
ただ、漫然とやっていてもだめで、「自分はこういう人間です」としっかりブランディングしていく意識が大事です。例えば、私が自分のことを知ってもらいたい時、元国税の税理士でSNSではこんなことをやっていますという材料をあらかじめ発信しておけば、理解してもらいやすいし、そこから他の人にも紹介してもらいやすくなりますよね。私のことをよく知ってもらって、興味をもってもらう。さらに、人に紹介したくなるという状況を作る、いわば私という商品の営業代理店になってもらうというのがSNSの活用法の肝です。繰り返しになりますが、フォロワー数の多い少ないより、しっかりブランディングできていることの方がずっと大切だと思います。
まとめると、SNS、SEO、広告はすべて重要ですが、アプローチが違うのでうまく組み合わせていく必要があると思っています。

プロフィール
REBFLEET税理士事務所 代表税理士 笹 圭吾

大学時代から税理士を志すが、会計事務に勤務していた母親のアドバイスもあって卒業後は大阪国税局へ。17年間の在職中、国税調査官として1000件以上の税務調査にあたった。
2020年9月、REBFLEET税理士事務所を開業。SNSでの情報発信に積極的で、TikTok、Instagramフォロワー数は税理士としては異例の合計総フォロワー数約28万人を誇る。2016年、税理士資格取得。

ーー* 次回へつづく *ーー

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