成長の源泉は「研修」にあり!
多彩な育成システムに勝機見出す ひかり税理士法人の採用戦略に迫る Vol.2

成長の源泉は「研修」にあり! 多彩な育成システムに勝機見出す ひかり税理士法人の採用戦略に迫る

ひかり税理士法人 代表社員 谷 淳司

税務・会計のプロ集団であるひかり税理士法人。様々な研修制度を整備し、人材育成の取り組みを強化している。背景には、「働き手不足」への危機感があった。経営コンサルティングやM&A支援など、高付加価値サービスの質を確保しながら事業規模を拡大するにはどうすればいいのか。辿り着いたのが、充実した研修制度を築いて採用力を高める、という取り組みだった。社員の成長を後押ししながら会社の成長を目指す、ひかり税理士法人の戦略に迫る。

全ての社員に学ぶ機会を
成長意欲を後押しする ひかり税理士法人の研修制度とは

新卒も含め、「成長したい」と考えている社員のニーズに応えるために、
現状御社としてどのような制度を備えているのでしょうか?

例えば、ビジネススクールのグロービス経営大学院が設けている、3か月の学習プログラムに参加する機会を提供しています。
ここで学ぶ目的は、税務・会計や経営に関する知識の習得ではありません。参加する社員たちには、客観的かつ論理的に自らの主張を組み立てる手法を学んできてもらっています。与えられた課題に対して、仮説を立てながら自らの主張や解決策を作り上げていく。その過程では、他の参加者や講師の方々から様々な指摘や問題提起を受けます。

そうしたトレーニングを繰り返すことで、思い付きや直感、経験則を排して、客観的なデータや周りからのアドバイスを取り入れながら結論を導く思考法が身についていくのです。
20万円ほどかかるプログラムの参加費は、全て弊社で負担しています。スタートしてからまだ一年半ほどの制度ですが、既に10人近くの社員が、プログラムに参加しています。入社して一年ほどの社員から、10年以上の中堅・ベテランまで、参加者の年代は幅広いです。こうした思考ができる人材は、顧客とのやり取りだけではなく、社内で経営課題を検討する際などにも極めて重要な存在になっています。

社員の自発的な学びから得られた成果を、会社に還元してもらう仕組みとなっている訳ですね?

御社の「e-JINZAI」シリーズも活用させていただいています。税務・会計の知識習得に役立つのはもちろんですが、階層別に作られた研修が非常にありがたいと思っています。例えば、新たに管理職になる人材には、「リーダーシップ」に関する研修を視聴しチームをうまく率いる手法を学んでもらうなど、人材育成に積極的に用いています。
学びに対して前向きな人材が成長できる環境を、会社がきちんと用意しておく。そして、そうした人材が成長していって、業績面を中心に会社に貢献してもらう。そういう好循環を作っていきたいです。それは、他の社員に対するいい刺激にもなるのではないでしょうか。

御社は、経営コンサルティングなどいわゆる高付加価値サービスの提供にも力を入れていらっしゃいますが、専門知識の習得も研修を通じて行っているのでしょうか?

先ほども少し触れましたが、毎月、社員が自主的に参加する「ひかり塾」という勉強会を開いて、高付加価値サービスについて情報を共有し、知識などを深めてもらっています。社内外の専門家が講師を務め、経営コンサルティングや税務調査の事例研究のほか、最近では業務における生成AIの活用法など様々なテーマについて講義と議論を重ね、実践的な学びの場としています。希望する全ての社員が参加できる勉強会です。

ただ、高付加価値サービスを提供できるような人材は一朝一夕には育ちません。物事を論理的に考え、データを正しく把握し分析する。その上で、顧客と緊密にコミュニケーションをとりながら満足いただける提案を行う力が求められます。研修と実践を繰り返しながら、相当な時間をかけて知識や経験を身につける必要があるのです。
ですから、今のところこうしたサービスに関しては、中途人材に頼るところが極めて大きくなっています。

中途採用での人材発掘にも取り組まれている理由はそうしたところにあるのですね?

即戦力としての魅力は、やはり見逃せません。ただ、中途採用において、会計業界からの転職組が突出して多い訳ではありません。むしろコアターゲットに置いているのは、業界に近接した銀行出身者です。彼らには、経営者に寄り添い、経営というものを間近で見て、感じてきたという強みがあります。これは、他業界の会社員では得られない経験です。さらに、ビジネスマナーやコミュニケーション力についても高いスキルを身につけています。会計業界では、高付加価値サービスの分野でいかに他社と差別化できるかが勝負になります。その意味で、中途人材の発掘は引き続き進めていきます。
一方で、新卒で採用した人材にも、こうしたサービスに関する知識や経験を身につけて欲しい。時間はかかるでしょうが、新卒も中途も遜色なく、戦力として機能する日が来るのを待ち望んでいます。


充実した研修制度で採用力の強化を
京都から さらなる成長を目指して

現在、社員数が100人を超えるほどまで成長していますが、
具体的にどの水準まで増やしていきたいとお考えなのでしょうか?

少なくとも、税理士資格保有者については増員したいと考えています。現在、100人のうち税理士資格の保有者は20人ほどとなっていますが、これは少ないと思っています。全社員のうち、資格保有者の割合を3割くらいにまで引き上げたい。それはもちろん、税務会計に精通した税理士の増員が顧客に提供するサービスの質向上に寄与すると確信しているからですが、理由はそれだけではありません。
今後、全国にある拠点をより強化していくためには、社員税理士の存在が不可欠になるからです。弊社は現在、全国に8つの拠点を構えています。

ご承知のように、税理士法人が設ける拠点には、必ず社員税理士が必要となります。拠点をさらに増やすケースを想定し、十分な社員税理士を確保しておきたいという思いがあるのです。
また、現在ある拠点、特に大都市部の東京や大阪の拠点をより大きく育てていきたいと考えています。現状はスタッフの数もあまり多くないので、テコ入れを図るためにも税理士の数は増やしていきたいです。

拠点化は、採用力の強化にもつながりますよね。

弊社のアイデンティティは京都にあります。京都から全国展開している会計事務所は他にはあまりないと思いますので、そこは大事にしていきたい。ただ正直なところ、京都で就職しようという若い方はそれほど多くないという印象を持っています。採用を強化するには、重要なのは、近畿地方でいえばやはり大阪。さらに、東京の拠点の魅力が増せば、採用にいい影響が出てくるのではないかと思っています。
とはいえ、実際の採用マーケットに目を向けると、有資格者で転職活動をされている方はそれほど多くありません。ですから、税理士資格を持っていない方にも門戸を広げていきたい。弊社で働きながら資格を取得したいという方に、これからは積極的にアプローチしていきます。そのためには、資格の勉強に取り組みやすい環境を会社として作っていかなければなりません。例えば、資格取得のために学校に通う際、奨学金のような制度を用意することも一案です。また、資格取得を目指す社員には極力残業をさせないような勤務体系を整えるなど、様々なサポート態勢が必要となります。そうした一つひとつのシステムが、採用力の強化につながるのだと思っています。

入社後の育成ビジョンを示せるかどうかが、採用力にかかってくるということなのですね。

売上を増やすことももちろん大切です。社員の待遇に直結しますから、もちろんそこも重要なテーマです。しかし、それだけでは良い人材は来てくれないのではないかと、私自身は考えています。「この会社にいれば成長できる」と思える環境を提供できるかどうかが、採用力に直結するのではないでしょうか。採用と研修、あるいは採用と人材育成というのは完全にセットなのです。だから、採用だけ強化しても意味がない。充実した研修や育成環境というものをブランディングできて、初めて採用力が高まるのです。
少し大げさかもしれませんが、会計業界に身を置く人たちがそこに気づけるかどうかが、この業界の未来を左右する気がします。もちろん、多くの方々が気づいておられるとは思いますけれども、気づいた上で、危機感をもって、本気で採用戦略を練り直す必要性について考えるべきです。それが実現すれば、会計業界も、採用面で一般事業会社と対等に渡り合うことが可能になるのではないでしょうか。

プロフィール
ひかり税理士法人 代表社員 谷 淳司

1992年ひかり税理士法人に入社し、2015年に代表社員に就任。現在はひかり戦略パートナーズ株式会社の代表取締役と、一般社団法人ひかり相続センターの代表理事も務めている。多様化したニーズに応えるべく、決算や申告の代行・指導といった基本的なサポートから、企業における経営課題解決のための総合的なコンサルティングサービスまで幅広く対応し、複雑化する税制やクライアントのあらゆるニーズに的確に応えられる真の専門家として、企業の成長と地域の発展に貢献していきたいと考え、日々取り組んでいる。

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