成長の源泉は「研修」にあり!
多彩な育成システムに勝機見出す ひかり税理士法人の採用戦略に迫る Vol.1

成長の源泉は「研修」にあり! 多彩な育成システムに勝機見出す ひかり税理士法人の採用戦略に迫る

ひかり税理士法人 代表社員 谷 淳司

税務・会計のプロ集団であるひかり税理士法人。様々な研修制度を整備し、人材育成の取り組みを強化している。背景には、「働き手不足」への危機感があった。経営コンサルティングやM&A支援など、高付加価値サービスの質を確保しながら事業規模を拡大するにはどうすればいいのか。辿り着いたのが、充実した研修制度を築いて採用力を高める、という取り組みだった。社員の成長を後押ししながら会社の成長を目指す、ひかり税理士法人の戦略に迫る。

働き手不足に 膨らむ危機感
打開策は、新卒人材の取り込み

今年、数年ぶりに新卒採用を実施されたと伺いました。
その経緯を教えていただけますか?

弊社でも、かつて新卒採用に力を入れていた時期はありました。いわゆる「リーマン・ショック」が落ち着いて、景気が良くなってきた頃です。そこで実感したのが、一般事業会社との人材獲得競争の厳しさです。正直申し上げて、私たちが望む人材がなかなか集まりませんでした。そうした状況で、私も含め弊社全体が、新卒採用のマーケットにあまり魅力を感じなくなっていました。

なぜ、理想的な人材が集まらなかったのでしょう?

一般事業会社との、待遇や福利厚生面での差、あるいは業界の将来性など原因は一つではないと思います。
ただ、私たち会計業界に決定的に欠けていたのが、採用した社員を育てるというマインドだったのは間違いありません。小規模な事務所はもちろんですが、規模が大きくなっても、会計業界では社員の成長を促すための研修を施す組織は、今でも少ないのが現実です。
弊社も例外ではありませんでした。ですから、既に社会人としてのキャリアを持つ中途人材をターゲットに据えて、即戦力として獲得してきました。

人材育成のコストがある程度抑えられるという点で、中途人材は魅力的だったという訳ですね。

ただ、中途人材だけで十分な人員が確保できるかというと、そうではありません。もちろん、中途採用には今も力を入れて取り組んでいます。しかし、弊社のこれからの中長期的な成長プランを考えると、やはりそれだけでは、必要な働き手の確保は難しい。
そこで辿り着いたのが、新卒採用でした。また近年は、第二新卒をはじめとした若手のポテンシャル人材にも積極的に門戸を開き、仕事を通じて専門性を磨きたいという「熱意」を重視した採用にも注力しています。知識や能力の面では即戦力にはなれなくても、会社の中で成長していこうという意欲を持った方を積極的に採用していこうと考えたのです。
そうなると、成長したいという社員の要望に積極的に応える義務が会社には生じます。育成のコストは当然かかりますが、それは採用の拡大にもつながる必要経費と捉えて、教育や研修制度を少しずつ充実させてきたところです。

具体的には、どのような研修が用意されているのでしょう?

キャリアップしていく過程では、経営コンサルティングについての専門的な知識などが求められます。弊社では、「ひかり塾」や「コンサルタント養成講座」といった独自の勉強会を設け、そうした知識の共有を図っています。若手からベテランまで、多くの社員が積極的に参加しています。
ただ、新卒で入社された方には、まず、社会人の基礎を学んでもらわないといけません。日々のOJTはもちろん、外部の研修会社のサービスも利用しながら社会人としての素養を身につけてもらいます。


人材育成の要は「研修」
全ての基本は、コミュニケーションスキル

電話やメール応対のケーススタディといった、
ビジネスマナーの研修に重きが置かれるのでしょうか?

仰るようなビジネスマナーも、OJTを通じて身につけてもらいます。
一方弊社では、「自ら考え行動できる、自発的な人材を育てたい」という思いも持っています。そのため今年新卒で入社した社員には、与えられた課題について自分の考えをまとめ、発表する機会が設けられていたり、グループワークを通じて自分とは業種も考え方も異なる他の参加者と関わり、グループとしての意見をまとめていったりするような外部研修を受けてもらいました。
こうした研修は、自分が職場で何を意識しどう行動すべきなのかをイメージするいい機会にもなったのではないかと思います。

それに加え、プレゼンテーション能力や傾聴力の向上など、コミュニケーションスキルの面でもいい効果が得られると期待しています。
外部研修の費用は、計3日間の研修会への参加で一人当たり6万〜7万円ほどです。決して安い価格ではありませんが、人材育成には必要な初期コストと捉えています。

御社では、「コミュニケーションスキル」というのも、
社員に身につけて欲しい能力として重視されているのですね。

顧客と接する際、コミュニケーションスキルが求められるのはいうまでもありません。それに加えて、社内で、チームとして円滑に仕事を進める際にもコミュニケーションスキルは極めて重要です。
採用面接の際に必ずお伝えしているのが、我々はチームで働くことを非常に重視している、という点です。いわゆる「製販分離」といわれるように、弊社でも製造部門と販売部門を分離して、効率的に業務を進めています。しかし、両部門は断絶している訳ではありません。顧客対応の担当、データ入力・管理の担当、営業担当と、一人の顧客に対して多くの社員が関わっています。そういう意味で、分離どころか、むしろそれぞれが緊密に連携して業務に当たっているのです。
同業他社から転職してきた社員の中には、そうした業務を全て一人でこなしてきた者もいます。彼らは「報連相(ほうれんそう)」などほとんど必要ない環境に身を置いていたため、他部門とのコミュニケーションが必須の弊社では少なからず業務の進め方に戸惑いを覚えます。
しかし一般事業会社では、「報連相」はコミュニケーションの基本です。だからこそ、新卒で入社する社員には、社会人として当たり前のコミュニケーションスキルをまずは学んで、弊社の業務システムに適応するための基礎を身につけてほしいのです。

新卒で入社した社員には、社会人としての基礎を身につけた上でどのような活躍を期待されていますか?

顧客のために何ができるのかを常に考え、率先して行動に移せる人材に育ってほしいです。そのためには、顧客が何を考えているのかを読み取り、周りを説得する能力も求められます。まさに、研修での学びが生きるのではないかと期待しています。

学生時代は、勉強は「やらされるもの」という思考にどうしても陥りがちです。縁あって弊社で働く以上、受け身の姿勢ではなく自ら学び成長したいという強い気持ちを持ちながら、常に自ら考え、行動できる「自走」人材になってほしいです。
その上で、顧客に対して一対一のワンオペではなく、チームで働きかけることで高付加価値サービスを提供できるまで成長してくれればと感じています。

今後も、「会社とともに成長したい」と考える人材に振り向いてもらえるよう、研修制度を充実させるなどして態勢を整えていきます。

プロフィール
ひかり税理士法人 代表社員 谷 淳司

1992年ひかり税理士法人に入社し、2015年に代表社員に就任。現在はひかり戦略パートナーズ株式会社の代表取締役と、一般社団法人ひかり相続センターの代表理事も務めている。多様化したニーズに応えるべく、決算や申告の代行・指導といった基本的なサポートから、企業における経営課題解決のための総合的なコンサルティングサービスまで幅広く対応し、複雑化する税制やクライアントのあらゆるニーズに的確に応えられる真の専門家として、企業の成長と地域の発展に貢献していきたいと考え、日々取り組んでいる。

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