「税理士がユニコーンを生む時代」へ!
スタートアップ支援を“伴走型”で改善する
グローブ税理士事務所の起点と戦略 Vol.2

グローブ税理士事務所 事務所代表/税理士
スタートアップアドバイザー/アクセラレーター 茅根 幸祐

スタートアップ支援に特化し、2024年8月に開業したグローブ税理士事務所。なかでも初期フェーズである「シード・アーリー期」支援に軸足を置く。その理由は、日本のスタートアップ支援環境への問題意識から。起業家に伴走し、事業の加速させる役割をも果たす、新たな税理士のあり方とは?事務所代表・茅根幸祐先生に、業界支援の課題や今後の展望について話を伺った。

スタートアップ特化事務所として
グローブ税理士事務所が担う役割は

2024年8月の開業から約10カ月。その中で、すでに約20社のスタートアップ支援に携わっています。

ありがたいことに、想定を上回るペースで依頼をいただけています。最初に支援したのは、大学院時代の同期から紹介いただいた企業。

グローブ税理士事務所 代表税理士 茅根 幸祐 健太

創業前から伴走し、事業計画の策定から会社設立まで共に手がけました。その企業が今、非常に順調に成長していて、良いモデルケースとなってくれています。
さらにその企業のCEOが、同じようなステージにいる起業家を十数社もご紹介してくださり、このご縁が順調な今につながっています。
このようにご紹介いただけたのは、やはり経営課題の現場に踏み込み、意思決定を支えたことが大きかったと思います。一般的に会計事務所がスタートアップと関わるとなると、記帳や申告書作成業務を受託するような関係が多いかもしれません。

しかし創業初期の起業家には、そうした実務に止まらず、共に悩み、動いてくれる存在が必要だと思うのです。私自身、戦略を練ることや、売上向上の施策を考えるのが好きで、お客様と共に事業を育てていく時間をとても楽しんでいます。
なお、顧問料については、売上連動型を採用しています。共に売上を伸ばして、その成果に対して報酬をいただく。こうしたスタンスは、お客様にも納得いただけています。

スタートアップ向けに、具体的にはどのようなサービスを提供されているのでしょうか。

最も特徴的なのはエクイティファイナンスのサポート、すなわち新株発行による資金調達ですね。実現のために、まずはお客様と共に事業モデルや事業計画を構築し、収支計画を作成していきます。このとき重要なのは、将来的なイグジットのために、どのくらいの売上が必要かを逆算して設計する点です。
ベンチャーキャピタルは、成長の見込めない事業には投資しません。だからこそ、事業のポテンシャルをきちんと伝えるためのピッチデックを作る必要がある。しかし、当事務所のお客様にはエンジニア出身の方も多く、ピッチデックの作り方やビジネスモデルの考え方に明るくない方も少なくありません。そうした方々に対して、私たちは外側から支援するのではなく、「中に入り込んで一緒に考える」かたちで取り組んでいます。
正直に言えば、ここは非常に手間のかかる領域です。しかしだからこそ、大きな支援価値を提供でき、お客様からの信頼や高い評価を得られる部分でもあります。また、こうした領域に本気で取り組む税理士がまだ少ないという点も、当事務所の大きな差別化要因になっていると思います。

その後のフェーズでは、どのような支援を行っているのでしょうか。

最初のフェーズで資金調達や事業計画の策定、収支シミュレーションやイグジットの構築まで伴走した後は、次のステップとしてバックオフィスの支援に移行します。経理業務をはじめとする管理部門を、まるごと当事務所で引き受けるようなイメージです。
実際に進めていく中では、経理以外にも人事・労務といった領域の相談も増えてきます。そのため現在は、そうしたニーズにもより手厚く応えられるよう、体制強化を図っているところです。
将来的には、グループ内に社労士法人設立を視野に入れています。これは新たな収益を狙うというよりも、お客様が一括で相談できる体制を整えることが目的です。事業に集中してもらえる環境を整えることが、私たちの支援の本質だと考えています。


スタートアップ特化の顧客獲得戦略
分業で拡大体制を構築

お客様からのご紹介以外に、顧客獲得の経路はありますか。

他士業の方からのご紹介もいくつかいただいています。開業当初から、金融機関や他士業との連携は積極的に模索してきました。中でも現在は、スタートアップ支援に特化した士業ネットワーク「BAMBOO INCUBATOR」とのつながりを強めています。ここは公認会計士や弁護士、司法書士など、総勢約200名が参加するスタートアップ支援特化型のネットワークで、横のつながりも非常に強い組織です。方向性や価値観もアクセラレーターに近い視点を持つ方が多く、当事務所のコンセプトとも非常にマッチしていると感じています。

グローブ税理士事務所 代表税理士 茅根 幸祐 健太

実際、今春だけでも、このネットワークを通じて他士業の先生から2〜3件のご紹介をいただきました。今後は当事務所からも積極的にご紹介できるよう、より連携を深めていきたいと考えています。
また、試験的に始めたX(旧Twitter)でも、数件のご相談をいただいています。アカウントを作成し、たまにつぶやく程度なのですが、それでも「Xを見ました」と連絡をくださる方がいらっしゃいます。スタートアップ業界はSNSでの情報収集に慣れている方も多いので、今後はもう少し力を入れて発信していければと思っています。

支援するお客様は選ばれているのでしょうか。

相性は重視しています。たとえば「申告書の作成だけ頼みたい」「とにかく節税したい」といったご要望の方とは、長期的にはマッチしにくいと感じます。一方で、「一緒に事業をつくってほしい」「ビジネス面でのアドバイスがほしい」といった方であれば、お力になれる場面も多い。そのため、最初の面談ではそうした点を丁寧にヒアリングし、方向性をすり合わせたうえでお引き受けするかを判断しています。
そういった意味では、Web広告は相性の見極めが難しい面もあると感じています。ただ、今年後半からは少しずつ試してみる予定です。
最近の取り組みとしては、「スタートアップExpo」という東京ビッグサイトの展示会に出展しました。来場者は約1〜2万人で、会計事務所の出展は当事務所だけ。結果として2社からご相談をいただけました。こうしたリアルな出会いの場も、引き続き活用していきたいと考えています。

今後の顧客拡大に向け、どのような体制を築いていくお考えですか。

現在は業務を細分化し、記帳やバックオフィス業務はスタッフに任せる体制を取っています。私はディレクションを行いつつ、主にアドバイザリー業務や資本政策の検討などに注力する形です。
今後はこのアドバイザリー領域もさらに細分化し、たとえば収支計画や資本計画の数字づくりはコンサル経験のある人材に任せたいと考えています。このような体制を整えることで、私が対応できる案件数を増やし、まずは支援先50社を目指していきます。


ユニコーン企業の輩出に一役を担う!
日本のトップアクセラレーターを目指して

支援先50社を実現するためにも、所内体制の強化は必須かと思います。
採用や育成の取り組み・見通しを教えてください。

10年後には総勢100名規模、うち10名はパートナーとして活躍してもらう組織づくりを進めていく予定です。その第一歩として、現在はITツールの徹底活用を進めています。当事務所ではクラウド会計ソフトを導入しており、これをERPとして最大限に使いこなすことで、生産性の大幅向上が可能になると考えています。
またAIツールの活用にも力を入れています。将来的には、私の考え方をなぞり、高度な戦略モデルを組み立てられるようなAIも実現できるのではないかと期待しています。

サービス展開は、どのような構想がありますか。

ビジョンは2つあります。1つ目は、現在取り組んでいる創業初期のフェーズにさらに特化し、投資機能を持つまでに深化させること。自社でファンドを持ち、支援先への初期投資まで行える体制を整えたいと考えています。
2つ目は、創業初期からミドル、レイター、IPO・イグジットまで全ステージを支援できる総合体制の構築。各フェーズに対応できる専門人材の採用・育成も視野に入れています。今後はこの2軸でサービスを広げていく予定です。

その先に見据える、貴事務所におけるスタートアップ支援の未来像を教えてください。

グローブ税理士事務所 代表税理士 茅根 幸祐 健太

スタートアップ支援は、顧客の成長に伴って支援のニーズが次々と生じる、広がりのある市場です。
近年では、大企業を離れて20代で起業する若手も増えるなど、スタートアップを取り巻く環境は大きく変化しています。またこの10年で、資金調達の手段が多様化し、公的支援も充実するなど、起業に挑戦しやすい土壌が整ってきました。
これらのチャンスを活かすためにも、サービスやプロダクトの支援にとどまらず、起業家自身の成長に伴走する支援が必要です。
当事務所の当面の目標は、支援先からユニコーン企業を一社輩出すること。それを足がかりに、「日本のユニコーンはすべて当事務所が支援している」と言われるようなポジションを確立し、「ユニコーンを目指すなら、まずグローブ税理士事務所へ」と選ばれる存在を目指していきます。

プロフィール
グローブ税理士事務所 事務所代表/税理士 スタートアップアドバイザー/アクセラレーター 茅根 幸祐

1985年埼玉県生まれ。大学卒業後、IT系スタートアップで実務経験を積んだ後、東京国税局に入局。調査部での大企業調査を含む100件以上の税務調査、国税庁での国会対応に携わる。 国税局在職中に大学院へ進学。シリコンバレーのアクセラレーターについて研究し、スタートアップエコシステムに関する知見を深める。 2024年にこれまでの経験を活かしグローブ税理士事務所を創業。シードステージのスタートアップや創業初期のベンチャー企業に特化してサービスを提供している。ビジネスサイドの包括的なアドバイザリーと成長企業をバックオフィスから支える独自のアプローチで企業の成長に貢献する。

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