新潟県N0.1、働きがいの頂点へ!
新卒を定期採用できない状況からエントリー数200人超に激増した秘密を暴く Vol.2
FUN税理士法人 代表・公認会計士・税理士 山岸 賢太朗
優秀な人材を採用したいのにコレはという応募者が少ない、せっかく入所した新人がすぐ辞めてしまう――。全国の会計事務所が頭を抱える深刻な問題を解決したのが、新潟県新潟市のFUN税理士法人。代表の山岸賢太朗先生が採用活動の前面に立つようになり、新卒を定期採用できない状態から一転、今では200人超のエントリーを集めるまでになった。さらに応募者の志望度も高まり、離職防止や定着につながっているという。採用活動の成功の秘密はいったい何なのか、山岸代表を直撃した。
入所後の研修も手を抜かない主義で大切に育てていく
新卒採用に力を入れるように若手職員の研修でも、山岸先生ご自身がかなり時間を割いておられるそうですね。なった背景を教えていただけますか?
月1回、半年間かけて150ページほどの経営計画書を使い、私がじっくり研修しています。主に弊所のミッション・ビジョン・バリュー(MVB)、価値観、未来像や戦略などに関して研修をしています。
今年4月は新卒2名と中途1名が入所し、パートから正職員になった方も1名いるので、4名合同の1対4で研修をやっています。正社員になった時期が同じなので、正職員パートに関わらず一緒にやっています。
会計のスキルに関しては実務で自然に身につくため、より重要なマインドの部分について、特に価値観の共有を意識して行っています。とはいえ、私が一方的に話すだけでなく、対話型にしています。経営計画書の該当部分を読み上げて、私が解説し、それに対して各人がどう思ったか感想を聞く形でやっています。
4人もいれば、同じ解説を受けてもそれぞれ感じ方や感想も違います。そうした色々な考えを聞く機会になって良かったと言ってくれる方もいます。 経営計画書を使った半年間の研修が終わると、さらに半年間かけて決算書の読み方や活かし方、月次決算書の使い方など、訪問担当者デビューに向けた研修を行います。
その他の研修もかなり手厚くされているそうですね?
研修に関しては、毎年新卒が入ってくるようになったこともあり、税務3年未満の職員が増えてきたので、新人教育・研修と育成プログラムを整えてきました。
入所1年目にすること、2年目にすること、3年目にすること等、実際の職員の状況を見ながら作っています。ちょうど今年で3年目になるのが22年卒ですが、彼らのことも育成しながらプログラムを作っています。Webや動画で研修も活用しています。
弊所の基準としては「3年で一人前」と定義しているので、それまでは事務所として求めるレベルやキャリアステップを積み上げられるように、また入所1年目の方が2年目や3年目でどうなるかある程度イメージしやすいように作っています。 個々の成長があってこそ組織としての成長があり、継続的にお客様に対して価値を提供し続けることができるようになるので、若手には自分が安心・安定するためにも専門性を磨いて、個の価値を高めて自主自立型人財になってもらうよう育てていきたいです。
職員がソフト・ハード面でモチベーションアップできることを常に追求
直近2年連続で5%ほどの昇給をされたとお聞きしました。
社会全体でも賃上げのトレンドになっていますが、決断した理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?
給料をアップするということは、弊所の経営理念や目的を実現していくことにもつながると考えています。職員やスタッフの物心両面での満足を考えた時、やはり物の方ではお金の部分が大きく、給料を上げたいというのは元々考えていました。
また、これからの新卒採用という点では同業や一般企業との競合があるので、初任給をある程度引き上げて競争力を持ちたいと考えています。
職員の定着にもつながる福利厚生面の充実に力を入れておられますね?
弊所では企業型確定拠出型年金を導入して6割以上の職員が加入しています。あくまで選択制なので利用する、しないは自由ですが、職員が使える権利を増やしていくことは常に意識しています。
また、今年創設した「アニバーサリー休暇」は、結婚記念日か誕生日に休めるものです。こちらも取る、取らないは自由になりますが、なるべく働きやすい環境を整えるというのは大事なので、こうした福利厚生を充実させようと思います。
さらに、働き方の多様化にも力を入れているところです。今年4月にパートから正職員になった方がいますが、今後も本人の意欲や経験に応じて様々な選択肢を用意すべく、正職員でもマネジメント業務と部下を持たない「プロフェッショナル職」という選択肢を設けました。
弊所ではパートを含めた全員がリモートワーク可能なので、本部のある新潟市以外にも、長岡市や佐渡市で働いている職員もいます。
残業の削減にも力を入れておられますね?
はい。これは業界全体の課題でもありますが、どうしても繁忙期が12月~5月までと長く、その時期に業務が集中するので残業が多くなりがちです。今の新卒の方からすれば、「会計事務所の働き方自体がブラックではないか?」と感じる人も実際にいると思います。弊所としても職員の皆さんには長く働いてほしいので、働き方を見直す必要があると認識しています。
2023年の月平均残業時間は23時間でしたが、パートさんにも月次や決算などの作業をやってもらうことで削減したいと思います。ただそれだけではなく、事務所内の意識も変えるために、来年6月までにPC強制シャットダウンを実施する予定です。
繁忙期が終わった後もどのように業務を効率化するか、作業の分担化など真剣に考えていく必要があると認識しています。
事務所の増築もされるそうですね?
元々、本社の移転を含めて土地を探していましたが、新潟も中心部は地価が上がり、なかなか移転にふさわしい土地が見つかりませんでした。ようやく本社横の土地200坪を22年6月に購入することができました。既存の本社の土地189坪と合わせて389坪になり、24年6月末には本社の増築工事が完了予定です。
7月から10月までは既存棟の改修工事に入り、これが終われば増築棟面積142坪、既存棟109坪の計251坪となります。既存棟同様に増築棟もピロティで1Fは駐車場、フリーアドレス、Zoomブース、カフェスペース等を設置する予定です。
これまでは、ソフトの部分を改革して採用を好転させてきました。今回の本社増築を含むハードの部分の改革が、職員の自立性やモチベーションを高め、結果として生産性の向上につながり、採用にも大きなアピールになればと期待しています。
職員から「ずっと長くずっと働きたいと思ってもらえる事務所」に
最後に、FUN税理士法人様の今後の方針や目指す姿についてお聞かせいただけますか?
今の会計事務所のあり方を見ていると、大きく二極化しているように思います。1つは「低価格を売りに、Webを駆使しながら大量にお客様を増やして急拡大する事務所」、もう1つは「高単価・付加価値を高めながら伸ばす事務所」です。
弊所としては、ずっと後者を目指していきたいと思ってきたので、これからも職員に給与還元できる魅力ある事務所にしたいと思っています。
他の会計事務所の方と話していると、時々「この業界で一生働き続けるイメージが湧かないと思われてしまっている」とも聞きます。だからこそ、「働きがい」と「働きやすさ」の両方を追い求めていきたいのです。従業員数では弊所より大きい事務所は県内で何社もありますが、私は「お客様満足度No.1」や「職員一人当たりの生産性No.1」「新潟県内の会計事務所給与額No.1」を目指していきたいです。
プロフィール |
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FUN税理士法人 代表社員 公認会計士・税理士 山岸 賢太朗
1984年生まれ、明治大学商学部商学科出身 |