効率化のムーブメントを会計業界に!
ムダを排除し本質的な価値を創出する エンジョイント智原流「業務効率化」の極意に迫る Vol.1

エンジョイント税理士法人 代表 智原 翔悟

エンジョイント税理士法人 代表 智原 翔悟

「業務の効率化は、難しいことではない」。そう語るのは、エンジョイント税理士法人の智原翔悟先生だ。業務の中で「面倒」と思う作業が出てきたら、それは、効率化を進めるチャンスなのだという。簡単で、効果が高いことから少しずつ始めるのが智原流。会計業界における業務効率化の動きを牽引する智原先生に、スムーズに進めるコツから最新の取り組みまで、詳しく伺った。

重要なのは “手段” ではなく “目的”
智原流 “業務効率化” とは?

智原先生は、「会計業界でも業務改善を進めるべきだ」と、士業向けのイベントなどで積極的に発信されています。
先生が考える「業務効率化」とは、具体的にどういう取り組みのことを指しているのでしょうか?

「業務効率化」と聞くと、「DX」とかAIを取り入れるとか、難しいことを連想する方が多い気がします。もちろん、それらの取り組みも、効率化を実現するための手段ではあります。しかし、あくまで手段に過ぎません。そこにとらわれ過ぎると、手間やコストの増大ばかりに目が向いて、効率化がむしろ遠のいてしまう恐れさえあります。私は、手段ではなく「目的」こそ、業務効率化を推進する最も重要な要素だと考えています。要するに、何のためにやるのか、という点を明確にする必要があるのです。その目的を実現していくため過程で、最新の技術が使われる頻度が高いだけなのだと私は考えています。

エンジョイント税理士法人 智原翔悟 代表


効率化の目的として、具体的にどんな例が挙げられるのでしょうか?

顧問先への価値向上や社員の働きがい向上などが挙げられます。具体的にはムリ・ムダ・ムラを排除して限られたリソースを最大限に活用することです。
普段、業務をこなす中で、「この作業は面倒だ」という思いに駆られた経験は多くの方が持っているのではないでしょうか。そうしたちょっとした気付きにこそ、業務効率化の第一歩なのです。あえて分かりやすい例を挙げると、パソコンのモニターが小さくて見づらいとか、インターネットの通信速度が遅いといった現場の声こそが最も重要だと私は考えています。そうした現場の声によって、最新の、使いやすい機材が導入され、結果として業務の効率化が進んでいく可能性が高まるからです。専門的な知識や技術などは全く必要ありません。身近な気付きから目的を導いて現状をより良くしていこうという意識が、「業務効率化」には欠かせないのです。

非効率な部分を、一つ一つ見直していくという姿勢が重要なのですね。

顧客に対して、業務の進め方についてのアドバイスをする場面でも、こうした基本的な考え方は変わりません。
例えば、業務にタクシーを多用している顧客に対しては、配車にどのくらい時間がかかっているか、経費の処理はどのように行っているかなどがチェックポイントになります。もし、配車までの待ち時間をしぶしぶ受け入れて、領収書一枚一枚をチェックして精算するような従来のやり方を続けているような顧客であれば、効率化の余地があると指摘しています。
具体的には、素早い配車から簡便な経費の処理まで一括して管理できるシステムの導入を提案します。このシステムを使えば、配車までの待ち時間の短縮が見込めます。さらに、月に一回届く請求書を処理するだけで決済ができるので、経費処理の手間が大幅に省けます。要するに、手間や、面倒な作業を徹底的に排除していく訳です。

効率化のムーブメントを会計業界に! ムダを排除し本質的な価値を創出する エンジョイント智原流「業務効率化」の極意に迫る

そうすることで何が生まれるのか。それは「時間」です。配車の待ち時間や一枚一枚領収書を処理する手間がなくなれば、別の業務にその分の時間を割くことが可能になります。後者の例でいえば、総務部門の社員たちは非効率な経費の処理から解放される。そして、経費の処理にかけていた時間を、業績の分析や、経営者が経営判断する際のレポートの作成など別の業務に充てられるようになるのです。経営に役立つ情報が早く上がってくるというのは、経営者にとっても望ましいはずです。

普段やっている業務を一つ減らすだけで十分なのです。いうまでもなく、その業務にかけている時間が長ければ長いほど、業務を減らした場合の効果は高い。ただ、仮に1分しかかからないような業務であったとしても、その1分を毎日、全社員が行っていたとしたら何十時間、何百時間になる訳ですから、非効率であれば当然効率化する対象になります。業務の効率化が「時間」を生み、その「時間」が経営にもプラスの影響を与える。これが、理想の業務効率化の形だと思っています。


業務効率化の進め方
ポイントは “マインドセット”

それでも、これまでのやり方を変えようとするとうまくいかないことも出てくるのではないですか?

もちろん、初めから全てうまくいくことは稀です。「ちょっと面倒臭い」くらいのことであれば、多くの方はその面倒臭さに目をつぶって、どうしても、現状維持を選択してしまいがちです。なぜなら、何かを変えようとすると、一時的にかなりの「負荷」がかかるからです。最終的には劇的な効率化が見込めるとしても、その過程では、コストがかかったり、新たな業務をいくつも覚えたりしなければなりません。それを乗り越えなければ効率化は実現しないのですが、目の前の負荷の大きさにたじろいでしまい、「今までと同じでいい」という選択をしてしまう訳です。


そうした状況に陥った場合、どのように業務効率化を推進していけばよいのでしょうか?

最も大事なのは、未来図を示して、社員たちの意識を変えることです。これは弊社を含め、どんな組織にも共通すると思います。なぜこれまでのやり方を変えなければならないのか。変えれば、何がどう改善されるのかといった点を、その組織全体で共有するのです。多くの社員がメリットを感じられれば、効率化は前に進みます。私は、「新しい取り組みに慣れるまで、3か月は我慢しましょう。そこを乗り越えられれば、半年後、1年後に必ず働き易い環境に変わっています」と、よく話しています。
しかしそれでも、社員のマインドにはどうしてもバラつきが出てしまいます。新しい取り組みに積極的な社員と、そうではなく懐疑的な社員は、やはり存在します。ですから、私が業務効率化を進める際には、積極的な社員に働きかけて、先行してどんどん取り組みを進めてもらうようにしています。取り組みが順調に進めば、業務が効率化していくのが誰の目から見ても明らかに分かるようになります。すると、当初は懐疑的だった社員も、次第に、新しい取り組みに理解を示し始めます。その結果、彼らも徐々に新しい取り組みに参加するようになるのです。そうやって、組織全体に業務効率化の必要性を浸透させていく訳です。そのために、まずは、やる気のある組織内のキーマンをうまく巻き込むことが不可欠なのです。

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プロフィール
エンジョイント税理士法人 代表・Metrics 取締役 智原 翔悟

「日本の中小企業の生産性を向上させる」をミッションに掲げ、クラウド会計を中心としたバックオフィスDX支援に取り組んでいる。Gemini APIを用いた通帳データ化アプリの開発などAI技術も積極的に活用。税理士業界のIT化が中小企業の生産性向上に欠かせないと考え、noteでの技術記事公開やXでの情報発信、講演を通じて全国の税理士にノウハウを発信している。

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