会計ファイナンス人材の価値を高めろ!
CPAエクセレントパートナーズの会計士社長 国見健介が挑む“会計業界の進化”とは Vol.1

CPAエクセレントパートナーズ株式会社 代表取締役社長 国見 健介
学び、キャリア、人材交流の3つの軸で会計ファイナンス人材を包括的に支援するCPAエクセレントパートナーズ株式会社。公認会計士試験の合格者占有率60.7%(2024年)を誇る資格スクール「CPA会計学院」をはじめとし、人材の市場価値向上を通じて業界を進化させるための事業を展開している。代表取締役 国見 健介氏にプラットフォームビジネスによる収益化、人材採用と定着における理念、経営者としての成長に欠かせないビジョン、そして事業の今後の展望について話を聞いた。
会計ファイナンス人材の未来を切り開く!
CPAエクセレントパートナーズの挑戦
まずは、CPAエクセレントパートナーズ株式会社の事業内容について教えてください。

私たちは、「学びの支援」「キャリア支援」「人材交流支援」の総合的な生涯支援により、会計ファイナンス人材の可能性を広げていくインフラ企業となることを目指しています。
学びの支援では、公認会計士試験の合格者占有率が60.7%(2024年)を誇る資格スクール、簿記と会計ファイナンスを完全無料で学べるeラーニング「CPAラーニング」を運営しています。CPAラーニングの動画コンテンツは現在1,500本ほどで、2~3年以内には3,000本へ増やし、総合的な知識を学べる土台をさらに整えていく予定です。
キャリア支援では、会計ファイナンス人材特化型の求人サイト「CPAジョブズ」、転職エージェント「CPASSキャリア」、アルバイト・就職支援サービス「CPAネクスト」を展開し、それぞれの人材に適切な転職支援を行うことで、経験を積んで成長する手助けをしています。
そして人材交流支援では、会計ファイナンス人材の生涯支援プラットフォームとして「CPASS」を展開している状況です。CPASSでは無料の交流ラウンジを運営し、人と人のつながりによって各人の可能性を広げることを試みています。
これらの事業を通じて、国見社長が解決を目指している課題は何でしょうか。
会計ファイナンス業界における人材の価値向上です。
現在日本の会計ファイナンス業界には、中小企業の経理など含めて約150万人が関わっていると思われますが、これらの人材はまだ、ビジネスの世界において十分な価値を発揮しているとは言えません。
例えば、ある会計事務所の会計士の年収が300万円や500万円だとすれば、その会計士がビジネスに提供している価値もまたその程度ということになります。しかし、提供できる価値を2倍、3倍に引き上げれば、年収1,000万円を超えることは可能ですし、その余地があると私は信じています。また、報酬に伴って精神的なやりがいも増せば、結果としてその人材による企業への貢献度が増し、日本全体の組織生産性の向上につながっていきます。
だから、まずは人材の価値を高める。そうすれば、年収や業界全体の評価も引き上げられていくはずです。
国見社長が感じる、会計ファイナンス人材の価値向上における最大の課題とは何ですか?
ビジネス全体に対する理解や経営的な視点が不足している点、またそれらを学ぶ機会がないことだと考えています。
例えて言うなら、ビジネスの世界は総合格闘技のようなもので、どのようなチームを組むかも自由です。一方で士業は相撲界における力士のように、専門分野に特化したルールで活動しています。しかし、ビジネスの総合格闘技で求められるのは、さまざまな分野で広く価値を提供できる人材ですので、会計士や税理士も相撲界に止まらず、広いビジネスの世界での価値を高めていかねばなりません。
会計事務所は単に税務や監査を行うだけではなく、企業の成長を支えられる存在であるべきだということです。
士業の資格取得は、スポーツでいうところのドラフトに過ぎません。ドラフトは選ばれたら終わりなのではなく、その後の活躍が本番ですよね。例えば、ユニクロの柳井正さんのような経営者は、長年にわたって最前線で活動し、多くの経験を積んでいます。このような経営者と対等に渡り合うためには、士業もビジネス全体を深く理解し、経営者としての視点を持つ必要があります。

そのためには、学び続けることが重要です。会計士や税理士、簿記などの資格の勉強はスクールでできますが、M&AやIPOの実務、上場後の資金調達、企業の成長に関わる事業運営などといった実務を学べる場所はなかなかありません。独学には限界があり、十分になされていないのが現状です。だからこそ私たちは、ドラフト後の活躍に必要な学びを得たり、共有したりできる場を提供していきたいのです。
例えばですが、キャリアダウンとも取れる、監査法人から小規模な会計事務所へと
移るといったキャリアパスについてはどう思われますか。
キャリアダウンというよりは、実力通りの場所に落ち着いた形であることが多いのではないでしょうか。一般的に待遇の良い監査法人ですが、必ずしも実力に見合った評価ではないため、転職に際して給与が下がることも大いにあり得ます。また、多くの会計士は安定を求めるがゆえに、リーダーシップやマネジメントの経験を避けがちで、プレイヤーとしては成功しても、マネージャーに必要なスキルや経験が不足しているケースも多いのが実情です。
監査法人には、アメリカのような流動的な労働市場がなく、競争が少ないため、一流の人材を育てる環境が整っていないと感じます。日本の大企業も同様に、終身雇用が中心であるため、自分の生産性向上よりも社内の人間関係やポジションづくりに意識が向きやすい状況です。
資格や地位を得た後も厳しい評価に晒され続け、降格の可能性があるならば、より積極的に努力する環境が自然と生まれるのでしょうが、現状ではそのような仕組みが欠けています。個々がプロフェッショナルとしての意識を持つことは重要ですが、そのための仕組みが整っていないのです。
一流の人材が育ち、プロフェッショナルとして活躍するための仕組みを作るには、どうすべきだと考えていますか。
解雇規制を緩和し、自由な労働市場を作ることでしょう。労働市場が流動化し、それぞれが自分の市場価値を意識するようになれば、実力に応じたキャリア形成が可能になります。これは監査法人だけでなく、日本全体に共通する課題であり、特に「失われた30年」と言われる現状の打破に欠かせません。
監査法人に限って言えば、若手が外部で実務経験を積み、その後戻ってきやすい仕組みを増やすことで、経営視点を持つ人材が育ち、組織全体が強化されると考えられます。例えば海外の大学では、実務で成功した人が教授となり、現実的な知識を学生に伝えています。監査法人でも同じように、外部で経験を積んだ人が戻りやすい環境を整えることが必要です。
CPAラーニングの無料提供戦略と収益化モデル
登録者の「数と質」が鍵
貴社の収益化モデルについてお伺いします。
CPAラーニングを無料で提供している理由はどのようなものでしょうか。
多くの利用者を集めることで、プラットフォーム上での他サービスを通じて収益を上げるためです。たとえば、会計ファイナンス関連の人材紹介の場合、シェアを50%獲得できれば、年間売上が500億円規模に達する可能性があります。このように、無料サービスによる利用者の拡大が、多様な収益化の機会を生む鍵となっているのです。
この考え方は、YahooやGoogleのような検索エンジンのビジネスモデルと似ています。検索サービスが無料で利用できるからこそ、多くの人が集まり、付随するビジネスでも収益を得られるのです。もしYahooの利用料が月額1,000円だったとしたら、利用者は激減するでしょう。同様に、CPAラーニングを無料にすることで、会計ファイナンス人材が自然と集まる仕組みをつくり、プラットフォーム全体で収益を上げるモデルを目指しています。
では、当面の指標は登録者数を伸ばすことになるのでしょうか。
登録者数は重要な指標ですが、ただ数を伸ばせばいいわけではありません。収益化には、質の高い登録者、つまり向上心のある人々の参加が不可欠です。例えば、簿記2級だけ取って、それ以上キャリアを深める気のない登録者では、いくら増えても収益にはつながりません。

とはいえ、数字が大事なのも確かです。CPA会計学院が会計士合格者の過半数を輩出しているという実績は、社会的な信頼を得る上で重要な意味を持ちます。目に見える成果があることで、他業界との協力関係を築きやすくなりますので、そういった意味では、登録者数を増やすことも重視しています。
要するに、質とのバランスを見ながら数を伸ばしていく必要があるということです。さらなる成長と協業者の拡大には、数と質の両立が欠かせません。
登録者の数と質を上げ続けるために、どのようなことを意識していますか。
会計ファイナンス人材が「CPAのサービスを総合的に利用したい」と思うブランド作りですね。高級ブランドのように、「なぜ選ぶのかを理屈で説明するのは難しいが、総合的な魅力がある」と感じてもらうことを目標としています。そのためには、さまざまな要素を結び合わせてデザインし続けることが求められます。
例えばCPA会計学院では、教材の質だけでなく、チューター制度の充実や、自習室の椅子のクオリティ、Wi-Fi速度といった学習環境の整備にも気を遣っています。手厚いサポートを感じてもらい、受講生のやる気を引き出すにはどうすればいいかにはこだわり続けていますね。絶対の正解はありませんので、悩みながら調整し続けているところです。
プロフィール |
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CPAエクセレントパートナーズ株式会社 代表取締役社長 国見 健介(くにみ けんすけ)
「会計ファイナンス人材に貢献するインフラ企業になる」というビジョンを掲げ、会計ファイナンス人材の生涯支援サービスを提供している。学びの支援として、公認会計士資格スクール「CPA会計学院」では合格者の6割(2024年全合格者数1,603名の内973名はCPA受講生)を輩出、簿記や会計ファイナンスを完全無料で学べるe-learning「CPAラーニング」は約70万人以上が会員登録し1,500本以上の動画を提供中。キャリア支援としては、会計ファイナンス人材特化型 転職エージェント「CPASSキャリア」、会計ファイナンス人材特化型求人サイト「CPAジョブズ」、公認会計士受験生特化型求人サイト「CPAネクスト」を展開しており、そして人材交流支援として会計ファイナンス人材の生涯支援プラットフォーム「CPASS」の運営を通して、会計ファイナンス人材に貢献するインフラ企業として、会計ファイナンスに関わるすべての人の生涯支援に取り組んでいる。 |