2026年の「仕事のしかた」はこう変わる “AIエージェント時代の働き方”【後編】

2026年の「仕事のしかた」はこう変わる “AIエージェント時代の働き方”

合同会社コンサランス 代表
中小企業診断士 高安 篤史

前編では、AIエージェントの概要について、お話をしました。後編では、さらにAIエージェントを深掘りしていきたいと思います。

AIエージェント活用のポイント

【業務プロセスの見直し】

業務プロセスを、AIエージェントに合わせて見直すことが重要です。既存の業務を、単にAIに置き換えるだけでは、思ったほど効果にはつながりません。例えば、従来は人が資料を作成し、別の人が2回チェックを実施している場合、AIエージェントで、資料を作成し、チェックは別ツールのAIエージェントで実施し、最終的に人のチェックは一度のみというような業務の進め方です。加えて、AIエージェントの効果を最大化するには、データのデジタル化/連携および業務の標準化が必要です。

【複数の作業を同時並行で進める】

AIエージェントへの指示(依頼)を複数並行で行うことで、仕事の成果を何倍にもすることが可能となります。この並行処理により、意思決定のスピードが格段に上がります。複数のアシスタントや秘書と共に、業務を遂行していくイメージです。利用者(ユーザー)は、強いAIエージェントを組み合わせることで、司令塔となるオーケストレーション(業務全体を指揮・調整すること)を意識し、組織を効率的に廻します。

【人が主役】

そして、主役は人ということを常に忘れないことが重要です。目的/ゴールを設定するのも、業務プロセスを見直すのも、倫理面や法規制を含めて人が監督・検証する体制を構築しましょう。生成AIのように単純な文章生成に比べ、AIエージェントは組織の意思決定に影響するため、誤った判断が組織へ大きな影響を及ぼす可能性があります。また、クライアントへの信頼を構築するためにも、最終的な責任は人が実施する取り組みも重要です。

具体的なツール

現在、ChatGPTをはじめ、従来の生成AIにもエージェントモードが追加されました。エージェントモードでは、タスクにより5分~15分程度の時間を要しますが、タスク(処理)の内容を表示してくれるため、作業途中でも、柔軟に対応することが可能となります。

また、Google社のAIエージェントは、Google Workspaceとの連携に強みがあり、Microsoft社のCopilotはMicrosoft 365などのMicrosoftのアプリケーションと深い統合が特徴です。

このエージェントモードは、有料版でしか利用できない場合や、無料版ではかなり早い段階で利用制限に到達することも多いと思います。

また、最近では、ツールやアプリケーションに内蔵された生成AIが動き、ツールの使い方/フローの作成/データ分析などをアシストしてくれるのが一般的になってきました。現在、アプリケーション内蔵の生成AIが、AIエージェントに置き換わろうとしています。これは、会計ツールも例外ではありません。この会計ツールのAIエージェント機能では、仕訳/請求書の作成などに加え、財務会計は勿論、自然言語で指示した内容に沿って、管理会計まで実施し、現在の経営状況に関するアドバイスも行ってくれます。Salesforceなどにも、顧客支援や次の顧客提案を実施してくれるAI機能が搭載されてきています。

AIエージェント活用の懸念点

現状のAIエージェントは、技術的に未成熟な点があるのも事実です。特に下記の3点においては、注意が必要となります。

動作の安定性

AIにはハルシネーション(事実ではない内容をもっともらしく生成する現象)は必ず発生します。また、AIの自律の特性として、毎回最適解を求めるために、動作の再現性が確保しにくい傾向があります。特に、誤った処理をした際に、原因が不明確になりがちです。ただし、AIエージェントは試行錯誤しながら、繰り返し処理を実施してくれますので、この安定性も改善が図られてきています。

セキュリティ(データ漏洩)

AIエージェントは多数のデータを扱い、メール送信なども実施可能なため、情報漏えいや不正アクセスのリスクが高まります。AIエージェントの処理は中身が見えにくく(ブラックボックスになりやすく)、途中経過や判断根拠を人が追いにくいという課題があります。多要素認証やアクセス権限を厳格に実施し、常にアクセスログをチェックすることが重要です。また、AIエージェントの動作を、別のAIでチェックする方法もありますが、最終的にはシステム構成なども含め、専門家によるチェックも必要となります。

法律/規制

このAIエージェントは、著作権、国内外の個人情報保護法、プライバシー侵害、差別表現など、法律/規制に抵触することが考えられます。特に、「税理士の確認を経ず、AIが自律的に税務判断を下し、納税者に直接アドバイスを送る。あるいは、無資格者がAIを使って税務相談サービスを有償で提供する。」などのツールの使い方は、日本の税理士法上、違法の疑いが発生します(注:違法なのは「AI」ではなく、無資格者が税務判断を提供する行為です)。

AIエージェントの近い将来と完全自律型への進化

このAIエージェントは、近い将来、さらなる進化を遂げると予想されます。現状の課題は、明日には克服できているかもしれません。

① ワークフロー型
ワークフロー型の図解
  • 予めワークフローを人が設定
  • 処理ごとにAIなどが動作
② 都度確認型
都度確認型の図解
  • 誤った処理が少ない
  • 手間が増える
③ 自律型
自律型の図解
  • 誤ったまま処理が進むことがある
  • 手間が少ない

このAIエージェントの進化にあたって理解すべきことは、図の3つの型(①ワークフロー ②都度確認 ③自律)の次に来るプロアクティブ(先回り提案)な完全自律型です。これは、利用者(ユーザー)がPCで作業している様子をAIが常にバックグラウンドで見守り、同じような作業が繰り返し実施されていると「その業務、私のほうが効率的に自動化できますが、代わりに実施しましょうか?」と、AI自らが提案してくれる世界です。

この提案には、(1)~(3)の3つの学習データの活用が考えられます。

(1)個人の操作学習<パーソナル>

AIは利用者(ユーザー)の日々の作業を観察し、パターンを見つけ出します。「あなたは毎月20日に、このExcelシートを、この順序で加工していますね」という個人の習慣を学習し、自動化を実行します。

(2)組織のノウハウ学習<オーガナイゼーション>

「この事務所のベテラン職員は、こうしたケースではこの判例を必ずチェックしています」という、組織の担当者のPC操作を学習し、組織内の暗黙知やベストプラクティスをベースに改善を提案します。これにより、経験が少ない担当者も成長が可能になり、スキルレベルが底上げされます。

(3)社会・業界のトレンド学習<インダストリー>

「業界全体で、今この特例措置の適用がトレンドになっています。貴事務所でも導入しませんか?」と、外部の最新知見を元に提案します。これにより、税法改正や新しい会計基準の適用を実施し、業界標準での業務推進が可能になります。

この流れの中で、AIエージェントは、単なるアシスタントから、時には厳しくアドバイスしてくれる優秀な同僚へと進化し、組織において不可欠な存在になっていくでしょう。AIエージェントを活用する人や組織と比較すると、従来通りの業務の進め方を実施している人や組織では、大きな格差が生まれ、組織の競争力に大きな違いが生じるのは間違いないと考えられます。

2回にわたり、『2026年の「仕事のしかた」はこう変わる ”AIエージェント時代の働き方”』というテーマでお話をさせていただきました。いかがでしたでしょうか?少しでも、皆様のお役に立てる内容であれば幸いです。

高安 篤史

合同会社コンサランス 代表
中小企業診断士

早稲田大学理工学部工業経営学科 卒業後、大手電機メーカーで20年以上に渡ってストレージ製品などの組込みソフトウェアの開発に携わり、プロジェクトマネージャ/ファームウェア開発部長を歴任する。自身の経験から「真に現場で活躍できる人材」の育成に大きなこだわりを持ち、その実践的な手法は各方面より高い評価を得ている。デジタル技術による業務改善やIoT/DXのビジネスモデル構築に関する造詣も深く、ハイスキル人材の育成にも定評がある。デジタル技術に関する書籍も多数執筆実績あり。2012年8月 合同会社コンサランスの代表に就任。

・情報処理技術者(プロジェクトマネージャ、応用情報技術者、セキュリティマネジメント)
・IoT検定制度委員会メンバー(委員会主査)

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