税理士は圧倒的な有利な立場にいる!
<税理士がコンサルタントとして活躍するためには?①>

税理士 コンサルタント

日沖コンサルティング事務所・代表
中小企業診断士、中小企業大学校・講師、産業能率大学・講師
日沖 健


「コンサルティングって、どうやればよいのかわからない」
「コンサルティングは、なかなかうまくいかない。やっぱり難しい」

知り合いの税理士からよく聞くコメントです。コンサルティングに取り組む税理士が増えていますが、苦戦しているようです。

中小企業診断士の日沖健です。今回から6回に渡って、税理士がコンサルタントとして活躍するためのポイントをお伝えします。

具体論は次回以降にお伝えするとして、今回は、税理士の皆さんに認識していただきたい、「コンサルタントにとって大切なこと」を紹介します。

コンサルティングで最も難しいのは?

皆さんは、コンサルティングで何が一番難しいと思いますか?

クライアントの経営状態を分析することでしょうか?
斬新な問題解決策を生み出すことでしょうか?
解決策を経営者に納得してもらうことでしょうか?
解決策を実際に組織に導入することでしょうか?

どれも難しいと言えば難しいですが、他と比べて段違いに難しいのは、そもそもの「受注」です。

私は1995年に中小企業診断士を取得して今年で30年、2002年にコンサルタント事務所を開業して23年になります。ある程度は受注できているから商売を続けられているわけですが、いまだにうまくいったり、いかなかったりで、受注の極意を掴めてはいません。ましてや若手・中堅だと、たいてい受注に四苦八苦しています。

なぜ中小企業診断士・コンサルタントが受注に苦戦しているかというと、クライアントになるべき企業経営者から信頼されていないからです。

コンサルタントは信頼が何より大切

クライアントがコンサルタントに高いお金を払って相談するのは、頭を悩ませている重大な困りごとです。簡単なことなら、コンサルタントに相談するまでもなく、自分・自社で解決するでしょう。

人は、信頼できる人にしか重大な困りごとを相談しません。皆さんもこれまでの人生を思い起こすと、重大な困りごとを先生なのか、親なのか、親友なのか、とにかく信頼できる人にしてきたはずです。

これは経営者でもまったく同じです。

企業経営の困りごとというのは、会社の所有者であり責任者である経営者にとって、身から出た錆です。できるだけ隠そうとし、本当に困ったときに信頼できる相手に相談します。経営者が見ず知らずの信頼できないコンサルタントに重大な相談をするということはありません。

残念ながら、ほとんどの中小企業診断士は、経営者からまったく信頼されていません。深い信頼という以前に、経営者から見て「中小企業診断士って何ですか?」とか、「商工会の相談窓口で座っている人がもしかして中小企業診断士ですか?」という程度で、そもそも認知されていません。

信頼されていない中小企業診断士は、なかなか民間企業から受注できません。そのため、国の信用を頼って公的支援に従事して何とか生計を立てているのです。国家資格者である中小企業診断士ですら、この有様です。ましてや資格を持たない世間一般のコンサルタントの窮状は、推して知るべしでしょう。

税理士はクライアントから信頼されている

ひるがえって、税理士はどうでしょうか。
多くの税理士は、顧問先の経営者との間に強固な信頼関係を構築しています。経営者は税理士を信頼して、色々な困りごとを相談します。というと、「いや、年に一度確定申告をお手伝いしているだけで、信頼関係なんて大それたものじゃないですよ」と謙遜する向きもありますが、そうでしょうか。

非上場企業の経営者にとって、決算情報は最高の企業秘密です。実際にたいていの経営者は、コンサルタントなど外部の人間に決算情報を開示するのを渋ります。その最高の企業秘密を(業務上必要であるとはいえ)躊躇なく打ち明けてくれる税理士は、間違いなく経営者から信頼されています。

コンサルタントの私が会社を訪問すると、社員から「おい、わが社でもリストラが始まるのか」と警戒の目で見られます。しかし、税理士の場合、「先生、おはようございます!」と明るく迎えてくれるのではないでしょうか。

また、税理士は、記帳・決算・確定申告といった業務を通して、経営者や社員と日常的にコミュニケーションをとっています。もともと日本企業は、コンサルタント・弁護士など外部の専門家を招いて協力して仕事をするというのはまれでした。こうした中、企業にズバリ切り込んで経営者や社員と普段着のコミュニケーションをできる税理士は、唯一無二の特殊な存在と言えます。

税理士は「実にもったいない」

繰り返しますが、コンサルティングで最も難しいのは、経営者から信頼を得て受注することです。その難関をすでにクリアしている税理士は、中小企業診断士などコンサルタントと比べて圧倒的に有利なポジションにあります。私から見て羨ましい限りです。にもかかわらず、多くの税理士が「コンサルティングなんて無理」と嘆いています。コンサルティングで成果を実現している税理士は、そんなに多くありません。

せっかくの有利なポジションを生かせていないのは、「実にもったいない」ですし、中小企業診断士の私からすると「贅沢を言っている場合か?」「本気で努力したら」と思います。

コンサルティングの進め方や留意点は次回以降で解説しますが、はっきり言って読めばわかる話で、経営者から信頼を獲得するという難題と比べると、物の数ではありません。 税理士がコンサルティングをするうえで圧倒的に有利なポジションにあることを、ご認識いただけると嬉しいです。

日沖 健

日沖コンサルティング事務所・代表
中小企業診断士、中小企業大学校・講師、産業能率大学・講師

1965年愛知県生まれ
慶応義塾大商学部卒、Arthur D. Little 経営大学院修了MBA with Distinction
日本石油(現・ENEOS)勤務を経て2002年より現職
経営戦略のコンサルティングと経営人材育成の研修を行う。また、中小企業大学校・中小企業診断士養成課程で後進のコンサルタントの育成にも注力している。
東洋経済オンラインに記事連載中、テレビ出演多数

著書(コンサルタント関係)
『コンサルタントを使って会社を変身させる法』
『コンサルタントが役に立たない本当の理由』
『中小企業診断士のリアル』
『中小企業診断士の独立開業のリアル』
『企業内診断士のリアル』

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