税理士業務に影響を与える令和3年の民法・不動産登記法改正等

全国公共嘱託登記司法書士協会協議会 名誉会長・司法書士
山田 猛司

民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号。以下「改正法」という。)及び相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号)が民法改正関係及び一般的な不動産登記法の改正については令和5年4月1日に施行され、相続土地国庫帰属法については、令和5年4月27日に施行されています。

その他には令和元年の相続法の改正、令和2年の債権法の改正がありました。

税理士業務については当然不動産に関する各種税金についてその業務範囲とされていると思いますが、申告納税という点では相続税に関連して不動産登記とかかわることが多いと考えられます。

また、その相談業務の範囲については税務申告のみならず、日常の財産管理についても相談を受けることが多いと思います。

そういった点を鑑みますと上記各法改正のうち税理士業務に関係のある部分を習得することは依頼者への法的サービスの向上を始め、信頼獲得、業務拡大につながるものと思われます。

なお、税理士業務に影響の大きな法改正については以下の点が挙げられると思います。

民法関係

  1. 特定財産承継遺言による遺言執行者の権限強化【R1.7.1】
  2. 共有に関する軽微変更の創設(分筆、合筆等の共有者の過半数による申請が可能となった)【R5.4.1】
  3. 所有者不明土地管理命令又は所有者不明建物管理命令制度の創設【R5.4.1】
  4. 管理不全土地管理命令又は管理不全建物管理命令制度の創設【R5.4.1】
  5. 遺産分割協議の10年制限の創設(死亡から10年を経過した場合の特別事情の主張制限)【R5.4.1】

不動産登記関係

  1. 特定財産承継遺言による相続登記手続き【R1.7.1】
  2. 法定相続人情報の作成番号及び法定相続情報番号の提供による添付書類の省略【R6.4.1】
  3. 相続登記等の申請の義務付け及び登記手続の簡略化
    (1)遺贈による所有権の移転の登記手続の簡略化【R5.4.1】
    (2)法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続の簡略化【R5.4.1】
    (3)所有権の登記名義人が死亡した場合における登記の申請の義務付け【R6.4.1】
    (4)相続人申告登記の創設【R6.4.1】
  4. 権利能力を有しないこととなったと認めるべき所有権の登記名義人についての符号の表示【R8.4.1】
  5. 所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み
    (1)氏名又は名称及び住所の変更の登記の申請の義務付け【R8.4.1】
    (2)登記所が氏名又は名称及び住所の変更情報を不動産登記に反映させるための仕組み【R8.4.1】
  6. 登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化
    (1)登記義務者の所在が知れない場合の一定の登記の抹消手続の簡略化【R5.4.1】
    (2)解散した法人の担保権に関する登記の抹消手続の簡略化【R5.4.1】
  7. その他の見直し事項
    (1)登記名義人の特定に係る登記事項の見直し【法人はR6.4.1】【個人はR8.4.1】
    (2)外国に住所を有する登記名義人の所在を把握するための方策
    (3)国内における連絡先となる者の登記【R6.4.1】
    (4)法人識別事項の登記義務化【R6.4.1】
    (5)旧氏の併記が可能となった【R6.4.1】
    (6)ローマ字氏名併記申し出【R6.4.1】
  8. 所有不動産記録証明制度の創設【R8.2.2】
  9. 被害者保護のための住所情報の公開の見直し【R6.4.1】

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律

相続により取得した土地の所有権を国に帰属させるための法律であり、申請時に、審査手数料(土地一筆につき1万4,000円)を納付した上で、却下要件(その事由があれば直ちに通常の管理・処分をするに当たり過分の費用・労力を要すると扱われるもの)や不承認要件(費用・労力の過分性について個別の判断を要するもの)に該当しない場合には、承認しなければならないこととされているが、承認された場合には申請者は10年分の土地管理費相当額の負担金(最低20万円)を納付する義務がある制度。

以上の様な最近の法改正について研修をすることにより税理士業務に関連する知識を得ることや、今までの法改正に関する知識の整理にもつながるものと思われます。

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山田 猛司

全国公共嘱託登記司法書士協会協議会 名誉会長・司法書士
1959年栃木県生まれ。1985年司法書士試験合格。東京司法書士会新人研修講師、 理事、司法書士試験委員等を歴任。 現在、全国公共嘱託登記司法書士協会協議会名誉会長、 東京公共嘱託登記司法書士協会相談役、成蹊大学法学部「不動産登記法」非常勤講師、 駒澤大学法学研究所実務家コース「不動産登記法」、日本司法書士会連合会不動産登記法改正対策部委員。 不動産登記に関する主な著書に、『Q&A抵当権・根抵当権に関する登記と実務』 (2023年、日本加除出版)、『ケース別 権利に関する嘱託登記―実務のポイントと書式』 (2022年、新日本法規出版)、『不動産権利者の調査・特定をめぐる実務』(2019年、新日本法規出版)、 『抵当権・根抵当権に関する登記と実務』(2016年、日本加除出版) 『未処理・困難登記をめぐる実務』(2015年、新日本法規出版)等がある。

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