税理士が外国人雇用を進める顧問先へ助言を行う上で留意すべき点
行政書士事務所村瀬総合法務 代表・行政書士
村瀬 仁彦
(2024/5/7)
岸田文雄首相が教育未来創造会議で、2033年までの留学生に関する目標として「外国人留学生を40万人受け入れること」、「日本人留学生を50万人送り出すこと」を掲げたのは記憶に新しい。思い起こせば、2021年に人手不足解消の手段として「特定技能制度」を異様なほどスピーディに創設し、新型コロナウイルス感染症の影響もありスタートこそ鈍行したものの、複雑な制度設計の中で着々と人数は増えているようには思う。
2024年3月には、技能実習制度に代わる育成就労制度創設に向けて閣議決定した。これは従来の技能実習とは異なり、特定技能への移行準備のような位置づけで外国人労働者を育成するものである。一言でいえば、日本政府としては、日本の労働力不足の解消のために、特定技能制度を中心として外国人労働者を増加させる機会(制度)をなんとか拡大したいという大方針にある。
筆者は行政書士として開業以来常々発信してきたが、日本国民が望む・望まないにかかわらず、今後日本国内の在留外国人の増加は不可避であり、したがって出入国管理及び難民認定法や関連する労働法規に係る事前準備は、日本企業にとっては最重要課題の1つと考えている。なぜなら、日本政府が外国人労働者を増加して人材不足を解消しようと急ぐ一方で、日本企業あるいは日本人の生活・文化・慣習においては、まだまだ外国人受入れの土壌は未成熟であり、外国人労働者に関する就労トラブルは後を絶たないからだ。
このような「外国人雇用」に関する分野は、行政書士の業界では「入管業務」と呼ばれており、いわば出入国管理及び難民認定法(入管法)に定める在留資格制度について適法適正な手続き・体制を実現することにその意義がある。ところがこの分野は、これだけ外国人が増加した現在においてもどこかマイナー分野であることが否めず(行政書士でも入管業務を取り扱わないこともある)、日本企業の人事部・法務部はもちろん、税理士、社会保険労務士といった専門職の方々からご相談を受けることも多い。そして知らず知らずのうちに、企業(顧問先)が、「来月から外国人を採用するよ」といって詳細を聞けば、「その外国人の在留資格では今のままの雇用契約内容で就労させてはいけない。不法就労になってしまい、企業側も法的な責任を負わなければいけませんよ!」と言えば、焦って雇用契約(そもそも採用自体)を見直すことも少なくない。
このような外国人雇用の対策としては、①受入企業の業種・業態の確定、②①に対応する在留資格の確定、③採用計画(②を採用するためのフロー含む)の策定、④③を実現するための人材募集のための提携先(教育機関、人材紹介会社など様々である)の確保、⑤外国人採用(内定)、という5項目を確立させることが重要であるが、実際には、いきなり④や⑤から入ってしまって多くの時間とお金を無駄にしている。まずは、上記①、②について、すなわち入管法の在留資格制度から、企業ごとに合致した外国人雇用の体制を整えたい。それが不法就労という最悪の事態から回避するための転ばぬ先の杖となる。
今回ご寄稿いただきました村瀬仁彦先生のBizWebinar「人事担当者・税理士・社労士必見!ケースメソッドで学ぶ外国人雇用戦略と顧問先防衛手法~新「育成就労」制度での変更ポイントも解説~」が5月29日(水)14:00~16:00 に開催されます!
外国人労働者で悩んでいる顧問先をお持ちの税理士や社労士の先生方にとって、必見の内容をお届けしますので、ぜひ、多数の方々からのご参加をお待ちしております。
村瀬 仁彦
行政書士事務所村瀬総合法務 代表・総合法務所長・行政書士。
大学3年生のときに、都内の司法書士事務所でのアルバイトを契機に、士業の道に入る。
2009年行政書士試験合格後、行政書士法人・司法書士法人勤務を経て、2011年に独立開業。
2023年2月より、事務所移転を行い、事務所名も「行政書士事務所村瀬総合法務」に変更。
主要業務は、外国人に関する在留資格や査証をはじめ企業の許認可制度への適正適法な対応をサポートすること。
出入国管理行政(外国人の在留資格・査証)についてのブログや動画も公開している。