「優秀だけど、続かない」人材を採用していませんか?
~定着する人材の見極めポイント~

会計事務所 採用

株式会社人材研究所 ディレクター
安藤 健

優秀=資格保有・勉強ができる・数字に強いこと?

「勉強はよくできるし、資格もある。なのに半年で辞めてしまった」

これは多くの会計事務所や税理士事務所で聞かれる現場の声です。
会計業界は専門性の高い職種ゆえ、「優秀=資格保有・勉強ができる・数字に強い」といった基準で人材を評価しがちです。しかし、どれだけ知識やスキルが高くとも、組織に馴染めず早期離職してしまう人材は成果を出す前に退職してしまうという意味で、真に優秀とは言えません。

もちろん資格や学習意欲があることも重要ですが、組織に定着してもらうことが前提です。この採用難時代、とりわけ中小規模の会計事務所においては、多くの採用コストをかけた人材が早期に辞めてしまうダメージは計り知れないでしょう。

では、どうすれば「定着する人材」を採用できるでしょうか?

見極めるべきは、スキルよりも「人と関わる力」

職場は働く人たちの信頼関係とコミュニケーションの積み重ねによる絶妙なバランスの上で成り立っています。
そこに新たな人材が参入した場合、新しい組織に早く馴染めるように、上司や先輩からの声かけなど信頼関係構築のフォローは必須です。実際、早期離職の理由の多くは「業務内容が難しかった」ことよりも、「職場の人間関係」や「相談できる環境がなかった」ことに起因しています。

しかし、一方で職場のメンバーとなったからには、本人にも報連相ができている必要はありますし、自分勝手に業務を進めるのではなく、はじめのうちは都度上司や先輩に確認しながら進めてもらう必要があるでしょう。なんでも受け身の姿勢ではなく、周囲に積極的にコミュニケーションをとりにいく姿勢も、定着につながる主体的な行動です。

会計職は個人作業の側面も強い反面、実務では報連相や確認、巻き込み力が不可欠です。だからこそ、採用時点で「数字に強いか」だけでなく、以下のような資質を見極める視点が重要です。

  • 相談するタイミングを自分で判断できるか(自己管理力)
  • 業務がわからないときに、素直に聞けるか(誠実性・素直さ)
  • 質問されたときに丁寧に対応できるか(他者志向)

これらはすべて「人と関わる力」です。

入社後は先輩社員のOJTで学んでいくことも多い会計業界において、こうした力が不足していると、せっかく入社しても周囲と関係構築できず、孤立し、早期に辞めてしまうのです。

「実は○○さん、入社当初はほぼ未経験同然だったけど、いま一番活躍してるよね」 こういったケースは、色々な職場で頻繁に起きています。彼らに共通するのは、先に述べた「人と関わる力」が高いことです。最初から自分で何でも完璧にできなくても、周囲と協力しながら進められる資質こそ、長く活躍するための“土台”となるわけです。

採用面接では、エピソードベースで聞く

では、どうすれば「人と関わる力」を面接で見極められるでしょうか?
1つ目のポイントは、知識やスキルの高さを面接で確認するだけでなく、同じくらい時間をかけて、日常的な仕事場面での周囲との関わり方を聞くことです。

例えば1時間の面接であれば、30分程度は会計知識やスキルを確認する質問を投げかけ、残り30分では、前職などでどのようにチームメンバーと向き合っていたかを確認します。 

「仕事を進める中でわからないことが出てきた時、どのように対処していましたか?」
「会計業務の中でも、個人プレーではなくチームプレーを意識して進めた時の経験を教えてください。」

こういった質問で適切な報連相ができるか、チームプレーを極端に苦手としていないかなどを評価しましょう。
そして2つ目のポイントは、具体的な事実ベースで聞くことです。
上記のような質問をしたとしても、候補者からの回答として、「わからないことがあったらチームメンバーに聞くことを意識しています」や「チームでの問題解決を意識しています」とだけ聞いて、評価してしまうのは拙速です。

あくまで本人の主観的な姿勢を聞いているに過ぎないからです。
本当にその姿勢があるかを客観的に判断するためには、実際の経験・エピソードまで確認しなければなりません。

このような回答があった場合は、追加の深掘り質問として、

「では、それがわかる具体的なエピソードを何か聞かせてもらえませんか?」

と確認してみてください。こういった候補者の“実際にやってきたこと”から、「人と関わる力」が読み取れるのです。
「優秀だけど、続かない」採用を繰り返していると、現場の疲弊感は増し、育成する側の意欲も低下します。大切なのは、「知識が豊富でできそうな人」より「育つ人」「続く人」を見極める目線です。
「人と関わる力」こそが、定着と活躍の分かれ道です。 いま一度、自社が求める人物像と面接方法を見直してみてはいかがでしょうか。

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