<第3回>AIが進化するほど、税理士が必要になる理由
~AI時代の社長・経理・税理士の連携体制の作り方~

AI 税理士

― AIを使いこなせる会社と、そうでない会社の差

AIを多面的に活用するためには、会社のあらゆる情報がデジタル化されているかが重要です。いくら社長がAIに夢中になったとしても、自社内のデータがデジタル化されていなければ、何もAIに分析してもらえません。そうなれば、おのずと社長の「主観や主張だけ」をひたすらAIに問いかけ続けることになり、AIはその内容に従順に答えはするでしょう。ただ、AIに取り込まれている情報源の客観性が担保されているかは微妙なところです。

では、客観性を担保するものは何かといえば、それは現実の「会社のデータ」です。会社のデータには「財務データ」と「非財務データ」があります。財務データは、BS/PLなどの領域に収まる範囲であれば、ほとんどの会社が現在会計ソフトを使用しているはずです。

したがって、第一段階としては、社長の考えをAIに伝えると同時に会社の財務データも添付して、AIに分析してもらうということは可能です。その精度には現時点ではまだ課題があるとしても、今日からでもほぼどの会社でも始めることができます。そして、さらにAIを活用する場合は、「非財務データ」をどれだけ集められるかにかかってくると思います。

社員情報、勤怠管理、有給取得率、離職率、顧客リスト、業務日報、製品リスト、契約書など、「これ、売上利益と相関性があるだろうか」というような情報も、もしまだデジタル化されておらず紙で管理されているのであれば、スキャンするなどして「とりあえずデータ化」しましょう。それらを財務情報とセットにしてAIに分析してもらうことで、「何らかの相関性」が発見できる「可能性」があるのが、AIを活用するメリットです。

これまで、「相関性がありそうな気がするけれど、手作業で数千件集計・突合した結果、何の結果も得られない可能性もある」というデータ分析は、人員が限られる中小企業ではまず手が出せない領域でした。しかし、AIはそれを可能にします。AIにそれらの作業を代行してもらうことで、たとえば「〇〇率が上がると相対的に利益が反比例して下がっている」といった傾向が発見でき、それをベースにさらに社長や社員で分析していく、という活用の可能性も生まれます。そして、これらの分野こそ、税理士の先生方もオプションサービスの一つとして今後クライアントに提供できる分野であると思います。税理士の先生方は数多くのクライアントを抱えており、それは膨大な量の「情報資産」を預かっているということです。各クライアント企業様に、財務データだけでなく非財務データもデジタル化してもらい、共有していただくことで、税理士の先生方がクライアント先に行かずとも手元で分析が可能となります。さらにクライアント同士での比較分析も可能となり、より実利のあるアドバイスを還元・提供ができるようになることと思います。

実際に、社内のデジタル化というのは、この連載でもお伝えしているように、社内のバックオフィスの社員からは度々提案がなされている会社がほとんどだと思います。しかし、会社というのは上下関係がある以上、社員からの提言を経営陣が受け入れるということは言葉で言うほど簡単ではありません。実際に私も会社員時代、「上場を目指す」という理由で中途入社した経験があります。ところが、経理部門を上場準備の体制にするための最低限の整備すら予算をもらえませんでした。そこで、外部のコンサルティング会社、税理士、会計士の先生方全員に協力していただき、「上場というのはこれだけバックオフィスにお金をかけなければできないのですよ」と、皆様から経営陣の方々へ説明していただく場を設けました。

その結果、ようやく予算を得ることができたのです。これは珍しいことではなく、会社では本当によくあることです。だからこそ、税理士の先生方が定期的な経営者面談の際に「AIを活用できる社内体制にし、業績を伸ばしましょう」とご提案いただくことが重要なのです。社内の財務情報・非財務情報をデジタル化することで、経営者・バックオフィス社員・税理士の先生方が、それぞれ違う環境でも同時に「同じデータ」を見られるようになります。そうなれば議論もしやすくなり、実際の数字も改善することと思います。税理士の先生方が決算や申告の支援に加え、このような分野に参入していただくことは、クライアント先の社長やバックオフィスの社員にとっても、「頼りになる存在」になられることと思います。 次回は、AIによる分析の土台となる“正しいデータ”の重要性についてお話しします。

前田 康二郎

経営データ戦略アドバイザー・作家/流創株式会社代表取締役。
学習院大学経済学部経営学科卒業。エイベックスなど数社で管理業務全般に従事し、サニーサイドアップでは経理部長兼IPO担当として株式上場を達成。その後、中国・深センでの駐在業務の後、独立。現在は、AI導入前の社内体制構築・経営データ整備支援など、多岐にわたりコンサルティング、研修、講演、執筆活動などを行っている。著書に『メンターになる人、老害になる人。』(クロスメディア・パブリッシング)、『社長になる人のための経理とお金のキホン』(日経BP 日本経済新聞出版)他多数。Podcast番組『THE VENTURE』 パーソナリティ。

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