AIが進化するほど、税理士が必要になる理由
~AI時代の社長・経理・税理士の連携体制の作り方~

第1回 社長たちは、なぜ今、AIに夢中になのか
最近、経営者の方とお話ししていると、ほぼ、AIの話題が上ります。そして皆さんそれぞれAIを既にかなり使いこなしており「社員と話すよりAIと話すほうがどんどん仕事がはかどるんですよ」という方もいます。使い方も人それぞれで、
- 経営判断の壁打ちに使う
- 自分が専門外の分野の会議に参加する際に、事前にAIで一通り基礎的な知識や情報を調べてから参加している
- 重要な全社メールを送る前に、先にAIに送り、どのような反応を示すかを確認して参考にしている
など、さまざまな用途に使っていらっしゃいます。
なぜここまでAIが社長を虜にしているのでしょうか。社長がAIを使っている用途だけを見ていると、さまざまな理由があるように思えますが、私は社長とAIの相性が良いのは、「AIの仕事の実力」とはまた違う「何か」が要因ではないかと思っています。
私の考えでは、
- AIは気が利く言葉を社長にかけてくれる
- AIはすぐ反応してくれる
- AIは反抗しない
この3つが、社長を「気持ちよく」「機嫌よく」させ、仕事のモチベーションを実際に上げてくれるからだと思います。なぜかというと、社長がいつも課題だと思っている社員の特徴が
- 気が利かない、気が回らない社員
- すぐ返事や返信をしない社員
- 反抗、反発、批判しかしない社員
この3つだからです。AIをお使いになった方はおわかりになると思いますが、AIに悩みごとを話すと「よくこれまで誰にも言わずにそのようなことを我慢していらっしゃいましたね」と慰めてくれ、相談をした終わりに「アドバイスありがとう」とこちらからAIに言えば、「とんでもありません!またいつでもお声がけください!」という締めの言葉も忘れません。
私は8年前に『AI経理』(日本経済新聞出版)という本を既に出していて、先日、編集者の方とも「ちょっと出すのが早すぎたかもしれませんね」と話していたのですが、改めて本を読み返すと「将来は社長が社長室に閉じこもってAIとばかり話し込んでしまうことになるかもしれない」と書いていました。まさにそれが今日、現実化しているということです。
これだけ経営者の方々を夢中にさせているAIですが、ここで、税理士の先生方に思い出していただきたいことがあります。インボイス制度や電子帳簿保存法の対応のために業務のクラウド化、デジタル化などを経営者の方々に提案したとき、反応が鈍かったという経験はなかったでしょうか。
「インボイス制度?電子帳簿保存法?それ、今やらないとダメですか?」
「面倒そうだし、別に困っていないから大丈夫ですよ」
「予算がないんですよね」
このような言葉を経営者の方々に言われたという方もいると思います。私はイベント会社と合同で「経理座談会」という、数十社の経理社員を集めて、ひたすら日頃の課題や悩みをアウトプットしてもらい、すっきりしてまた会社で引き続きご活躍いただく、というイベントを定期的に開催しています。そこでは毎回、「社長が経理のクラウド化、デジタル化に無関心で、お金がないから、と言われて新しいソフトウェアを導入してもらえず、つらい」という悩みが各テーブルで挙がります。
ところが、今回のAIに関しては様相が全く違います。誰に言われずとも社長自身が自発的、積極的に触り、試し、使い始めています。つまり今は、AIに関しては経営者の心理的ハードルがほぼゼロの状態です。この現象を逃す手はありません。今この時に「AI活用のためにバックオフィスのデジタル化を進めましょう」と提案すれば、それまで全くバックオフィスの最適化に興味関心がなかった社長も、「え?バックオフィスもAIで最適化できるの?じゃあ予算つけるからやってみようよ」とデジタル化やソフトウェア導入のハードルも下がるはずです。実際にAIはデジタルデータがあればあるほどその活用範囲は広がります。
まさに今が、バックオフィス改善を提案する側にとって絶好のタイミングなのです。経理社員や税理士の方々の業務環境も大きく改善され、生産性も効率も上がります。 次回は、AIの実力と限界を、現実的な視点で整理をしてみたいと思います。
前田康二郎
経営データ戦略アドバイザー・作家/流創株式会社代表取締役
学習院大学経済学部経営学科卒業。エイベックスなど数社で管理業務全般に従事し、サニーサイドアップでは経理部長兼IPO担当として株式上場を達成。その後、中国・深センでの駐在業務の後、独立。現在は、AI導入前の社内体制構築・経営データ整備支援など、多岐にわたりコンサルティング、研修、講演、執筆活動などを行っている。著書に『メンターになる人、老害になる人。』(クロスメディア・パブリッシング)、『社長になる人のための経理とお金のキホン』(日経BP 日本経済新聞出版)他多数。Podcast番組『THE VENTURE』 パーソナリティ。

