顧問先のIT支援は、もはや難しいものではない!
会計事務所が実践するITコンサルティングとは!?
【第1回】会計事務所は企業の「情報システム部門」になろう
株式会社クレスコ シニアテクニカルエグゼクティブ 山内 貴弘 氏
はじめに
いま会計事務所業界で「ITコンサルティング」が注目を集めています。中〜大規模事務所では社内にシステムエンジニアを抱えるほど取り組みが加速していますが、一方で「会計事務所にITコンサルは難しい」という考えも根強くあるようです。ただ、メイン顧客である中小企業では人材難が深刻化し、もはやDXは待ったなしの状況。こうした中で、会計事務所にはどのような「ITコンサルティング」が求められているのでしょうか。そして、そもそもそれは実現可能なのでしょうか。
会計事務所が実践できるITコンサルティングとは?
私は、会計事務所の皆さまであればITコンサルティングを提供することは十分に可能だと考えています。そして、皆さまがITコンサルティングにチャレンジするなら、中小企業の情報システム部門になってあげるのがベストだと考えています。
ご存じの通り、大企業の場合は社内に必ずといって良いほど情報システム部門があります。この情報システム部門の主な業務は、およそ次のようなものです。
●企業における情報システム部門の役割(主なもの)
項目 | 内容 | |
① | ソフトウェアの ライセンス管理 | グループウェア・業務ツールの運用・管理 (アクセス権申請対応、アカウント管理、ポリシー管理、マスターデータ設定変更など) |
② | 社内PCやスマホの運用・管理 | 社員からの問合せ対応、PCやスマホのキッティング作業、在庫管理など |
③ | ネットワーク/サーバー運用・管理 | ネットワークやサーバーを中心としたITインフラの運用 |
④ | IT企画業務 | ITシステムの導入に必要な情報収集、IT投資戦略の立案、導入計画の策定、見積もり取得・開発業者選定、社内の導入サポート |
情報システム部門では日々、企業のITに関するさまざまな業務を行っていますが、特に会計事務所の皆さまに担っていただくと良いと思うのが、④のIT企画業務です。
では、IT企画業務とはどのようなものなのか、次にご説明します。
会計事務所がチャレンジしたい「IT企画業務」
IT企画業務とは「会社が抱える課題を解決するために、どのようなシステムやアプリケーションを導入(開発)するか」ということを企画・立案する業務です。
情報システム部門は、各部門から「どのような課題を抱えているか」「どのようなシステムやアプリケーションが必要か」ということをヒアリングし、企業にとって必要なITの機能、性能などを定めていきます。この工程のことを、ITの世界では「要件定義」と呼んでいます。
さて、各部門が求めるシステム・アプリケーションの要件を定義し、社内でコンセンサスを得ることができたら、次にその内容に則ってRFP(提案依頼書)を作成し、システム開発会社を選定します。
RFP(提案依頼書)
情報システムの導入や業務委託を行うに当たり、発注先候補の業者に具体的な提案を依頼する文書。必要なシステムの概要や構成要件、調達条件が記述されている。総務省:自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書【第2.0版】より
これらの工程を経てシステムの導入や開発がスタートしたら、情報システム部門は発注企業の代表として、プロジェクトマネジメントの一翼を担うことになります。すなわち、進捗や人、クオリティ、コストなどを管理する仕事です。
●ITのプロジェクトマネジメント
項目 | 内容 | |
① | スケジュール管理 | プロジェクトの完了予定日やマイルストーン(中間目標地点)の定義、 進捗状況の確認、納期・マイルストーンの調整、スケジュールの見直しなど |
② | 品質管理 | 品質基準をクリアするためのタスクのコントロール、プロジェクトメンバーの支援、品質チェックなど |
③ | 調達・資源管理 | 人材や資源の確保、リソース・資源の見直しなど |
④ | コスト管理 | 人件費や外注費、ソフトウェア使用料などの管理 |
⑤ | リスク管理 | リスクの洗い出し、(リスク別に)対応方針の立案、リスク発生時の方針決定など |
大企業の場合はこれらの仕事をする人が社内にいるのですが、中小企業の場合、情報システム部門がある会社は稀です。
会計事務所が「IT企画業務を担う」ってどういうこと?
さて、ここまでIT企画業務の中身をご紹介しましたが、では実際に会計事務所はどうやってこれを実践していけば良いのでしょうか。
最も重要なことは、経営者がもつITのイメージを具体化してあげることです。多くの経営者は「ITでこんなことができるかもしれないな」「こんなことがやってみたいな」というぼんやりとしたイメージを持っていることが多いので、まずは、これを上手にヒアリングして具体化していく必要があります。この工程が、ITのいわゆる「企画=要件定義」にあたる部分です。
イメージが具体化できたら、次に経営者の抱く課題を解決できる具体的なシステムやアプリケーションを選定し、提案します。中小企業の場合は既成のシステム・アプリケーションで事足りることも多いですが、複数横断的な課題解決を実現したい場合、いくつかシステムを連携させたり、自社開発が必要となるケースも出てきます。そのようなケースでは、先にご説明したRFPの作成や開発会社の選定、プロジェクトマネジメントにまで踏み込んでいく必要があるでしょう。
会計事務所がこのような役割を担うことによって、これまでITの導入やDXに足踏みしていた企業でも、スムーズにIT化、DX化が進められると思います。
※次回、第2回では「ITコンサルティングにおける会計事務所の優位性」について語っていただきます。
セミナー情報
今回ご寄稿いただきました山内先生のハイグレードセミナー「ITコンサルタント養成講座」が6月25日(火)より、全8回にわたって開催されます!
会計事務所がITコンサルティングをスタートするための知識とスキルを、目指すレベルや提供したいサービスに合わせて、8つの講座の中から選んで受講することができるプログラムとなっておりますので、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
「IT コンサルタント養成講座」(全8回/全日 9:00~17:00)
①2024/6/25(火) ②2024/7/10(水)・7/11(木) ③2024/8/6(火) ④2024/8/27(火) ⑤2024/9/10(火) ⑥2024/9/25(水) ⑦2024/10/8(火) ⑧2024/10/22(火)
山内 貴弘
株式会社クレスコ シニアテクニカルエグゼクティブ
筑波大学大学院システム科学研究科修了。大学卒業後に入社したIBMでは、
職種はシステムエンジニアにもかかわらずソフトウェア営業日本一を二度獲得。
同期中最速で課長職に昇進し、IBM認定プロジェクトマネージャーとなる。
トラブルプロジェクトを2週間で立て直す、1週間で17億円のコスト削減をする、
大手通信会社の料金計算システム構築といった大規模プロジェクトを数多く成功させるなど
大きな成果を残す。
現在は、株式会社クレスコでグループ会社含めた2,800名の技術リーダーとして
多くのエンジニアを育成するとともに、スクラムマスターとしてお客さまのアジャイル開発を推進。
著書に『一夜漬けAWSクラウドプラクティショナー直前対策テキスト』他多数。