会計事務所のための最新ビジネスモデル!「経営財務コンサルティング」の取り組み方 vol.1

ファイナンシャルズ株式会社 代表取締役
野原 健太郎

  • 事務所としてさらに付加価値の高いサービスを提供して売上を上げたい…
  • 顧問先から「経営」についての相談を受けるようになってきたが、どのようにすればいいかわからない…
  • 経営者との距離の近さを活かした会計事務所ならではのコンサルティングに取り組みたい…

上記のようなお悩みは「経営財務コンサルティング」のノウハウを習得し、取り組むことで解決することができます!

そこで今回は、会計事務所出身のコンサルタントとして数々の顧問先の業績改善を行ってきた、ファイナンシャルズ株式会社 代表取締役 野原 健太郎 先生に、会計事務所が「経営財務コンサルティング」に取り組むべき理由やメリット、実践方法について話を伺いました。

野原先生が経営財務コンサルティング」に取り組むようになったきっかけを教えてください。

複数の外資系経営コンサルティング会社で勤務した後、父親の経営する税理士事務所に入所したのですが、私にできる仕事がありませんでした。なぜなら当時の私は、仕訳を入力することもできず、消費税の課税区分すら理解していないほど、税務の知識に乏しかったのです。そのような状況のなかで、目についたのは事務所に膨大にある、多くの顧問先企業の決算書や会計データ。これを徹底的に分析すれば、対象企業の経営や財務の課題を浮き彫りにすることができると確信しました。「容易に手に入ることのない会計数値」に触れることができる環境は、自分にとって宝の山でした。

2008年にリーマンショックが発生した後、顧問先企業から追加融資の申請やそれに伴う事業計画書の作成などの依頼を受けることが増え、社長から今後の経営ビジョンをヒアリングしながら、自分なりに計画書に落とし込んで可視化する作業に取り組みました。ニーズに応えるために手探り状態から始めた計画策定でしたが、なによりも私にとってとてもオモシロイ仕事でした。数字は結果であり原因にもなりうる。行動の結果は数値にそのまま反映される。数値と行動の2つの要素を表と裏で関連させながら、企業の経営改善に取り組むことがとても有効であると手ごたえを感じてきました。実際に改善前と改善後で企業が見違えるほど大きく変貌し、経営者や社員の方々に笑顔が増える現場を体験することができて、やりがいを体感すると共に、経営財務コンサルティングのサービスの価値が確信に変わりました。

特にどのような業種・規模の企業に対して、「経営財務コンサルティング」を行ってきましたか。

会計事務所に籍を置きながら、最初は顧問先企業の中でも、年商規模が大きく、利益も大きな企業をターゲットとして経営財務コンサルティングの提案活動を続けてきました。コンサルティング料金を支払う余裕のある企業にフォーカスしていたのです。しかし、結果としてこの営業活動は身を結ぶことがありませんでした。しかし、あきらめずに年商規模を落としていくと、ある時、ブレイクポイントが見えてきました。年商20億円未満の事業規模の会社にとって、経営財務コンサルティングサービスがニーズに合致しやすいと気付いたのです。なぜなら、この規模の会社には、経営者の傍らに存在すべき財務部長に相当する役割の人材が存在しないことが多いのです。経理担当者はいても、会社の資金の増減や今後の戦略や計画に携わるような人は社長以外にいないことがほとんどです。ちょうどそのポジションを担える領域がぽっかりと空いていました。

こうして、顧客ターゲットゾーンを見つけた上で、あえて対象業種は絞らず、地域も絞らずに経営支援を続けてきました。私自身が様々な業種やビジネスモデルの裏側に触れることに興味を持っていたことが大きな理由ですが、全国各地でセミナーや講演活動をする中で、ニーズはどこにでもあるという手ごたえを感じました。

これまでを振り返ると、顧客の業種で特に多かったのは、資金調達をして新規設備投資を繰り返す企業です。これらの業態では、銀行融資が必要となりますが、その前に投資計画を策定しなければならず、投資後のキャッシュフローやリスク判断をするために数値と向き合わなければなりません。ただ、財務部長やCFOが不在の中小企業は、自力で投資計画の策定が難しいため、我々のような経営財務戦略コンサルタントと一緒になって検討することが多いのです。

これまでに当事務所が経営財務コンサルティングサービスを提供してきた企業は、累計で100社を超えています。個別相談や事業計画の策定のみのスポットでの支援を含めれば500社以上。また、顧問先の一部からは社外監査役の就任依頼を受け、より緊密な関係で経営支援をさせていただいております。

企業が経営財務コンサルティングを必要とする理由・背景は何でしょうか。

企業経営者は「見えないものを見たい」のだと思います。当期の決算着地予測、今後の資金繰り予測、銀行や取引先などの社外からの評価、自社の根本的課題、目指すべき財務指標の水準など、多くの経営者自身が見たくても見られない状況に陥っている場合が多いのです。見えないから不安なのであり、可視化によって現状を把握することで、はじめて新たな行動や改善に着手することができるのです。こういった経営者の思いは、今に始まったことではなく、私が経営財務コンサルティングを手探りで始めたころの15年程前から一向に変わっていません。

また、課題だらけの中小企業の現場においては、課題や目標水準が見えたとしても、どのように対処すればこの事態を改善できるかという指針を立てることが難しいのです。多くの中小企業経営者は何かしら経営上の困りごとを持たれているので、その解決策の一つを提供するのが経営財務コンサルティングであると強く感じています。

個別領域のコンサルティングは世の中にたくさん存在します。しかし、企業の業績や資金の最大化を支援するための会計数値と行動施策の両面からの包括的なサービスパッケージは、それほど存在しないのではないでしょうか。もっとも、領域によっては、厳選して専門家や事業会社との業務提携もしており、協同で問題解決やニーズの充足に対処するというスタイルも取っています。しかし、あくまでも経営財務コンサルタントがプロジェクトマネージャーのような役割を担い、いわゆる丸投げをして顧問先と提携先でのやり取りや進捗状況を放置することは避けています。

ここ数年で企業の抱える問題や課題はどのように変化しているように感じますか。

私が経営財務コンサルティングを立ち上げた後、リーマンショック、東日本大震災、コロナウィルス蔓延など外部経営環境の大変化が度々起こりました。経済状況の大変化が発生した際は、まずは資金調達と資金繰り悪化を予防することに努めなくてはなりません。いわゆる財務の戦略策定と改善施策をタイムリーに講じることが最優先課題となります。現在の顧問先企業のほとんどは、財務状況が厳しくなった時に関与させていただき、その後、複数年をかけて経営改善し、強固な財務体質に転換した企業ばかりです。そういう意味では、経済状況が大変化するときは、経営財務コンサルティングのニーズが特に高まる時期ですし、地方経済が衰退しているのであれば、そこに大きなニーズが存在することになります。

また、最近では、事業承継者の不足によるM&A売却案件の相談が増えています。経営者からすると、まず企業価値を高めてからなるべく望み通りの金額で企業売却したいという意向が強いため、数年かけて企業価値向上を図る事業計画の策定をするケースも増えてきました。加えて、IPOを目指すベンチャー企業も、企業価値を向上させるために事業成長計画の策定を求めています。

経営者にとって未来の時間軸が明確で、特定の目的を抱いているものの、その実現のためのロードマップが漠然としている場合は、経営財務コンサルティングを通じて可視化し、具体的な策を補完したり追加検討したりする場面が増えます。

会計事務所が経営財務コンサルティングに取り組むべき理由・背景を教えてください。

会計事務所の圧倒的な優位性は、数多くの顧問先企業の仕訳データを有していることです。仕訳とは、その企業の経済取引の結果であるので、仕訳を参照すれば、いつでも好きなように顧問先企業の取引内容を把握することが可能な立場にあります。また、複数年にわたった時系列での企業分析や、社内の事業別や商品別に細分化した分析をすることもできます。会計事務所は、会計データという、コンサルティングを行う上で不可欠ではあるものの入手することが困難なデータにいつでもアクセスできる環境にあるのです。

もっとも、会計事務所は、仕訳を起票しその集計値を確認し、そこから試算表や決算書を作成し、最後に税務申告書まで作成するという主たる業務も担っています。

過去と現在を正しく分析把握した上で、その対象企業の強みや弱みを抽出し、そこに経営者の望む未来像をしっかりと対面でヒアリングすることで、まだ見ぬ将来の会社像を浮かび上げることができるのです。顧問先企業を大事にしているのであれば、現状を打破し、未来に向かって共に進むべき道を明らかにして、上手くいかないことがあってもその課題を一緒に乗り越え続けるような関係で仕事を進めていくべきであると思います。

「経営財務コンサルティングは難しいのでは・・・」と考えている事務所様もいらっしゃると思うのですが、どの事務所様でもできるのでしょうか。

どの会計事務所でも経営財務コンサルティングを遂行できるとは断言しません。税務会計業務により、経営財務コンサルティングのための業務時間を確保できない事務所もあるとは思いますが、一番の問題点としては、会計事務所の職員は、数値面からのコンサルティングはできても行動面の検討に慣れていないため、苦手意識があることが挙げられます。

行動面に関しては中小企業におけるよくある経営課題と解決策は概ねセットになっており、だいたいのケースでソリューションは定型化できます。「経営財務コンサルタント養成講座」ではその術をすべて織り込んでいますので、顧問先の経営現場に適宜対応する能力や使用するツールを手に入れ、対処ができるようになります。実際はやってみないと分からないでしょうが、まずは講座を通して疑似体験をしてみればその後の顧問先との関わり方や支援のスタイルは大きく変化することでしょう。

セミナー情報

今回ご寄稿いただきました野原先生のハイグレードセミナー「経営財務コンサルタント養成講座」が10月1日(火)より開催されます!

こちらの講座では経営財務コンサルタントとして活躍するための知識・具体的な実践手法を徹底的にお伝えいたします。講義はインターネットによるオンデマンド受講のため、いつでもどこでも何度でも学習することができ、個別コンサルティングとして野原先生にはZoomにて直接相談することができるため、講義で生じた質問や事務所のコンサルティングに関する悩みも丁寧に対応し、解決いたします。
これまで2021年より15クールにわたり開催してきましたが、次回の第16クールが最後の開催となります! 皆様のご参加を心よりお待ちしております。

「経営財務コンサルタント養成講座」
【第16クール:2024/10/1 ~ 2024/12/31】

詳細・お申し込みはこちら

野原 健太郎

ファイナンシャルズ株式会社 代表取締役
東京大学文学部卒業後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア株式会社、 株式会社ヘッドストロングジャパンにおける経営改革・業務プロセス改善・ 情報システム構築等のプロジェクトを経て、2006年、野原税理士事務所に入所。 顧問先企業の財務分析や経営計画策定、銀行融資支援を多数手掛けた後に、 経営財務コンサルティングサービスを開発して独立。中小企業を対象とした経営財務戦略 コンサルティング事業を開始し、顧問先の業績改善実績を多数持つ。また、全国各地にて、 中小・ベンチャー企業の経営者や税理士・会計事務所を対象としたセミナーや研修プログラムを実施している。

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