突然くる!障害者雇用への適応方法

労務管理事務所 新労社 社会保険労務士
深石 圭介

「障害者雇用」と言っても、多くの中小企業にはピンとくるものがないかと思います。ただある程度大きくなった企業(人数100人前後)には、ある日突然「高齢・障害・求職者雇用支援機構」から通知が来ることがあります。かいつまんでいえば「障害者を雇用する法的な義務が発生しているから、雇用するか?代わりのおカネを払うか?どちらかを選んでください」というものです。100人に達していなくても電話がかかってくることがあります。

この“現象”は「障害者雇用納付金制度」によるものです。一言でいえば障害者を雇用する企業としない企業の「所得再分配」のようなもので、人数を満たした企業は法律で定められた数の障害者を雇わねばならず、雇用しなければ、その代わりの納付金を納めなければならず、逆に障害者を規定以上に雇用する企業は給付(調整金・報奨金)が受けられるというモノです。

納めねばならない納付金は障害者雇用1人あたり月額50,000円。受けられる給付金は調整金29,000円+報奨金21,000円です。

このような通知が来れば、多くの企業では慌てることが多いのではないでしょうか?男女の違いや体力差はあっても、肉体・精神とも健常者を雇用してきた多くの中小企業にとって、障害者雇用はものすごく困難な、ハードルの高いもののように見えます。どのように処遇し、どんな仕事をさせればいいのか?周辺の設備や、オフィス内の同僚とはどう付き合わせたらいいモノなのだろうか?迷うことと思います。

当局は障害者雇用を何の準備もなく、一方的に「やれ!」と命令するものではありません。障害者を雇用しようとする民間企業が利用できる、当局の原則無料のサービスは数多くあります。

ハローワークのほかに地域職業センター、就業・生活支援センターの利用

はじめは「ロクイチ報告」から当局とのご縁が始まりますが、書類の提出のみならず、当局のアドバイザーからは事業主への突っ込んだアドバイスをいろいろ期待できます。

  • 雇用管理上の配慮
  • 障害者の雇い入れ計画や、職場配置・職務設計
  • 職場での配慮や業務の指導方法
  • 従業員への研修、ジョブコーチ(職場適応援助者)の派遣、職場復帰の支援

など。

雇用保険による雇用関係助成金

障害者をこれから雇用する場合の助成金が多いです。これら助成金を活用することによって、企業内での障害者の方の「居場所」を作ることを期待しての“ごほうび”です。

  • 特定求職者雇用開発助成金 特定就職困難者コース
    障害者の方をハローワーク経由で雇った場合の助成金です。
  • 特定求職者雇用開発助成金 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
    より特化した障害者の助成金です。
  • トライアル雇用助成金 障害者トライアルコース
    障害者を試しに雇用して適性を見るための助成金です。
  • キャリアアップ助成金 障害者正社員化コース
    障害者が正社員になるための助成金です。

障害者雇用納付金制度による助成金

障害者の方を雇用した後、生じる問題の解決、または職場で障害者になった方のための助成金が多いです。人件費や設備投資の一部を助成するものが多いです。計画に基づいて例えば職場復帰などのプランを出し、その通り行った場合に出るものです。

  • 障害者作業施設設置等助成金:スロープや車いす用机の助成金です。
  • 障害者介助等助成金:主に障害者の方の介助者を配置するための助成金です。多くの種類があります。
  • 障害者福祉施設設置等助成金:施設・設備を新設・改修等する場合の助成金です。

  • 重度障害者等通勤対策助成金:障害者の方の介助者を配置するための助成金です。
  • 重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金:より重度の障害者の助成金です。
  • 職場適応援助者助成金:ジョブ・コーチを配置するための助成金です。

  • 中高年齢等障害者職場適応助成金:中高齢の方の福利のための上乗せ助成金です。
  • 障害者雇用相談援助助成金:障害者相談事業を始める方のための助成金です。
  • 障害者職業能力開発助成金:障害者の方の教育訓練のための助成金です。

厚生労働省の認定制度「もにす」

障害者の雇用の促進や安定に関する取り組みなどの優良な中小企業を認定する制度。企業としてマスコットキャラクターのマークを表示することが可能になり、多くのメリットもあります。

セミナー情報

8月23日開催の『4月より「障害者雇用」の対象となった事業者様必見!助成金・補助金をフル活用して“低コスト”で障害者雇用を実現するポイント』セミナーでは、障害者の方を初めて雇用する会社、また中途障害者の方を継続雇用する会社が、上記福利をどう組み合わせ、障害者雇用を会社の戦力ならしめるかということについてご紹介いたします。

福利を受けることで一番重要なのは、助成金もさることながら「障害者の方の居場所をつくる」ことです。障害者の方が働きやすい会社は、ヒト全般にも優しいホワイト企業。そういう企業にはヒトも居着き定着率も上がるのです。

その居場所づくりの第一歩は「企業の仕事の棚卸し」から始まります。そこから障害者雇用を最大限昇華させるコンサルティングをお伝えします。

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深石 圭介

労務管理事務所 新労社 社会保険労務士
平成16年に新労社を開業。 雇用関連助成金の申請及び派遣関係の許可申請等を専門とし、中小企業の労務管理に関して実践的な アドバイスを行っている。社会保険労務士として多くの顧問先を持つほか、 労働法の改正等にも知見が深く、研修会社や業界団体等においてセミナー講師も務めている。

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