税理士目線での注意点は?年末調整をスムーズに進めるポイントを解説
年末調整の時期が近づくと、税理士の先生はいつも以上に忙しくなります。クライアントからの問い合わせや書類のチェックに追われ「今年も無事に年末調整を終えられるだろうか」と、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
特に税制改正があった年は変更点を押さえながら正確に処理を進める必要があり、いつも以上に注意深く作業を進める必要があります。もし、年末調整でミスをしてしまうと、クライアントに迷惑をかけてしまうだけでなく、税理士としての信頼を損ねるかもしれません。
この記事では、税理士が年末調整で注意すべき点と、スムーズに進めるためのポイントをわかりやすく解説します。最新の税制改正への対応方法から、クライアントとのコミュニケーションのコツ、よくあるミスを防ぐ方法についても分かる内容になっています。
目次
税理士が年末調整で注意すること
年末調整は企業にとって毎年の重要な業務の一つですが、税制改正や控除など、複雑な要素が多くミスが発生しやすい手続きでもあります。特に税理士は、クライアント企業から年末調整を依頼されることも多く、正確な処理が必要です。
ここでは、税理士が年末調整を行う際に注意すべき点について、解説します。
最新の税制改正を把握する
税法は頻繁に改正されるため、古い情報に基づいて処理を行うと、誤った計算をしてしまう可能性があります。例えば、控除額や要件などが変更されている場合、その変更を反映させなければ、納税額が過大または過少になってしまう可能性があります。
特に令和6年は定額減税が実施されているため、注意が必要です。16歳未満の取り扱いは、扶養控除と定額減税では認識が異なるため注意しましょう。
賞与の支給の有無を確認する
賞与は、給与とは別に計算されるため、年末調整の際に忘れがちです。しかし、賞与も所得に含まれるため、年末調整の計算に含める必要があります。賞与を含めずに計算すると、所得税の納付額が少なくなり、追徴課税を受けるかもしれません。
例えば、年間100万円の賞与が支給されているとします。この賞与を含めずに年末調整を行うと、所得税の納付額が実際よりも少なくなり、後日、税務署から指摘を受ける可能性があります。
年末調整を行う前に賞与が支給されているかどうかを確認し、支給されている場合は、年末調整の計算に含めるようにしましょう。
税理士等の報酬の有無を確認する
年末調整の際に、納付書を作成してクライアントに渡す場合は、税理士等の報酬の有無を確認しましょう。納付書は給与や賞与だけでなく、税理士等の報酬に関する源泉所得税もあわせて作成します。
税理士等の報酬の支払があるにもかかわらず漏れていた場合は、延滞税などのペナルティが発生する可能性があります。延滞税の発生はクライアントにも迷惑がかかるため、忘れずに確認することが大切です。
給与計算ソフトを最新版にアップデートする
古いバージョンのソフトを使用していると、最新の税制改正に対応できずに誤った計算をしてしまう可能性があります。年末調整を行う前に、使用している給与計算ソフトが最新版であることを確認し、古い場合はアップデートを行いましょう。
配偶者特別控除の適用漏れに注意する
配偶者特別控除は、配偶者控除が受けられなくても配偶者の所得が一定額以下の場合に適用できる控除です。配偶者特別控除は、年末調整で適用漏れが起こりやすい控除の一つです。配偶者がいる場合は、配偶者特別控除の要件を満たしているかどうかを確認し、適用漏れがないように注意しましょう。
税理士が年末調整をスムーズに進めるポイント
年末調整をスムーズに進めるには、事前の準備やクライアントとの連携が大切です。ここでは、税理士が年末調整をスムーズに進めるためのポイントを3つご紹介します。
クライアントへ早めに連絡する
11月に入ると、クライアントも年末調整の準備を始めるでしょう。こちらから事前に連絡することで、クライアントは必要な書類を早めに準備できます。余裕を持って準備を進めることで、年末調整の手続きがスムーズになり、期限に間に合わないといったトラブルを防ぐことが可能です。
例えば以下が考えられます。
- 10月中頃:年末調整の案内
- 10月後半:必要書類の連絡
- 11月初旬:年末調整の資料を預かる
早めの連絡は、クライアントとの信頼関係を築く上でも重要です。積極的にコミュニケーションを取ることで、クライアントは安心して年末調整を任せることができます。
間違いが多い事項と必要書類を説明する
よくあるミスとしては、扶養家族に関する情報の誤りや、生命保険料控除証明書の添付漏れなどです。これらのミスを防ぐためには、クライアントに間違えやすい事項を事前に説明し、必要書類を明確に伝えることが大切です。
例えば、以下が挙げられます。
- 扶養控除:扶養親族の収入が記載されていない
- 住宅ローン控除:住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書が不足している
事前に伝えることで、記入もれや必要書類の不足を減らすことができます。
締め切りを明確にする
締め切りが曖昧だと書類の提出を先延ばしされ、年末調整作業が遅れてしまう可能性があります。明確な締め切りを設定することで、計画的に書類を集めることができます。
例えば、「11月末までに書類を提出してください」のように、具体的な日付を明記して締め切りを伝えましょう。また、締め切りが近付いたら、リマインダーメールを送信するなどして、クライアントに再度締め切りを意識させることも効果的です。
自社で年末調整で行うクライアントへの対応方法
年末調整の時期になると、税理士事務所には多くの企業から依頼が舞い込みます。しかし、中には「自社で年末調整を行う」クライアントもいるでしょう。そんなクライアントに対して、どのように対応すれば良いか悩むでしょう。
ここでは、年末調整を税理士に頼まないクライアントの対応方法について解説します。
改正点を伝える
まずは年末調整に関する最新の改正点をわかりやすく伝えることが大切です。年末調整に影響を与える改正点があれば、クライアントにわかるように伝えるようにしましょう。具体的な改正内容をわかりやすく説明することで、クライアントは安心して年末調整を進めることができます。
また、税務に関する最新情報や改正点などをまとめた資料を作成し、クライアントに提供するのも良いでしょう。Webサイトやニュースレターで情報を発信する方法も効果的です。常に最新の情報を提供することで、クライアントとの信頼関係を築き、スムーズな年末調整を支援できます。
社労士は年末調整できないことを伝える
クライアントの中には、社労士に年末調整を依頼できると誤解している方もいるかもしれません。「年末調整は社労士に依頼する予定」言われた場合は、社労士の業務範囲を丁寧に説明し、年末調整は税理士の業務であることを明確に伝えましょう。
例えば、「社労士は社会保険手続きの専門家ですが、税金の計算や申告は税理士の専門分野です」といったように、わかりやすい言葉で説明することが大切です。
対応できることと対応できないことを明確にする
年末調整を依頼されていないクライアントに対して、どこまで対応できるのかを明確に伝えることは大切です。
例えば「年末調整に関するご相談やアドバイスは喜んでお受けしますが、実際の計算や書類作成は貴社で行っていただく必要があります」といったように、具体的に説明することで、クライアントの理解と協力を得やすくなります。
クライアントとの信頼関係を維持しながら、適切なサポートを提供することで、スムーズな年末調整を支援できます。
税理士の年末調整に関するまとめ
年末調整をスムーズに進めるためには、事前の準備とクライアントとの連携が大切です。10月から年末調整に関する案内や必要書類のリストを送ることで、早めに資料を集めることができます。
また締め切りを明確に設定し、クライアントが書類の提出を遅らせないよう促します。明確な期限を設けることで、計画的に書類を集め年末調整をスムーズに進めることができるでしょう。
税理士.ch 編集部
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