粉飾決算とは?その意味や粉飾の意図・手口、ばれた場合の影響や見抜き方など詳しく解説

粉飾決算とは?その意味や粉飾の意図・手口、ばれた場合の影響や見抜き方など詳しく解説

粉飾決算は不正な会計処理を行い、実態とは異なる内容の決算書を意図的に作成する行為のことをいいます。

では粉飾決算はどのような意図の下で行われるのでしょうか?またその手口は?

そもそも粉飾決算は不正行為のため、決してなされてはいけないものです。そのため不正行為である粉飾決算には法的制裁を含む様々な種類の罰則があります。粉飾が発覚すれば、当該会社や関係した個人が悪影響を受けるだけでなく、様々な制裁を受けることになります。

本記事では、粉飾決算について、その意味や粉飾する意図や手口、発覚した場合の影響と制裁の内容、合わせて粉飾決算の見抜き方や注意点など詳しく解説します。

目次

粉飾決算とは?

粉飾決算とは、一言でいえば「赤字決算を黒字決算であるかのように見せかける」行為です。

会社が利益を上げると一般的には納税の義務が生じますが、赤字決算なら税金を納めなくて済むので粉飾決算は悪く感じないかもしれません。

しかしそれは完全な誤りです。

その理由は、会社には株主や金融機関、取引先という事業を理解して協力してくれる利害関係者がいて、なぜ彼らが協力してくれるかといえば、それは会社には目には見えない「信用」というものがあるからです。

そして信用の基盤は毎期の黒字決算であり、それを会社が利害関係者にきちんと定期的に報告してくれるからこそ、彼らは会社を信用して取引で支払い猶予したり、資金提供したり、株式を購入してくれます。

しかし粉飾決算はこの信用を裏切る行為であり、利害関係者に間違った情報を提供する行為です。結果的に取引の継続、融資や出資の面などで利害関係者の判断を誤らせます。

そして粉飾決算で会社が倒産してしまえば、利害関係者に様々な損害を及ぼしてしまいます。粉飾決算は決して行ってはいけない行為なのです。

粉飾決算の種類

粉飾決算には一般的に2つのタイプがあります。粉飾決算と逆粉飾決算です。まずはこの2つのタイプの定義や違いを押えておきましょう。

粉飾決算と逆粉飾決算

粉飾決算とは、一般的に会社が自社の財務状況を実態より良く見せることを目的として、不正な会計処理を行い、収支を偽装して行う虚偽の決算報告をいいます。

一方、逆粉飾決算とは、会社が自社の財務状況を実態より悪く見せることを目的に、不正な会計処理を行い、収支を偽装して行う虚偽の決算報告をいいます。

粉飾決算はこのように会社の意図や目的に沿って、ときには逆粉飾決算が行われることもあるので、チェックする側としては両面の可能性を含めて監視する必要があります。

粉飾決算が行われる主な理由

粉飾決算が行われる主な理由とは何でしょうか?この章ではその主な理由を5点紹介します。

利害関係者対策のため

粉飾が行われる理由の1点目は、利害関係者からの信用を失わないためです。

利害関係者とは、金融機関や取引先など会社の事業の協力者をいいます。会社が赤字決算を公表すると、それを契機として主要取引先や金融機関から自社への協力の停止、具体的には取引の停止・縮小や融資の中断・回収などが宣告される可能性があります。

このような事態を回避するため、会社としては意図的に不正な会計処理をして、自社の業績を実態より良く見せようとするケースがあるのです。

株価維持対策のため

理由の2点目は、会社の株価を維持するためです。

赤字決算で会社の業績が思わしくなってくると、株式市場で評価が下がり、株価が低迷するリスクが発生します。株価の低迷が続くと、経営者は株主総会で経営責任を追及され、最悪の場合、株主の総意として経営陣の交代を迫られる事態にもなりかねません。

そのため会社、特に上場企業においては、経営者の判断の下、株価の低下を避ける、あるいは上昇させる目的で意図的に粉飾決算がなされることがあります。

入札資格の取得・維持のため

理由の3点目は、入札資格を取得したり維持したりするためです。

会社が土木・建築に係る建設業だと、公共工事などの業務を受注するために都度、入札資格を取得する必要があります。入札資格を得るためには、自治体の行う経営審査において、受注企業に値する健全な財務状況にあることを認められる必要があり、決算内容が所定の財務指標を下回っていれば、入札資格そのものが得られなくなります。

加えて、前回までは入札資格を得ていても、以後の決算で赤字になれば資格を取り消されて維持が難しくなるケースもあります。そこで経営状態を少しでも良く見せようとした結果、粉飾決算に手を染めてしまうのです。

税金納付を軽減・回避するため(逆粉飾決算)

理由の4点目は、税金の納付を軽減または回避するためです。

この場合は、粉飾決算するのでなく、逆粉飾決算という手口を使います。会社が利益で黒字になると納税の義務が生じますが、逆に赤字決算だと納税の義務を免れられます。

そこで黒字にも関わらず税金を納めたくない経営者としては、意図的に逆粉飾決算を行い、納税を回避しようとします。税金は一般的に、会社の利益だけでなく保有資産にも課税されるので、納税額を抑えるため、具体的には売上・仕入額を操作したり、保有資産を少なく計上したりして粉飾します。

横領を隠避するため

理由の5点目として、個人が横領したことを隠避する目的で粉飾決算が行われることがあります。

たとえば経理担当者が会社の資金を横領して、資金不足がばれることを隠すために、経営者にも内緒で架空の経費を計上したりします。

また別のケースとしては、親しい取引先と共謀して架空の売上を作り、見返りとして個人的にキックバックを受け取るケースもあります。これもまた会社取引を利用した一種の横領による粉飾決算といえるでしょう。

粉飾決算の主な手口

では粉飾決算ではどのような手口が使われるでしょうか?以下でその主な手口を4種類解説します。

架空売上の計上

粉飾決算でよく行われる手口の代表が架空売上の計上です。

たとえば、取引実態として全く存在しない架空の売上を帳簿の上だけ単純に計上して売上高をかさ増しする方法があります。

あるいはグループ会社や子会社等の関係会社間で「循環取引」して売上を計上する方法も取られます。

循環取引とは、「A社→B社→C社→A社→B社…」という一連の流れで、ひとつの商品やサービス等の架空取引を循環させて関係企業がそれぞれ売上や利益を計上する不正手口をいいます。しかし実態は、その商品はA社内にとどまって実際に出荷されなかったり、他社により加工がされなかったりします。

要するに実態のない取引で、ただ売上という架空数字が計上されるだけなのです。

売上の前倒し

売上の前倒しという手口も粉飾決算ではよく使われます。

原則、売上の計上は発生主義・実現主義が基本で、商品が販売されたりサービスが提供されたりした時点で売上が計上されます。しかしある期の売上を良く見せる目的で、本来なら次期で販売して計上する売上額を今期に前倒しにして計上することがあります。

これは意図的に売上の計上時期をずらしたという点で、実質的な粉飾決算に相当します。

経費の過少計上

経費の過少計上も粉飾決算を行う手口のひとつです。

ただし経費を単純に過少計上すると、本来取引相手には支払いが必要であるため、経理担当者などが自腹を切る必要があります。そのため、たとえば保有資産に係る減価償却費などを操作して、本来その期の経費となるべきものを資産計上したりして経費を過少計上することもあります。

また発生主義に基づき、本来今期に計上すべき経費を前払金などの費目に計上して、翌期に不正に繰り越し処理する場合もあります。経費に関しては、逆に子会社等からの架空仕入を計上することで、経費を水増して結果として利益を圧縮する方法も取られます。

これは逆粉飾決算のやり方のひとつです。

架空在庫の計上

架空の在庫を計上することで粉飾決算することもあります。

仕入は事業を行い、売上高を立てる上で必須の事項であり、仕入は経費のひとつです。そこで売上の金額が毎期一定であると仮定すると、仕入高が少ないほど利益は大きくなります。

一般的に、仕入高は以下の算式で計算されています。

仕入高=期首在庫額+当期仕入額-期末在庫額

つまり期末在庫額が多ければ多いほど、その期の仕入高は少なくなります。そこで仕入高を小さく見せて利益を大きく見せるために、意図的に期末在庫を過大に計上して仕入を粉飾する場合があるのです。

これとは別に逆粉飾決算として、在庫隠しを行う手法が採られることがあります。在庫隠しとは、実際には手元にある在庫を意図的に隠すことで、利益を少なく見せかける手口のことです。これは主に課税を免れようとするときに利用されます。

粉飾決算がばれたときのペナルティ

粉飾決算が発覚したとき、当該会社はどのような影響を受けるでしょうか?またそのときのペナルティは?
本章では、粉飾決算による影響やペナルティについて解説します。

会社が受ける悪影響

粉飾決算が発覚すると、その事実が利害関係者に知れることになるので、事業取引の停止や融資の中止・回収、株価の下落等につながります。それまで保っていた会社としての信用が失墜するからです。

具体的には、取引先からは取引の停止が宣告され、融資を受けていた金融機関からは融資の中止や回収が告げられます。もちろん株価が急激に低下した結果、株式が売り飛ばされ、さらに株価が下降し資金調達力もなくなり最悪倒産に至ります。

損害賠償

粉飾決算が発覚し資金繰り等に影響がでてくると、利害関係者に損害を与える可能性が拡がってきます。

そして損害を与えてしまうと、当事者から損害賠償請求されてしまいます。当事者とは、具体的には売掛金の回収ができなくなった取引先、融資の返済が滞りだした金融機関、株式を購入し株価下落で損失を抱えた株主などです。

もちろん賠償責任を負うのは当該の会社だけでなく、粉飾決算を主導した取締役や粉飾を見抜けなかったり逆に協力したりした監査役にも及びます。

刑事罰

粉飾決算におけるペナルティは、単に損害賠償請求にとどまらず、悪質性が高いと認められる場合には、刑事事件となって関係者の逮捕に至る可能性もあります。

もちろん法人としての会社も罰せられます。

刑事罰における主な刑罰は以下の3つがあります。(根拠法令:刑法及び会社法)

  • 詐欺罪
  • 違法配当罪
  • 特別背任罪

行政処分

上記刑事罰に関しては、被害を受けた利害関係者が虚偽記載についての「故意」を立証する必要がありますが、その立証が困難な場合があります。

そこでこの弱点を補完するため、金融商品取引法(通称、金商法)では、有価証券報告書等に虚偽記載を行った法人に対して行政処分としての課徴金を課す制度が定められています。

課徴金制度の下では、故意の立証責任は求められず、ただ虚偽記載という客観的な要件を満たせば納付命令の対象となります。

対象となる有価証券報告書等課徴金の金額根拠条文
有価証券報告書・訂正報告書600万円または時価総額の10万分の6のいずれか高い方金商法172条の4第1項
半期・臨時報告書等300万円または時価総額の10万分の3のいずれか高い方金商法172条の4第2項

なお、過去5年以内に課徴金の対象となった者が再度違反した場合、課徴金の額は1.5倍となります。逆に違反行為の発覚前に自ら申告した場合、課徴金の額は本来の2分の1となります。

参照先:金融商品取引法 | e-GOV法令検索

取引所処分(上場廃止ほか)

粉飾決算に係るその他のペナルティとして、その会社が東京証券取引所等に上場していた場合、有価証券報告書等の虚偽記載の内容がすぐに上場の廃止を決めないと市場の秩序維持ができないと取引所に判断されれば、上場廃止処分がなされます。

また仮に上記取引所基準に照らして即時上場廃止処分とならなくても、上場会社として内部管理体制等に改善の要ありと判断されれば、特設注意市場銘柄に指定されることもあります。

さらにその処分は取引所によって公表されるため、当該企業はその社会的信用を大きく落とすことにつながります。

粉飾決算を防ぐ対策

粉飾決算の防止対策は小さなレベルのものから組織的な対応までいくつかあります。本章では代表的な防止策を3つ紹介します。

粉飾決算に対する社内教育の徹底(含む役員)

粉飾決算は、たとえ会社の社員が1名から、または小額から始めても、その影響は会社全体に波及するものであり、異常値の修正は期を越えてずっと続ける必要が出てきます。

最終的に粉飾決算が発覚すると組織的な責任問題にも発展するため、会社として事前に防止するためには社内教育を徹底する必要があります。

もちろんそれは経営に携わる役員も例外ではありません。社内教育により、粉飾決算は絶対しない・させないという共通認識を構築させる必要があります。

相互監視態勢を強化

防止対策の2点目は、組織的に相互監視体制を強化することです。

業務に係る経理処理を複数の部署、あるいは従業員間で相互チェックを習慣化させることで、不適切な会計処理の防止だけでなく、人為的なミスを発見できる可能性が高まります。

また相互監視体制が強化できれば、経理に係る処理が属人化していないかチェックできるし、特定の人物に権限が集中して粉飾決算がなされていても発見が早くなり、その決算書類が所定機関に提出される前に差止することもできます。

資金の流れの可視化・透明化

防止対策の3点目は、資金の流れの可視化・透明化です。

経理処理等を手書き等、従来の方法に頼るのでなく、社内に積極的に会計ソフト等を導入して、日々の資金繰りから取引に係る経理処理まで全てを可視化しましょう。

精度の高い会計ソフトやシステムを導入すれば、経理処理に伴う自動入力、自動仕分等もできてミスの少ない効率的な会計処理ができるとともに、会計情報の共有化も進むのでより透明化ができて粉飾決算できる余力がなくなります。

また会計情報を顧問の会計士や税理士と共有することで、適宜様々なアドバイスが得られたり、チェックしてもらったりすることで粉飾決算のリスクも減らすことができます。

粉飾決算に係り税務等を取り扱う方々への注意点

最後に粉飾決算に関して、防止の観点から、税務や財務を取り扱いしている方々への注意点を2点解説します。

粉飾決算を見抜く能力を磨く

日頃、税務や財務に携わっている方々、それが社内関係者や会計士・税理士等の外部関係者であれ、防止対策上必要なことは、基本に返り簿記会計の原則を使って粉飾決算を見抜く能力を磨いておくことです。

簿記会計のルールでは、在庫や売上・仕入間は完全に紐づけされています。そのため、たとえば在庫が水増しされていれば、仕入に矛盾が生じるし、在庫の一部を意図的に除外すれば仕入か売上のいずれかにずれが発生します。

業務に慣れてくると、このずれを発見するのは意外と簡単です。他にも、経費の水増し計上なども、現金預金の動きを明瞭にしていけば、必ず矛盾が見つかるので、簡単に粉飾を発見できます。

粉飾決算は認めないという強い意思で決算書類や税務書類をチェックする

決算書類を信用するかどうかは、常日頃からの利害関係者の相互信頼の下に成り立ってています。しかしいくら信頼したくても、粉飾決算に手を染める会社や経営者・従業員個人は一定数存在します。

完全に防ぐことは難しいでしょう。

最初は小額の不正からスタートして、発覚が遅れることでやがて大胆な粉飾決算へとつながってきます。しかし会社として、定期的な自主監査や相互監視体制を強化することで粉飾決算も小さなうちに摘み取ることはできます。

また会社として、顧問の会計士・税理士等に、会社としての動きや意思を伝えて協力を依頼しておくのも有効です。

日頃から税務や財務の業務に直接・間接的に関りがある方は、粉飾決算は認めない・させないという強い決意の下、関係書類のチェックを図る必要があります。

まとめ

粉飾決算について、その概要や見抜き方、注意点など詳しく解説しました。

粉飾決算は、それに関わった会社や個人が民事・刑事の両面から厳しく責任を問われるだけでなく、行政処分や会社の規模によっては上場廃止処分が課される極めて悪質な行為です。

さらに粉飾決算を起こした会社は、社会的信用を失い、今後の営業活動を行うことや資金繰りの確保が極めて困難になってきます。

粉飾決算による影響というのは、当事者は元より利害関係者にも極めて深刻なので、取引の相手方が粉飾決算していないか慎重に確認して取引を進めるとともに、自社も絶対に粉飾決算しないという強い意思の下、万全の態勢で事業を行う必要があります。

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