バーチャル口座とは?仕組みやメリット・デメリット、活用例を解説

バーチャル口座とは?仕組みやメリット・デメリット、活用例を解説

バーチャル口座とは、顧客や取引先ごとに専用の振込番号を割り当てる仕組みであり、入金管理を効率化できる注目のサービスです。本記事では、バーチャル口座の基本的な仕組みから活用方法、メリットとデメリット、さらに効果を発揮しやすい業種を解説します。

目次

バーチャル口座とは

バーチャル口座とは、法人や個人事業主が開設した口座に紐づけて発行される、振込入金専用の口座番号のことを指します。取引先や顧客ごと、あるいは注文ごとに異なる番号を割り当てることで、振込の入金元を明確に判別できる仕組みです。

たとえば、Aさんに「001番」の口座番号を割り当てておけば、Aさんの家族であるBさん名義から入金があった場合でも、「001番のAさん」からの振込であると識別されます。これにより、家族名義や同姓同名の顧客による振込、あるいは複数回にわたり不定期に行われる取引先からの入金であっても、請求(注文)情報と入金情報の照合作業を効率的に進めることができるのです。

ただし、バーチャル口座はあくまで通常の口座に紐づけて発行されるものであり、振り込まれた金額はすべて元の口座に集約されます。このように「実態のある口座」に付随する「仮想の口座番号」であることが、「バーチャル口座」の由来になっています。

バーチャル口座の活用方法

バーチャル口座は、入金の照合作業を効率化するために、さまざまな割り当て方で利用できます。ここでは代表的な方法として「契約ごと」と「顧客ごと」の二つを紹介します。

契約ごとに割り当てる方法

契約や注文の単位ごとに、専用のバーチャル口座番号を発行して割り当てる方法です。

不特定多数の顧客が利用するサービスや、一件ごとに入金管理が必要となるビジネスに適しています。注文ごとに番号が区切られるため、入金情報と請求情報の照合が容易になります。

顧客ごとに割り当てる方法

顧客ごとに専用のバーチャル口座番号を割り当てる方法です。

特定の顧客と継続的に取引を行うサービスに向いています。たとえば、税理士事務所の法人顧問契約のように長期的な取引に利用することで、顧客単位での入金管理をスムーズに行うことができます。

バーチャル口座を利用する手順

それでは、バーチャル口座を利用する際のおおまかな流れを確認していきましょう。

バーチャル口座の基本的な利用手順

以下、バーチャル口座の基本的な利用の流れとなります。

手順1:口座番号の貸与を受ける
金融機関に申し込み、バーチャル口座番号の貸与を受けます。

手順2:バーチャル口座番号を通知する
割り当てた口座番号を請求書などに記載し、顧客に通知します。

手順3:顧客がバーチャル口座に入金する
顧客が通知されたバーチャル口座に振り込みます。振込方法は通常の口座と同じで、ATM・インターネットバンキング・金融機関窓口などから利用できます。入金された金額は紐づけられた銀行口座に振り替えられます。

手順4:入金通知を受ける
金融機関から、バーチャル口座番号を含む入金明細を受け取ります。

手順5:入金確認を行う
受け取った入金明細を請求情報と突き合わせます。目視でも可能ですが、両方のデータを連携させることで、消込作業を大幅に効率化できます。

他のシステムと連携済みのサービスも

バーチャル口座を提供するサービスの中には、請求管理や決済代行などと連携し、基本的な作業手順の一部を自動化できるものがあります。

こうしたサービスを活用する場合、たとえば、口座番号の貸与申し込みや顧客への番号割り当て、通知といった作業を自動で進められるケースもあります。

さらには、金融機関・企業・顧客の間でやり取りされる情報を集約できるため、最初から入金明細と請求情報を一元的に管理できる場合もあります。

自社でシステム連携を構築するのが難しい場合や、今のシステムを大きく変えてDXを進めたい場合に有効な選択肢となるでしょう。

バーチャル口座のメリット

バーチャル口座を導入することで、入金管理の効率化や顧客対応の改善、さらには社内のデジタル化推進など、幅広い効果が期待できます。ここでは代表的なメリットを見ていきましょう。

入金確認が効率化する

バーチャル口座は、入金された番号から顧客や注文を特定できるため、同姓同名の顧客や家族名義からの振込であっても、正確な照合と消込を行うことができます。入金明細と請求データを連携させれば作業効率はさらに高まり、ヒューマンエラーを防ぎながら経理担当者の負担を軽減できます。

顧客サービスが向上する

入金額の誤りや未入金を早期に把握できるため、督促や訂正依頼を迅速に行えます。柔軟に入金間違いを判定できる仕組みが整うことで、トラブル対応のスピードも高まります。さらに、入金確認が早まることで、商品発送やサービス提供をすぐに開始でき、結果的に顧客満足度の向上にもつながります。

社内のDXにも役立つ

バーチャル口座の導入は、単なる入金管理の効率化にとどまりません。請求管理や入金管理のシステムと連携させることで、経理業務を大幅に省力化させ、社内の業務全体をデジタル化・自動化する一歩となるでしょう。

バーチャル口座のデメリット

便利な仕組みである一方、バーチャル口座には留意すべき点もあります。導入を検討する際には、メリットだけでなくデメリットも把握しておくことが大切です。

導入や運用にコストがかかる

バーチャル口座の導入には、初期費用や月額使用料がかかります。

こうした費用が継続的に発生するため、取引規模によっては採算が取れないリスクがあります。

顧客にも手数料負担が生じる

バーチャル口座への振り込みでは、顧客側に振込手数料が発生することが一般的です。そのため、少額の取引では、顧客にとって負担感につながる可能性があります。

入金方法が限定される

バーチャル口座への入金方法は、基本的に銀行振込と同じです。顧客はATM、インターネットバンキング、銀行窓口といった従来の方法で振込を行う必要があります。

バーチャル口座を活用しやすいビジネス

バーチャル口座が特に効果を発揮するのは、顧客や取引先が多いビジネスや、定期的な入金があるビジネスです。こうした業種は入金件数が多く、消込作業の負担も大きいため、バーチャル口座を導入することで得られる効果が大きくなります。

以下に、代表的な例を紹介します。

ECサイト・インターネットショップ

ECサイトやインターネットショップでは、不特定多数の顧客から日々多くの注文が入ります。しかも、商品金額が同じになるケースが多かったり、同姓同名の顧客が重なったりすることで、入金管理は煩雑になりがちです。バーチャル口座を導入し、注文ごとに専用の口座番号を割り当てれば、こうした煩雑な取引があっても、入金消込の作業を効率的かつ正確に進められます。さらに、クレジットカードを持たない高齢者や若年層に「口座振込」という選択肢を提示できる点でも相性が良いといえます。

不動産管理業

不動産管理業では、賃貸物件ごとや入居者ごとに毎月の家賃入金を確認し、一定の期日までにオーナーへ送金する必要があります。そのため、迅速で正確な入金管理は非常に重要です。バーチャル口座を導入し、入居者ごとに専用の口座番号を割り当てれば、入金確認と消込を効率化でき、家賃滞納者への対応スピードも高まります。

企業間の受発注が多い企業

企業間取引での請求金額の誤りや二重請求は、取引相手としての信用問題につながります。特に受発注が多い業種では、売掛金管理や入金の消込が煩雑になり、ミスも起こりやすくなるでしょう。そこでバーチャル口座を導入し、取引先ごとに専用の口座を割り当てれば、入金の識別が容易になり、経理業務の効率化に加えて請求ミスや請求漏れの防止につながります。

まとめ

本記事では、バーチャル口座の仕組みや活用方法、利用手順、メリットとデメリット、さらに活用しやすい業種について解説しました。

バーチャル口座は、入金管理の効率化をはじめ、顧客サービスの向上や社内のDXに役立つ一方で、導入や運用に一定のコストがかかる点や、入金方法が銀行振込に限られるといった留意点もあります。導入を検討する際には、企業の取引形態や顧客層を踏まえ、費用対効果を見極めることが重要です。

入金件数が多い業種や定期的な入金があるビジネス、そしてクレジットカード以外の決済方法が求められるビジネス(若年者や高齢者を対象としたビジネス)では特に有効であり、うまく活用することで経理業務の効率化と取引の信頼性向上につながるでしょう。

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