東京都のタクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金について解説

タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金は、東京都と(公財)東京観光財団が、都内のタクシー事業者を対象に多言語対応及び決済に活用できるタブレット端末等の導入を支援するための事業です。
この補助金制度の狙いと、申請方法について解説します。
目次
- 外国人観光客がタクシーを利用する際の課題
- タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金とは
- タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金のQ&A
- タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金で注意したい点
- タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金を利用する際の流れ
- タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金の申請期限
- まとめ
外国人観光客がタクシーを利用する際の課題

外国人観光客は、タクシーで移動することも多いですが、その際の課題は2つあります。
- タクシーの運転手とのコミュニケーション
- タクシー料金の支払い方法
それぞれどのような課題なのか解説します。
タクシーの運転手とのコミュニケーション
外国人観光客がタクシーに乗車する際にネックとなるのが、タクシーの運転手とのコミュニケーションです。
外国人が日本語を話せるとは限りませんし、日本語を話せない人にとっては、行き先を告げるのも一苦労です。また、タクシー運転手の方も、英語でのコミュニケーションをとれるとは限りません。
そのため、車内設置のタブレットによる通訳アプリのニーズがあります。
タクシー料金の支払い方法
タクシー料金の支払い方法は、様々な方法が用いられるようになっていますが、依然として、日本円現金が多いのが現状です。ただ、世界的には、タクシーの利用で現金で支払うケースが減っていることから、外国人観光客にとっては、タクシー料金の支払いで手間取ってしまうこともあるようです。
タクシー会社側の現状の対応
東京都の平成30年度 タクシー事業者多言語等対応調査結果報告書によると、タクシー会社の多言語対応状況については、対応はしていない会社や指差し外国語シートを導入しているという会社が多いことが分かっています。多言語対応のためには、コールセンターと並んでタブレットの導入が有効と感じている会社が多いです。
また、タクシー料金の支払い方法については、日本円の現金、磁気のクレジットカードが多くなっています。新たに追加すべき決済手段として、交通系ICカード、ICのクレジットカードなどを挙げる会社が多いです。
外国人観光客がタクシーの運転手とコミュニケーションする手段
東京都の平成30年度 タクシー事業者多言語等対応調査結果報告書によると、外国人観光客がタクシーの運転手とコミュニケーションする手段として、次のようなものが方法が挙げられています。
コミュニケーション手段 | 割合 |
英語で伝えた | 46.9% |
日本語の地名、単語を伝えた | 39.8% |
日本語で伝えた | 34.9% |
自分のスマホなどの翻訳・通訳アプリを使った | 28.2% |
本や紙を指図した | 14.8% |
日本語や英語で伝えるという外国人が多い一方で、自分のスマホなどの翻訳・通訳アプリを使っているケースも一定数存在しています。
こうしたことから、タクシー車内のタブレットに翻訳・通訳アプリがあると便利と感じている外国人観光客も多いようです。
外国人観光客のタクシー料金支払い方法
東京都の平成30年度 タクシー事業者多言語等対応調査結果報告書によると、外国人観光客のタクシー料金支払い方法は、次のようになっています。
支払い種別 | 割合 |
日本円現金 | 67.5% |
クレジットカード | 20.5% |
また、タクシー料金支払い方法としてあると便利と考えている支払い方法は次のとおりでした。
希望する支払い方法 | 割合 |
Apple Pay | 31.6% |
WeChat PayやAlipay等(バーコード方式) | 28.3% |
Google Pay | 27.1% |
Visa Touch | 25.0% |
このようにスマートフォンでの決済手段のニーズがあることが分かります。
タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金とは
上記までに見た通り、外国人観光客のタクシー利用では、多言語機能と多彩な決済手段を備えたタブレット端末の需要があります。
そこで、東京都と(公財)東京観光財団が、都内タクシー事業者が多言語対応及び決済に活用できるタブレット端末等の導入を進められるように補助金を支給する形で支援を行っています。
補助金の対象となる事業者
補助金の対象となる事業者は、東京都内で事業を営むタクシー事業者です。専門的には、道路運送法第3条第1号ハに規定する一般乗用旅客自動車運送事業者が対象となります。
一般乗用旅客自動車運送事業者としての「営業区域」が東京都内となっていることがポイントです。
補助金の対象となるタブレット
東京都内で事業を営むタクシー事業者が対象となる車両に一定と要件を満たしたタブレットを導入した際に補助金を受けられます。
タブレットは、次の要件をすべて満たすことが求められます。
- タクシードライバーと利用者が、多言語により行き先や運賃の支払方法等に係るコミュニケーションを図ることができる機能を有するもの
- 日本語と、英語・中国語・韓国語を含む3言語以上の翻訳が可能であるもの
- 音声又はテキスト表示により、コミュニケーションが可能であるもの
- 運賃の支払について、キャッシュレス対応の決済機能を有するもの
これらの機能は、タブレット単体で満たす必要はなく、その他の機器との組み合わせで要件を満たしている場合でも補助の対象になります。
なお、タブレット(液晶ディスプレー)の大きさは特に要件はありません。
補助金の対象となる車両
上記の要件を満たしたタブレットを次のいずれかの車両に搭載する場合に補助金を受けられます。これらの車両は、現に使用しているものの他、発注している車両も含めることができます。
- 標準仕様ユニバーサルデザインタクシー車両
- 東京観光タクシー認定ドライバーが主として乗車する車両
- 東京都地域通訳案内士が主として乗車する車両
- 全国通訳案内士が主として乗車する車両
- ホスピタリティタクシー乗務員が主として乗車する車両
なお、自動車検査証記録事項の「使用の本拠の位置」が東京都内になっていることが要件とされています。
補助金の補助率と上限
補助金の補助率と上限は次のようになっています。
補助率 | 上限 | |
法人 | 補助対象経費の1/2 | 交付申請する補助対象車両台数×5万円 |
個人 | 補助対象経費の9/10 | 9万円 |
また、補助対象車両の数にも上限があります。
- 東京観光タクシー認定ドライバーが主として乗車する車両
- 東京都地域通訳案内士が主として乗車する車両
- 全国通訳案内士が主として乗車する車両
- ホスピタリティタクシー乗務員が主として乗車する車両
これらの4種類の車両は、「認定を受けているタクシードライバーの人数×0.4」が上限車両台数となります。
補助対象経費
補助対象となる経費は次の2つです。
- 多言語及び決済機能を有するタブレット端末等の新規導入に係る経費
- タブレット端末等を車両に設置するために必要な器具購入費及び工賃
なお、タブレット端末を購入した場合の他、リースの場合でも補助の対象となります。リースの場合は、初期導入経費のみが補助の対象となり、定期的なリース料等の経常的経費は補助の対象外とされています。
タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金のQ&A

タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金に関してよくある疑問点をまとめておきます。
既にタブレット端末を導入している場合は補助の対象にならない?
既にタブレット端末を導入している場合でも、そのタブレット端末が4つの要件を満たしていないものであれば、補助の対象になります。
例えば、古いタブレット端末を入れ替えて、新しいタブレット端末で4つの要件を満たした場合です。
英語・中国語・韓国語を含む3言語の翻訳ができればよいのか?
英語・中国語・韓国語を含む3言語が最低の条件とされています。もちろん、それ以外の言語に対応している場合でも補助の対象になります。
なお、中国語は、簡体字、繁体字のどちらでもよいとされています。
キャッシュレス対応の決済機能とは?
キャッシュレス対応の決済機能とは、タッチ決済、QRコード決済の2つに対応しているという意味になります。タッチ決済、QRコード決済以外にも、IC対応クレジットカード対応の決済機能が備わっている場合も、補助の対象となります。
補助対象車両は所有しているものに限られるのか?
補助対象車両は所有しているものに限られません。
タクシー事業者が「使用」する車両であればよいとされているので、所有している場合だけでなく、リースしている場合でも、補助を受けられます。
タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金で注意したい点
タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金は、補助対象経費の算定期間に注意が必要です。補助金の交付決定後に、タブレット端末等の新規導入に係る契約、導入、支払いをした分が補助対象経費となります。
交付決定前の契約、導入、支払いは補助対象外なので注意しましょう。
タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金を利用する際の流れ
タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金を利用する際の流れは次のとおりです。
- タクシー事業者がタブレット端末等の販売業者から見積書を取得する。
- タクシー事業者が補助金交付申請書を作成して、東京観光財団に提出する。
- 東京観光財団が審査を行い補助金の交付決定通知をタクシー事業者に送付する。
- タクシー事業者が販売業者と契約、代金の支払いを行い、タブレット端末等を導入する。
- タクシー事業者が実績報告書を作成し、東京観光財団に提出する。
- 東京観光財団が検査を行い補助金額確定通知をタクシー事業者に送付する。
- タクシー事業者が補助金請求書を東京観光財団に提出する。
- 東京観光財団からタクシー事業者に補助金が支払われる。
ポイントは、東京観光財団から補助金の交付決定通知を受け取ってから、タブレット端末販売業者と契約、代金の支払いを行い、タブレット端末等を導入する点です。
補助金は、その実績報告書を提出した後で支給されます。
タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金の申請期限
タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金の申請期限は、令和8年3月31日(火)までです。
より詳しい案内は、東京観光財団のサイトでご確認ください。
参考:タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金 | 東京観光財団
まとめ
タクシー事業者向け多言語対応端末等導入補助金は、インバウンド観光客を乗せる東京都内のタクシー事業者が、多言語対応と多彩な決済手段に対応しているタブレット端末を導入する際に、東京都が補助金を支給する事業です。
補助金の交付決定後に、契約、代金の支払、タブレット端末等を導入した場合のみ、補助の対象となるので、タイミングを間違えないように注意が必要です。クライアントに東京都内のタクシー事業者がいる税理士の方は、この補助金制度についてよく調べた上で、利用方法について案内しましょう。