税理士業務にRPAを導入するとどうなる?失敗しないためのポイント
「RPAを導入することで、どのような税理士業務が効率化できるのだろう」「RPA導入に失敗しないためには、どうしたらよいのだろう」と、悩んでいないでしょうか。
RPAを導入することで、エクセルから会計ソフトへの転記や、会計データから勘定科目内訳書への転記などの業務の効率が可能です。
この記事では、税理士業務のRPAについて解説します。導入するメリットやデメリット、導入に失敗しないためのポイントについても分かる内容になっています。
目次
RPA導入によって効率化が期待できる税理士業務
RPAは、「ロボティック・プロセス・オートメーション」の略で、人が手作業で行う単純なパソコン操作などをソフトウェアロボットが代行する技術です。具体的には、以下の税理士業務の効率化が期待できます。
- エクセルから会計ソフトへの転記
- 会計データから勘定科目内訳書への転記
- 会計データから申告書への転記
ここでは、RPA導入によって効率化が期待できる税理士業務について解説します。
エクセルから会計ソフトへの転記
税理士業務では、顧客から受け取ったエクセルデータなどを会計ソフトに入力する作業が発生します。
例えば、請求書や領収書などの情報をエクセルに入力し、会計ソフトに転記する作業です。単純作業ではありますが、件数が多い場合は非常に時間がかかり、入力ミスも起こりやすいです。
しかし、RPAを導入すれば、エクセルデータの読み込みから会計ソフトへの入力までを自動化できます。作業時間を大幅に短縮し、入力ミスのリスクも軽減できます。また、RPAは24時間稼働できるため、夜間や休日に処理を実行することも可能です。
会計データから勘定科目内訳書への転記
勘定科目内訳書の作成は、税務申告において必要となる重要な書類ですが、会計データから必要な情報を抽出し、所定のフォーマットに転記する作業は非常に手間がかかります。取引先や内容などが増えると転記ミスにも繋がります。
RPAを導入すれば、会計データから必要な情報を自動的に抽出し、勘定科目内訳書に転記する作業を自動化可能です。作業時間を大幅に短縮し、転記ミスを防止できます。
また、RPAは一度設定すれば、同じ作業を繰り返し実行できるため、一度作成したルールを他の顧客にも応用できます。
会計データから申告書への転記
税務申告書の作成は、税理士業務の中でも特に重要な作業です。会計データから必要な情報の抽出が必要ですが、転記ミスがあると税金計算に重大な影響を及ぼす恐れがあります。
RPAを導入すれば、会計データから必要な情報を自動的に抽出し、申告書に転記する作業を自動化できます。手作業による転機ミスの防止、RPAによる作業時間が短縮されるため、作成された申告書のチェックに時間を費やすことが可能です。
税理士業務にRPAを導入するメリット
税理士業務にRPAを導入するメリットは、以下が挙げられます。
- 手作業によるミスの防止
- 手作業による時間と労力の削減
- 人件費の削減
- 業務効率化による顧客対応スピードの向上
- 勤務時間外に仕事が進行
ここでは、税理士業務にRPAを導入するメリットについて解説します。
手作業によるミスの防止
RPAの導入により、入力ミスや転記ミスなどのヒューマンエラーを削減し、業務の精度向上が期待できます。例えば、転記ミスや計算ミスです。
RPAを活用すれば、転な転記などの作業を正確かつスピーディーに処理することができ、ミスの発生リスクを最小限に抑えることができます。
手作業による時間と労力の削減
これまで多くの時間と労力を費やしていたルーティンワークをRPAに任せることで、業務効率を大幅に向上できます。例えば、毎月の請求書処理や給与計算などです。
これらの作業をRPAに任せることで、税理士はより高度な業務や顧客対応に集中できます。
人件費の削減
RPAに作業を代行させることで、従業員の人件費を削減できます。特に、近年の人手不足の状況下においては、RPAの導入は有効な解決策の一つと言えるでしょう。
業務効率化による顧客対応スピードの向上
RPAによって業務効率が向上することで、顧客からの問い合わせや依頼に対して、より迅速に対応できます。例えば、顧客から税務相談を受けた際に、必要な情報をRPAが自動的に収集することで、対応時間の短縮が可能です。結果、顧客満足度の向上にも繋がるでしょう。
勤務時間外に仕事が進行
RPAは、設定されたスケジュールに従って自動的に業務を実行するため、勤務時間外や夜間でも業務を進行できます。例えば、日中の業務時間中に処理できなかったデータ入力や集計作業などです。
RPAに任せることで、翌朝には処理が完了している状態になります。業務の効率化だけでなく、従業員の負担も軽減され、ワークライフバランスの向上にも繋がります。
税理士業務にRPAを導入するデメリット
RPAは税理士業務の効率化が期待できますが、導入前にしっかりと理解しておきたいデメリットも存在します。ここでは、RPA導入によるデメリットを解説します。
初期費用と維持費用がかかる
RPAの導入には、初期費用としてソフトウェアの購入費用や導入支援費用、従業員への研修費用などが発生します。さらに、導入後もシステムのアップデートや保守費用、ライセンス費用などの維持費用が継続的に発生します。
これらの費用は、事務所の規模や導入するRPAの種類によって大きく変動するため、導入前にしっかりと見積もりを行い、予算と照らし合わせた検討がた大切です。
例えば、小規模な税理士事務所がRPAを導入する場合、初期費用として数十万円、維持費用として年間数万円から数十万円程度かかることがあります。また、大規模な事務所や複雑な業務を自動化する場合、初期費用は数百万円、維持費用も年間数百万円になる可能性があります。予算に限りがある場合は、費用対効果を慎重に見極めましょう。
システム変更時への対応が必要
税理士業務で利用するシステムやソフトウェアは、法改正や業務内容の変化などによってアップデートされることがあります。RPAはこれらのシステムと連携して動作するため、システムに変更が生じた場合、RPAの設定変更や再構築が必要になることがあります。
例えば、会計ソフトがバージョンアップされた場合、RPAが正常に動作しなくなるかもしれません。RPAの設定の見直しや、RPA自体を作り直す可能性もあります。
変更時への対応は時間と費用がかかるだけでなく、業務の効率化を一時的に妨げる可能性があるため注意しましょう。
業務の属人化が懸念
RPAは特定の業務を自動化するため、RPAの設定や運用に詳しい従業員に業務が集中する傾向です。
例えば、ある従業員が作成したRPAが他の従業員には理解できない複雑な設定になっている場合、その従業員が不在になると、RPAの運用が滞ったり、トラブルが発生したりする恐れがあります。
RPAの設定や運用を、特定の従業員に集中することは避けた方がいいでしょう。
不正アクセスや情報漏洩のリスク
RPAは機密情報を含むシステムを操作するため、不正アクセスや情報漏洩のリスクがあります。RPAの設定ミスや脆弱性を悪用したサイバー攻撃により、顧客情報や財務情報などの重要な情報が漏洩するかもしれません。
情報漏洩は、事務所の信頼を失墜させるだけでなく、法的責任を問われる可能性もあるため注意が必要です。
過度な依存は従業員のスキルが低下
RPAに依存すると、RPAが対応できない業務や、RPAがエラーを起こした場合に対応できない可能性があります。
例えば申告書の作成です。申告書の作成に必要な会計データが分からない場合、RPAによって作成された申告書が間違っていても気づかない恐れがあります。
RPA導入に失敗しないためのポイント
RPA導入は成功だけでなく、導入に失敗してしまうケースも少なくありません。ここでは、RPA導入に失敗しないためのポイントを解説します。
RPA導入の目的を設定
RPA導入を成功させるためには、まず明確な目的設定が重要です。目的が不明なまま導入を進めてしまうと、期待した効果が得られず、導入自体が無駄になってしまう可能性があります。
例えば、「残業時間を削減したい」「人為的なミスを減らしたい」「コストを削減したい」など、具体的な目標を設定しましょう。目標を設定することで、導入するRPAの機能や規模を適切に判断することができます。また、導入後の効果測定もしやすくなります。
小規模な業務から徐々に導入
小規模な業務から始めることで、RPAの運用方法や効果を検証し、問題点を早期に発見すできます。
例えば、毎日同じように繰り返される単純なデータ入力作業や、複数のシステム間でのデータ転記作業など、比較的簡単な業務からRPAを導入してみましょう。小さな成功体験を積み重ねることで、RPA導入に対する社内の理解と協力を得やすくなります。
導入効果が高い業務から導入
導入効果が高い業務とは、繰り返し作業が多く、人為的なミスが発生しやすい業務や、時間と手間がかかる業務などです。
例えば、請求書処理や経費精算処理、顧客情報管理など、多くの企業で共通して発生する業務です。導入効果が高い業務からRPAを導入することで、早期に投資対効果の実感ができます。
セキュリティ対策の検討
RPAは機密情報を含むデータを扱う場合もあるため、適切なセキュリティ対策を講じなければ、情報漏えいなどのリスクが高まります。特に税理士業務は、企業にとって重要な情報を扱うため注意しましょう。
例えば、RPAがアクセスできるデータやシステムを制限したり、RPAの操作ログを記録したりするなどの対策が必要です。また、RPAを導入する際には、セキュリティに関する社内規定やガイドラインを遵守することも大切です。
現場の意見や意見や要望を聞く
RPAは、現場の業務を効率化するためのツールです。しかし、現場の意見を無視して導入を進めてしまうと、現場のニーズに合わないシステムになってしまい、導入効果が得られない可能性があります。
現場の意見や要望を聞くためには、定期的なミーティングやアンケート調査などの実施が有効です。また、RPA導入担当者と現場担当者が密にコミュニケーションを取り、協力して導入を進めるといいでしょう。
税理士業務のRPAに関するまとめ
税理士業務にRPAを導入するメリットは、ミスの防止、時間と労力の削減、人件費削減、顧客対応スピード向上、勤務時間外での業務進行などが挙げられます。RPAを導入することで業務が効率化され、税理士は顧客対応などの業務に集中できます。
RPA導入を成功させるためには、目的設定、小規模または効果の高い業務からの導入、セキュリティ対策、現場の声の把握が重要です。明確な目的を持ち、現場と連携することで、RPAのメリットを最大限に活かすことができます
税理士.ch 編集部
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