チケットを払い戻さずアーティストを応援(チケット寄附税制)
前川秀和税理士事務所 税理士
2021/7/18
寄附して節税!払い戻ししなかったチケット代が節税になる
新型コロナウィルス感染症に関する政府からの自粛要請を受け、多くの文化芸術・スポーツイベントが中止となりました。
これらイベントのチケットを購入したにもかかわらず、払い戻しを受けなかった方は、そのチケット代相当額を寄附したものとして、税金計算上の優遇措置を受けら れる可能性があります。
この優遇措置を説明するならば、「新型コロナウイルス感染症の影響により中止等された文化芸術・スポーツイベントに係る入場料等の払戻請求権を放棄した参加者 への寄附金控除」と書かなければならないところですが、以下「チケット寄附税制」と呼ぶことにします。
払い戻し後でも大丈夫 !
「そんなこと知らなかったから、もうチケット払い戻しちゃった・・・」
そんなすでに払い戻してしまった方でも、寄附して節税ができる可能性は残されています。
イベント主催者に連絡し、払い戻したチケット代を寄附したいことを伝え、実際に寄附をすれば、チケット寄附税制の対象となります。
対象となるイベントと は?
どのイベントでも、「チケット寄附税制」の対象となるわけではありません。
主催者が中止になったイベントを国に申請し、指定される必要があります。
イベントが対象となっているかどうかの確認方法としては、文化庁・スポーツ庁のウェブサイトで指定イベントの一覧を確認するか、もしくは、イベント主催者の公 式ウェブサイト等を確認するか、そのどちらかとなります。
まずは、イベント主催者の公式ウェブサイトをチェックしていただくのが手っ取り早いかなと思います。
(文化庁『チケットを払い戻さず「寄附」することにより, 税優遇を受けられる制度』)
(スポーツ庁『チケットの払戻請求権の放棄を寄附金控除の対 象とする税制改正』)
チケット寄附税制の適 用を受けるために必要な「確定申告」
会社員の方であれば、会社において年末調整をしているので、特別な事情がない限り、確定申告をする必要はありません。
しかし、今回は「チケット寄附税制の適用を受ける」という特別な事情があります。
この制度の適用を受け、税金を安くするために、確定申告という手続きが必要です。
確定申告とは?
一般的に「確定申告」と言えば、個人にかかる所得税の申告のことを指します。
1月1日から12月31日までの1年間にかかる所得税の金額を計算し、国へ報告する手続きです。
確定申告書という書類を作成し、税務署に提出、そして所得税という名の税金を支払う一連の手続きが確定申告となります。
ちなみに、今回のチケット寄附税制に関する確定申告については、所得税を支払うのではなく、払い過ぎている税金を戻してもらう(税金を還付してもらう)といっ た内容の申告となります。
確定申告をしよう!
前回は、「チケット寄附税制という制度があって、チケット代の払い戻しをしなかった方には税金の優遇措置がありますよ」という概要についてみていきました。
今回は、具体的な手順についてです。
チケット優遇制度の適用を受けるためには、確定申告という手続きが必要なことは前回みてきたとおりです。
ではその確定申告の第一段階として、まずはそろえる必要がある書類を確認しましょう。
確定申告に必要な書類 (※所得が給与のみの方の確定申告を前提としております)
・源泉徴収票
・指定行事証明書
・払戻請求権放棄証明書
・マイナンバーカードや本人確認書類(申告書を税務署に直接提出する場合などに必要)
税金が戻ってくる「還付申告」となるため、本人名義の預金口座の情報も必要です。通帳もお手元にご準備を。
「指定行事証明書」と 「払戻請求権放棄証明書」はイベント主催者に請求する
チケット寄附税制の申請に必要な「指定行事証明書」と「払戻請求権放棄証明書」は、イベント主催者からもらう必要があります。
イベント主催者にチケット代の払い戻しを受けないことを連絡すると、「指定行事証明書」と「払戻請求権放棄証明書」の2種類の証明書が届きます。
チケット原本が必要となることもあるので、チケットは保管しておきましょう。
確定申告書を作成し、 税務署に提出しよう
作った確定申告書は最寄りの税務署に提出します。
自分の住所がどの税務署の管轄かは、国税庁のウェブサイトで確認しましょう。
提出方法は、
1,税務署に直接提出
2,e-Tax(電子申告)
3,税務署に郵送
の3つの方法があります。
どの方法で提出するにせよ、「国税庁 確定申告書等作成コーナー」で確定申告書を作成す るのがおすすめです。
確定申告書の提出期限は3月15日ですが、税金が戻ってくる還付申告については、5年以内に申告すればOKです。
(ちなみに、2020年(令和2年)分の還付申告の期限は、2025年(令和7年)12月31日です)
税金はいくら安くなるの?
チケット寄附税制の適用を受けることで、どのくらい税金が戻ってくるのでしょうか?
最大で、
・(チケット代−2,000円)×40%
の所得税が戻ってきます。
(※税額控除方式の場合。所得控除方式の選択も可能ですが、税額控除方式の方が有利な場合がほとんどです)
また、住民税についても「(チケット代−2,000円)×10%」の減税がある場合があります。対象となっているかどうかは、お住いの地方自治体に確認してみましょう。ウェブ検索で引っかかるはずです。
住民税のチケット寄附税制の申請については、確定申告をすればそれでOK、別途申請等は不要です。
例えば、10,000円のチケット代の寄附であれば、最大で、
・(10,000円−2,000円)×40%(所得税分)+(10,000円−2,000円)×10%(住民税分)=4,000円
が減税となる可能性があります。
ただし、限度額があります。
年間で合計20万円までのチケット代が上限で、それを超える分のチケット代については、チケット寄附税制の適用は受けられません。
最後に
最後に、チケット寄附税制について簡単にまとめて終わりにしたいと思います。
まとめ
・中止されたすべてのイベントが対象となるわけではない(主催者が中止になっ たイベントを国に申請し、指定される必要がある)
・チケット寄附税制による減税の対象となるのは「個人」で、所得税と住民税にて税優遇を受けられる(寄附金控除)
・申請には確定申告書の提出が必要
・イベント主催者に連絡し、「指定行事証明書」と「払戻請求権放棄証明書」を送ってもらう必要あり