団体経由産業保健活動推進助成金とは?令和6年度の申請について、内容や申請方法、活用事例についてわかりやすく解説
5月2日より、令和6年度の団体経由産業保健活動推進助成金の受付が開始されました。団体経由産業保健活動推進助成金とは、事業主団体等を通じて、中小企業等の産業保健活動の支援を行う助成金制度です。
本記事では、団体経由産業保健活動推進助成金について内容や注意点、活用事例についてわかりやすく解説していきます。従業員の健康管理に課題を抱える事業者をご担当の税理士・会計士の方は、活用方法についてぜひ本記事をご参考ください。
目次
団体経由産業保健活動推進助成金の概要
団体経由産業保健活動推進助成金は、厚生労働省の産業保健活動総合支援事業の一環として行われている助成金事業です。事業主団体等への助成を通じて、中小企業等の産業保健サービスを向上させることを目的としています。
事業主団体等が傘下の中小企業等に対して、医師等による健康診断結果の意見聴取やストレスチェック後の職場環境改善支援等の産業保健サービスを提供する費用・事務の一部を委託する費用の90%が助成されます(原則、1団体につき年度ごとに1回限り)。
助成のしくみ
中小企業や事業主団体等が助成金を申請し・支給されることにより、その傘下の中小企業等が産業保健サービスを提供する事業者と契約し、産業保健サービスを提供した際、その費用の一部が助成されます(下記図参照)。
対象となる産業保健サービス等
産業保健サービスで助成対象となるのは以下の7つです。このほか、事務の一部を委託する費用も対象となります。
- 医師、⻭科医師による健康診断結果の意⾒聴取
- 助成対象例
事業主団体等が地域の産業医と契約し、傘下企業が産業医に対して健康診断結果に基づく意見聴取を行った場合にかかった費用の助成等 - 注意点
健康診断実施費用については対象外
- 助成対象例
- 医師、保健師による保健指導
- 助成対象例
事業主団体等が地域の産業医、保健師と契約し、傘下企業の労働者に対して健康診断結果に基づく保健指導を行った場合にかかった費用の助成等 - 注意点
健康診断実施費用については対象外
- 助成対象例
- 医師による⾯接指導・意⾒聴取
- 助成対象例
事業主団体等が地域の産業医と契約し、傘下企業の長時間労働者や高ストレス者への面接指導を行った場合にかかった費用の助成等 - 注意点
ストレスチェックや集団分析については対象外
- 助成対象例
- 医師、保健師、看護師等による健康相談対応
- 助成対象例
事業主団体がEAP提供機関と契約し、24時間利用可能なメンタルヘルス相談体制を整備した場合にかかった費用を助成する、また事業主団体が保健師と契約し、傘下企業の労働者に対して、健康診断の機会に併せて行う健康相談対応を実施した場合にかかった費用の助成等 - 注意点
医師、保健師、看護師の他、歯科医師、精神保健福祉士、公認心理師、産業カウンセラー、臨床心理士などの産業保健の専門家による対応を想定
- 助成対象例
- 医師、保健師、看護師、社会保険労務⼠、両⽴⽀援コーディネーター等による治療と仕事の両⽴⽀援
- 助成対象例(治療と仕事の両立支援が必要な労働者に対する各種支援)
産業医による復職判定や、産業医による「職場復帰支援プラン」の策定等にかかった費用の助成等 - 助成対象例(事業者に対する各種支援)
社会保険労務士による、治療のための休暇を取得しやすい制度構築支援(短時間勤務制度や時間単位有給休暇制度等の導入)や、両立支援コーディネーターによる、労働者の病気、通院スケジュールに応じた配慮事項の提案にかかる費用の助成等
- 助成対象例(治療と仕事の両立支援が必要な労働者に対する各種支援)
- 医師、保健師、看護師等による職場環境改善支援
- 助成対象例
事業主団体が産業医と契約し、ストレスチェック後の集団分析結果を踏まえた職場環境改善プランの提案や、事業主団体が心理職と契約し、社内のメンタルヘルス対策についての課題整理、改善のために助言指導を行った場合にかかった費用の助成等
- 助成対象例
- 医師、保健師、看護師等による健康教育研修、事業者と管理者向けの産業保健に関する周知啓発
- 助成対象例
事業主団体が産業医と契約し、傘下企業の労働者向けにメンタルヘルスをテーマとした研修を行った場合や、保険者による事業所カルテやスコアリングレポート等を活用した健康づくりの取組(健康教育研修など)を行った場合の費用の助成等 - 注意点
オンラインによる実施も可能だが、録画動画の配信のみ(一方通行のみ)は対象外。また、研修教材の配布のみであったり医学的根拠が認められない内容だったりした場合についても対象外
- 助成対象例
(参照元:団体経由産業保健活動推進助成金とは)
対象となる産業保健サービス等
- 事業主団体等
事業主団体又は共同事業主であって、中小企業事業主の占める割合が構成事業主等全体の2分の1を超えていること等、
一定の要件を満たす団体等 - 労災保険の特別加入団体
労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)第33条第3号に掲げる者の団体または同条第5号に掲げる者の団体であって、一定の要件を満たす団体
助成金支給の流れ
令和6年度における申請から交付までの手続きは以下の通りです。
手続き内容 | 備考・注意点 | |
1 | 実施計画提出(交付申請) | 締切:令和6年12月27日(金)必着郵送・Googleフォーム・電子申請のいずれかで申請 |
2 | 計画承認 | 1の受付後、原則30日以内 |
3 | サービス提供 | 承認後~令和7年2月21日(金)までに実施 |
4 | 助成金支給申請 | 締切:計画を承認された期間の最終日から起算し、30日後の日または令和7年2月28日(金)のうち、いずれか早い日(必着) |
5 | 助成金の支給 | 令和7年3月31日(月)まで |
問い合わせ先
労働者健康安全機構勤労者医療・産業保健部産業保健業務指導課
電話番号:0570-78-3046
令和5年度からの変更点・注意点
前年度からの大きな変更はありません。しかし、令和5年10月より助成率等が変更となったため注意が必要です。
~令和5年9月 | 令和5年10月~ | |
助成率 | 80% | 90% |
助成上限額 | 100万円 | 500万円(1,000万円※) |
助成対象 | 産業保健サービス | 産業保健サービス+事務費 |
※構成事業主が50以上であること等、一定の要件を満たした団体は1,000万円)
(参照元:【令和5年度10月更新版】団体経由産業保健活動推進助成金のご案内)
また、当該年度の予算上限に達した場合、交付申請締切日よりも前に受付が終了となる場合があるため、サービス提供後は速やかに支給始新世委を行う必要があります。さらに、提出した申請書類に不備・不足がある場合は訂正期限を設定して不備の訂正を求められますが、理由なく訂正期限を超過するなど適切に対応しなかった場合は助成金の支給が取り消されてしまうため注意してください。
団体経由産業保健活動推進助成金の活用事例
ここでは、具体的な団体経由産業保健活動推進助成金の活用事例をご紹介いたします。
事業所の巡回訪問の実施(申請サービス7)
「健康経営ヒアリングシート」により、職場の健康課題等について、企業の経営者や担当者にヒアリングを実施。ヒアリング結果を「健康経営診断報告書」としてまとめて企業に報告し、課題解決方法の提案や事例紹介を実施。健康経営エキスパートアドバイザー等の資格を有する専門家が、事業所を巡回訪問。
健康経営セミナーの実施(申請サービス7)
会員企業の役員・従業員が楽しく、役に立つテーマを選定し研修会を年に3回開催。毎回15名~20名が参加。
ラインケア研修の実施(申請サービス7)
「来場型」と「オンライン型」の同時開催で延べ81人(第1回29人、第2回52人)が参加し、「職場におけるメンタルヘルスの重要性」「メンタルヘルスの知識」「メンタル不調の早期発見と対処法」の研修及び「職場復帰支援・快適な職場づくり」の実例検討を含め実施。
相談窓口の開設(申請サービス4)
メンタルヘルス不調者の早期発見と治療開始を促進することを目的として、公認心理師等の心理専門職と相談できる窓口を開設。
(参照元:団体経由産業保健活動推進助成金 好事例集)
まとめ
いかがでしたか?
本記事では団体経由産業保健活動推進助成金について内容や注意点、活用事例について解説してきました。
団体経由産業保健活動推進助成金を活用したサービス提供することができれば、中小企業や小規模事業者が従業員により良い産業保健サービスを提供できるようになります。産業保健サービスが充実すれば、従業員の健康管理が行き届くことにより業務効率の向上が実現し、さらには従業員本人のQOLの向上を実現することも可能となるのです。
従業員の管理にお悩みの事業者に、本助成金を活用した産業保健サービスを充実させるようお勧めしてみてはいかがでしょうか。本記事が少しでも参考になれば幸いです。
税理士.ch 編集部
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