スポーツ業界の申告漏れの原因とは?経費やスポンサー収入・海外報酬の注意点と対策
スポーツ界では、プロ・アマを問わず多額の資金が動く場面が多く、スポンサー収入や放映権料、賞金、協会からの支給金など、収入の仕組みが複雑になっています。
その一方で、スポーツ団体や選手による申告漏れが報道されるケースも少なくありません。税理士・会計士にとって、スポーツ分野特有のお金の入り方や業界ならではの慣れたやり方を正しく理解し、申告漏れを防ぐサポートを行うことは、今後ますます重要になります。
本記事では、スポーツ分野で申告漏れが発生しやすい背景や原因、実務上どのような点に注意すべきか、防止策について詳しく解説します。
目次
- スポーツと申告漏れが問題視される背景
- スポーツ分野で実際に起こりやすい申告漏れの原因
- 報道されるスポーツ申告漏れ事例と対策
- 税理士・会計士が関与する意味と実務上の注意点
- スポーツ申告漏れを防ぐために専門家ができること
スポーツと申告漏れが問題視される背景

申告漏れが起こりやすい状況になっている原因のひとつは、スポーツ選手の収入の多様化です。最初に、なぜスポーツ分野で申告漏れが起こりやすいのかについて解説します。
収入形態の多様化と税務処理の難しさ
スポーツ分野における申告漏れが社会的に注目されるようになった背景には、競技のプロ化・ビジネス化が急速に進んだことがあります。
これまでは競技団体からの支給金や大会賞金が中心であった収入源が、現在ではスポンサー契約料、肖像権使用料、イベント出演料、海外からの報酬など様々です。
しかし、スポーツ選手やスポーツ団体の収入は、給与所得、事業所得、雑所得、海外源泉所得など、複数の所得区分が混ざっているケースが少なくありません。例えば、団体からの固定報酬は給与所得として処理される一方、個人で契約したスポンサー料やイベント出演料は事業所得や雑所得となる場合があります。
これらを正確に区分し、必要経費を正しく計上して申告するには、専門的な税務の知識が必要になります。税務リテラシーが十分ではないまま自己判断で処理を行うと、結果として申告漏れにつながるリスクが高いです。
業界独自のやり方と税務意識のずれ
スポーツ界には、長年続いてきた独自の慣行や慣れ合いの文化が残っている場合があります。謝礼や協力金といった名目で支払われる金銭が、正式な契約書を伴わずに処理されるケースも珍しくありません。
こうした業界特有の文化は、税務上は課税対象となるにもかかわらず、「慣例だから問題ない」という認識が根強く残り、申告漏れにつながる原因です。
スポーツ分野で実際に起こりやすい申告漏れの原因
スポーツと申告漏れの問題を考えるうえでは、具体的にどのような場面でミスや見落としが発生しやすいのかを把握することが重要です。税理士・会計士が関わる際にも、これらのポイントを事前に理解しておくことで、より的確なアドバイスができるでしょう。
ここでは、実務で注意すべき代表的な原因について解説します。
スポンサー収入・広告収入の計上漏れ
スポンサー契約に基づく収入は、契約内容がさまざまで、申告から漏れやすい分野です。金銭による支払いだけでなく、物品提供やサービス提供といった現物報酬が含まれる場合もあります。これらを金額としてきちんと判断し、課税所得として計上しなければなりません。現物報酬の評価を怠った結果、申告漏れと指摘されるケースもあります。
経費計上の誤りによる過少申告
トレーニング費用や用具購入費、遠征費用など、スポーツに必要な支出は様々です。しかし、私的利用と業務利用の区分が曖昧なまま経費計上を行うと、経費として認められない可能性があります。結果として修正申告が必要となり、申告漏れとして扱われることもあるため注意しましょう。
報道されるスポーツ申告漏れ事例と対策

過去には、スポーツ団体や著名選手による申告漏れが報道され、社会的な注目を集めた事例が複数ありました。具体的な団体名や個人名は伏せますが、これらの事例からは、税務管理体制の不備や専門家不在のリスクが分かります。ここでは、代表的なパターンを通じて、実務に生かせる対策を紹介します。
海外遠征・国際大会に伴う所得の申告不足
国際大会への出場や海外リーグへの参加が増える中で、海外で得た賞金や報酬の申告漏れも問題となっています。
外国税額控除の制度を正しく理解していない場合、そもそも申告を忘れたり、二重課税を恐れて申告を避けてしまったりする例もありました。国際的な活動が活発な選手ほど、税務上のリスクが高まる点には注意が必要です。
団体全体の管理体制不足による申告漏れ
あるスポーツ団体では、長年にわたり内部の経理体制が整備されておらず、複数年度にわたる収入の一部が申告されていなかった事例がありました。担当者が頻繁に交代し、引き継ぎが不十分だったことも原因の一つとされています。
このようなケースでは、個々の担当者の問題ではなく、組織としての管理体制が弱かった点が問われる結果となりました。
個人選手の自己判断による申告漏れ
個人選手が税務申告を自己判断で行い、一部を申告していなかった事例もありました。
競技活動に専念するあまり、税務を後回しにしてしまった結果、後日多額の追徴課税を受けることになった可能性もあります。このような事例は、専門家の関与がいかに重要かを示しています。
税理士・会計士が関与する意味と実務上の注意点
スポーツ分野における申告漏れを防止するためには、税理士・会計士が早期から関与し、適切な助言と管理体制の整備をサポートすることが重要です。申告代行だけではなく、クライアントの活動実態を深く理解しなければなりません。
ここでは、実務上特に意識すべきポイントについて解説します。
収入構造の可視化と整理
スポーツ分野における申告漏れを防ぐためには、まず選手や団体の収入を正確に把握し、全体のお金の流れを整理することが重要です。
競技団体からの報酬や賞金だけではなく、スポンサー契約による収入、イベント出演料、肖像権やライセンスに関する対価、海外からの報酬など、収入源は多岐にわたります。
これらを全て把握しないまま申告業務を進めると、特定の収入が漏れた状態で処理されてしまうリスクが高いです。
税理士・会計士は、契約書や支払通知書の確認に加え、ヒアリングを通じて「過去にどのような形で報酬を受け取ったか」「今後発生し得る収入には何があるか」を丁寧に整理する必要があります。そのうえで、各収入が給与所得、事業所得、雑所得など、どの所得区分に該当するのかを明確にし、会計処理と申告方針を統一することが重要です。
税務についての知識とリスクを伝える
スポーツ分野では、競技や活動に集中するあまり、税務に対する意識が後回しになりやすい傾向があります。そのため、一度だけの説明ではなく、税務の基本を繰り返し伝え、意識を高めていくことを行うことが重要です。
税理士・会計士が定期的に時間を設け、どのような収入が課税対象となるのか、経費として認められる範囲はどこまでなのかといった基本を繰り返し伝えることで、クライアントの理解は深まっていきます。
また、税務調査や申告漏れが発覚した際の影響についても具体的に説明することで、税務を「難しいもの」ではなく、「管理すべきリスク」として認識してもらえるでしょう。特に、若手選手や新設のスポーツ団体に対して早い段階から税務意識を持ってもらうことは、将来的なトラブル防止につながります。
契約書・証憑管理の徹底
スポーツ分野における申告漏れを防ぐうえで、契約書や各種書類をきちんと管理することが重要です。スポンサー契約、出演契約、業務委託契約などは口頭や簡易的な合意で進められることも多く、結果として契約内容が曖昧なまま報酬が支払われているケースが少なくありません。
しかし、契約書が存在しない、または内容が不十分な場合、その収入がどの所得区分に該当するのか判断が難しくなり、申告漏れや誤った申告につながるリスクが高まります。
また、請求書や領収書についても、発行主体や取引内容が不明確なまま保存されていると、税務調査時に取引の実態を説明できず、結果として課税対象と判断される可能性があります。
定期的な確認と早期是正
申告漏れの多くは、年度末や確定申告直前になって、大きな修正や追徴課税につながります。これを防ぐためには、定期的な内容の確認を行い、早い段階で課題を把握し是正していく体制が重要です。
特にスポーツ分野では、シーズン中に収入が集中する、突発的なスポンサー契約が発生する、海外遠征による収入が生じるなど、収支の変動が大きい傾向があります。
そのため、年に一度の確認では実態を十分に把握できないケースも多いです。 仮に誤りや不足が見つかった場合でも、早期に修正することで、ペナルティを最小限に抑えることが可能です。
スポーツ申告漏れを防ぐために専門家ができること
スポーツ分野における申告漏れは、収入構造の複雑化や業界特有の慣行など、複数の要因が重なって起こります。しかし、税理士・会計士が早期から関わり、収入の可視化や継続的な助言を行うことで、その多くは防ぐことが可能です。
適切なサポートを通じて、クライアントが競技や活動に専念できる環境を整えることは、「信頼される専門家」としての価値向上につながるでしょう。
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