高市早苗・自民党新総裁が掲げる経済対策をわかりやすく紹介

高市早苗・自民党新総裁が掲げる経済対策をわかりやすく紹介

2025年10月4日、高市早苗氏が自民党の新総裁に就任しました。女性が総裁となるのは1955年の自民党結党以降初めてのことで、順調にいけば臨時国会の首相指名を経て、日本初の女性総理大臣が誕生する見込みです。

高市氏は過去に経済安全保障大臣や自民党経済安全保障対策本部長を歴任しており、物価高や生活不安に直面する国民に向けて、多岐にわたる経済政策を提唱してきました。本記事では、高市氏の記者会見や総裁選での発言をもとに、注目すべき5つの経済対策を整理・解説します。

目次

赤字中小企業や農業への緊急支援

4日の就任関係で最初に高市氏が言及したのは、赤字経営に苦しむ中小企業や農林水産業に対する支援策です。現在の賃上げ税制では黒字企業しか恩恵を受けられないため、赤字の企業が取り残される状況にあることを問題視。これに対し、高市氏は内閣府の地方創生臨時交付金を活用し、地方自治体が柔軟に補助金を出せる仕組みの整備を急ぐとしました。

これにより、地域の実情に応じて「どこにどのような支援が必要か」を見極め、スピーディに対応できる体制を築くことが期待されます。とくに、資材費や燃料費の高騰に苦しむ農業や漁業などへの迅速な対応が念頭に置かれています。

【主なポイント】
・赤字でも努力を続ける中小企業を補助
・地域の実情に合わせて交付金を使う
・農業や漁業の原材料高騰にも個別対応
狙い】全国の現場が持つ多様な課題に、スピーディかつ柔軟に対処すること。

病院・介護施設への補正予算による即時対応

高市氏は、医療や介護の現場が直面する危機的な状況にも強い危機感を示しました。特に、全国の病院の7割以上が赤字となっている現状や、介護施設の倒産件数が過去最多を記録していることに触れ、診療報酬や介護報酬の改定を待たず、補正予算で早急に支援を行う必要性を訴えました。

制度改正には時間がかかることを踏まえ、補正予算による資金の直接投入によって現場の立て直しを図る姿勢は、短期的な安定化を目的とした現実的な対策といえます。医療・福祉の基盤が崩れれば、国民生活に直結する影響が生じるだけに、優先度の高い政策となるでしょう。

【主なポイント】
・診療報酬改定を待てない施設に即支援
・補正予算を活用し資金注入
・地域医療と介護の崩壊防止を最優先
狙い】制度改定のタイムラグを補う、現場密着型の即応策。

燃料価格対策としての暫定税率見直し

ガソリンや軽油といった燃料価格の高騰も、国民生活に直接的な打撃を与えています。高市氏は、ガソリン税や軽油引取税に上乗せされている「暫定税率」の見直しに言及し、必要に応じて法改正を行う意向を示しました。現行法では一定価格以上の高騰時に課税停止となる「トリガー条項」が凍結されていますが、これに代わる新たな対策として、暫定税率の軽減を含む政策を検討しているとのことです。

特に、地方における物流や農業など、燃料コストの影響を受けやすい産業にとって、税率見直しは切実な要望です。法改正までに時間がかかる場合には、当面は補助金の活用でカバーするとしています。

【主なポイント】
・地域交通や物流、農業への影響を軽減
・暫定税率の撤廃・軽減を政策選択肢に
・法改正までの繋ぎとして補助金活用
狙い】エネルギーコストを抑制し、国民生活や流通機能を支える。

低・中所得者層への給付付き税額控除の検討

所得の少ない層に対しては、「給付付き税額控除」という制度の導入を視野に入れていることも、高市氏の発言から明らかになりました。この制度は、一定の所得以下の人に対して、所得税の控除に加えて現金給付を行う仕組みです。社会保険料や消費税といった「逆進性の高い税負担」を和らげる目的もあり、生活の底支えとなる制度として注目されています。

現時点では制度設計の詳細には踏み込んでいませんが、対象の線引きや申請方法の整備など、今後の議論の中で具体化していくと考えられます。中長期的な政策とはいえ、消費者心理に与える影響は大きく、物価高への対応策として国民の関心が高い分野です。

【主なポイント】
・所得に応じた支援で公平性を確保
・制度設計と対象選定は今後の議論へ
・中長期の視点で準備を進行
狙い】弱い立場の国民を底支えし、消費喚起へつなげる制度の整備。

消費税減税を選択肢として保持

消費税については、すぐに減税を行うとは明言していないものの、「選択肢として放棄するものではない」との姿勢を見せました。あくまで「いま対応すべき喫緊の課題」を優先するものの、物価高が家計を圧迫している状況を踏まえ、中長期的な政策オプションの一つとして消費税減税を位置づけるとしています。

税制改正には政治的なハードルもありますが、「必要であれば検討する」スタンスを維持することで、国民に対する心理的な安心感を与える狙いもあると見られます。

【主なポイント】
・現時点では「すぐ対応すべき課題」を優先
・減税は中長期の議論対象として維持
・財源や効果、影響を多角的に検討
狙い】国民の安心感を保ちつつ、政策の柔軟性を残す。

高市経済対策の本質:「即応」と「現場主義」

今回の会見を通じて明らかになったのは、「スピード重視」と「現場目線」の経済政策です。現実の生活困難や企業経営の逼迫に対し、制度変更を待たず補助金や交付金で即対応する姿勢が貫かれています。

一方で、税額控除や消費減税といった中長期の制度設計も視野に入れ、持続可能な財政運営との両立を図ろうとしています。

おわりに

高市早苗新総裁の経済対策は、生活者・企業・地域に対する支援をバランスよく盛り込んだ内容となっています。とりわけ、赤字企業や医療・福祉分野への即時支援、燃料価格の是正など、喫緊の課題に対する対処法を明確に提示した点が特徴です。

中長期的には、税制や所得再分配制度の見直しを進めることで、構造的な課題にも対応していく構えです。今後、これらの政策がどこまで具体化し、実行に移されるかが問われることになります。

参考動画:自民新総裁の高市早苗氏、物価高対策「すぐ対応できることをまず優先」 消費減税は「選択肢として放棄するものではない」(2025年10月4日)

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