【令和8年度税制改正】研究開発税制の見直しについて解説
研究開発税制は、研究開発を行う企業の法人税額について、一定の金額を控除できる制度です。2026年度 (令和8年度) 税制改正では、令和9年4月1日以後に開始する各事業年度以降も3年間延長されることが決まりましたが、細かな変更点があるので確認しておきましょう。
目次
研究開発税制とは

研究開発税制とは、研究開発を行っている企業の法人税額について、試験研究費の額に税額控除割合(1%〜14%)を乗じた金額を控除することができる制度です。
研究開発税制の必要性とは
日本では、研究開発投資額がアメリカや中国、その他の先進各国と比較しても大きく引き離されている状況にあります。
研究開発投資は様々な社会課題を解決するために重要な意義がありますが、投資しても成果が生まれるか分からず、また、成果が生まれても、フリーライドされてしまうことなどから、民間企業の研究開発投資が行われにくい状況があります。
そこで、研究開発税制を設けて、民間企業の研究開発投資を後押しする狙いがあります。
研究開発税制の種類
研究開発税制には、一般型とオープンイノベーション型の2種類があります。
「一般型」は、研究開発投資の全体額に適用できる制度です。
「オープンイノベーション型」は、2者以上が関わる共同研究等に適用できる制度です。
そして、資本金1億円以下等の中小企業については、一般型よりも控除率が高い「中小企業技術基盤強化税制」を適用することができます。
2026年度 (令和8年度) 税制改正では、以上の3つに加えて、「重点産業技術試験研究費」を対象とする研究開発税制が新たに加わりました。
産業技術力強化法の重点研究開発計画の認定を受けた場合に、重点産業技術試験研究費の額の 40%(特別重点産業技術試験研究費 の額の場合には、50%)の税額控除ができる制度です。
なお、控除税額は、当期の法人税額の 10%が上限となり、控除限度超過額は3年間の繰越しすることができます。
重点研究開発計画の認定を受けられる分野は、「産業技術力強化法の重点産業技術 (AI・先端ロボット、量子、半導体・通信、バイオ・ヘルス ケア、フュージョンエネルギー、宇宙)のうち特に早期の企業化が期待されるものとして一定の基準に該当するものに関する研究及び開発」とされています。
研究開発税制の仕組み(一般型)
研究開発税制は、年間の研究開発投資額の増減に応じて、控除率が増減する制度です。
具体的には、前3年以内に開始した各事業年度の試験研究費が増額していれば、控除率が上がり、逆に減額していれば、控除率が下がるという仕組みになっています。
税額控除限度額の計算式は次のとおりです。
税額控除限度額=試験研究費の額×控除率(1%〜14%)
令和8年3月31日までに開始する事業年度に適用される控除率は次の計算式で算出していました。
【増減試験研究費割合 12%超】
11.5%+(増減試験研究費割合−12%)×0.375 (最大14%)
【増減試験研究費割合 12%以下】
11.5%−(12%−増減試験研究費割合)×0.25 (最小1%)
【設立事業年度であるとき又は比較試験研究費の額が0であるとき】
控除率は、8.5%
※増減試験研究費割合とは、増減試験研究費の額の比較試験研究費の額に対する割合のことです。なお、比較試験研究費は、前3年以内に開始した各事業年度の試験研究費の額を平均した額のことです。
2026年度 (令和8年度) 税制改正では、令和9年4月1日以後に開始する各事業年度の控除率の計算方法が変更されました。
具体的には次のように変わります。
【増減試験研究費割合 15%超】
11.5%+(増減試験研究費割合−15%)×0.375
【増減試験研究費割合 3%超15%以下】
8.5%+(増減試験研究費割合−3%)×0.25
【増減試験研究費割合 3%以下】
8.5%+(増減試験研究費割合−3%)×13 分の 8.5
なお、控除上限は、原則として、次のとおりとなっています。
控除上限=法人税額×25%(※設立10年以内等の要件を満たすベンチャー企業は法人税額×40%)
ただし、次の2つの特例により、控除税額を上乗せすることができます。これらの特例は、一部変更した上で、令和9年4月1日以後も3年延長されます。
1. 増減試験研究費割合が4%を超える場合又は増減試験研究費割合がマイ ナス4%を下回る場合の控除税額の上限の特例
こちらの特例は、令和8年3月31日までに開始する事業年度までは次の計算式で算出していました。
【法人税額に対して増減試験研究費割合が4%超】
25%+0.625×(増減試験研究費割合ー4%)(最大30%)
【法人税額に対して増減試験研究費割合がー4%未満】
25%+0.625×(増減試験研究費割合+4%)(最小20%)
令和9年4月1日以後に開始する各事業年度からは次のように変更されます。
【法人税額に対して増減試験研究費割合が7%超】
25%+0.625×(増減試験研究費割合ー7%)(最大30%)
【法人税額に対して増減試験研究費割合がー1%超】
25%+0.625×(増減試験研究費割合+1%)(最小20%)
2. 試験研究費の額が平均売上金額の 10%を超える場合における税額控除率の特例及び控除税額の上限の上乗せ特例
【売上に対する研究開発投資の割合が10%超の場合】
控除上限 = 25% + (試験研究費割合−10%)×2(最大10%)
中小企業技術基盤強化税制

中小企業技術基盤強化税制は、中小企業が研究開発投資を行った場合に、一般型よりもさらに有利な税額控除を受けられる制度です。
この制度の適用対象となるのは次のいずれかの中小企業です。
- 資本金または出資金の額が1億円以下の法人
- 資本金または出資金を有しない法人のうち、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
- 常時使用する従業員数が 1,000 人以下の個人事業主 等
- 農業協同組合等
中小企業技術基盤強化税制の控除率は、12%を基本に最大17%になります。
試験研究費が過去3年間の平均と比較し12%超の場合は、次の計算式で控除率を算出します。
12%+(増減試験研究費割合ー12%)×0.375
試験研究費が過去3年間の平均と比較し12%以下の場合は、一律に12%になります。また、4年間の売上金額の平均額に占める試験研究費の割合が10%を超える場合は、次の計算式で計算できる特例があります。
通常の控除率+{(平均売上金額に占める試験研究費割合−10%)×0.5}×通常の控除率
なお、控除上限は、原則として、次のとおりとなっています。
控除上限=法人税額×25%
ただし、次のいずれかに該当する場合は、「法人税額×10%」まで上乗せされます。
- 増減試験研究費割合が 12%を超える場合
- 試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合
2026年度 (令和8年度) 税制改正では、令和9年4月1日以後に開始する各事業年度から、「控除限度超過額について、3年間の繰越し」ができるようになりました。
以上の中小企業技術基盤強化税制については、令和9年4月1日以後も3年延長されます。
オープンイノベーション型の研究開発税制
オープンイノベーション型の研究開発税制の正式名称は、「特別試験研究費税額控除制度」と言います。
大学や国の研究機関、他企業等との共同研究及び委託研究等に要した試験研究費の額のうち、一定の控除率を乗じて計算した金額を、当該事業年度の法人税額から控除できる制度です。
控除率は試験研究の内容により次のように異なります。
- 特別研究機関、大学等との共同・委託試験研究:30%
- スタートアップ等との共同・委託試験研究:25%
- その他の民間企業等との共同・委託試験研究:20%
なお、上限額は、他の研究開発税制とは別枠で法人税額の10%相当額が上限になります。
特別試験研究費税額控除制度を利用するには一定の手続きが必要になります。
特に、大学等との共同試験研究の場合は、特別試験研究費の額について、
- 第三者による確認(公認会計士、税理士等)
- 大学等の確認
を受けることが求められていました。
2026年度 (令和8年度) 税制改正では、令和9年4月1日以後に開始する各事業年度からは、一定の場合、この確認が簡略化されます。
具体的には、次の要件を満たすことにつき経済産業大臣の指定を受けた大学等については、「その大学等の長が認定した金額」でよいことになりました。
- 大学等に企業との共同研究及び企業からの委託研究についての管理を行う業務を集約する専門の部署が設置されていること等その大学等が共同研究等を行うに当たって管理を行うための体制が十分なものであると認められること。
- その大学等の規則において共同研究等についての管理に関する業務方法等が定められており、その業務方法等が共同研究等を実施するに当たって適切なものであると認められること。
- その大学等において共同研究等についての企業との間の連絡調整及び 事務手続きに関する方法が具体的に定められていること。
その他の研究開発税制の見直し
研究開発税制については2026年度 (令和8年度) 税制改正で次の点も見直されました。
- その用途に係る対象者が少数である医薬品に関する試験研究(重点産業技術試験研究費の額に係る税額控除制度を受ける場合はオープンイノベーション型の研究開発税制の対象外となる。)
- 新規高度研究業務従事者に対して人件費を支出して行う試験研究(博士の学位を授与された者で、当該法人の役員又は使用人になった日から5年を経過していないものについて、新規高度研究業務従事者とすることができる。)
- 国外で試験研究を行う場合の税額控除の対象(海外委託試験研究費については税額控除の対象を原則50%とする。)
まとめ
研究開発税制については、引き続き、適用されますが、2026年度 (令和8年度) 税制改正により細かな点が変更されています。研究開発税制について | 経済産業省も参考にしつつ、再確認しておきましょう。
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