【令和6年度】小規模事業者持続化補助金の概要と利用条件

「小規模事業者持続化補助金」は、地域の雇用や産業を支える小規模事業者が、経営環境の変化に対応しながら成長するための重要な支援です。

対象経費の範囲がやや特徴的で、類似する補助金もあるため、顧問先に提案する際には、こうした点を踏まえて適切な説明をしなければなりません。

この記事では、令和6年度の小規模事業者持続化補助金の概要や利用条件、間違えやすいポイントをまとめます。

目次

小規模事業者持続化補助金の概要

小規模事業者持続化補助金(一般型)は、小規模事業者が、さまざまな経営環境の変化に対応しながら持続的な成長を目指すために設けられた制度です。

小規模事業者が取り組む販路開拓や業務効率化のための経費の一部を補助することで、生産性向上と持続的な発展を支援し、地域の雇用や産業の活性化を図ることを目的としています。

販路開拓の取り組みを支援

小規模事業者持続化補助金の補助対象は、主に販路開拓に向けた取り組みと、それに併せて行う業務効率化の取り組みです。

例えば、新たな顧客層の獲得を目指した商品の改良や新商品などの開発、設備の導入や店舗のリニューアル、さらにチラシやウェブサイトの制作など、幅広い経費が補助対象となります。

しかし、すべての経費が補助対象となるわけではありません。例えば、既存設備の定期的な修繕費や、汎用性が高く業務以外でも使用可能な物品(パソコンなど)の購入費は対象外となりますので、申請の際には注意が必要です。

ものづくり補助金・IT導入支援補助金もチェックを

中小規模の企業を支援する補助金には、他にも「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」などがあります。小規模事業者持続化補助金で補助対象とならない経費が、これらの補助金では対象となる場合もありますので、チェックしておきましょう。

  • ものづくり補助金…革新的な製品・サービスの開発、生産プロセス等の省力化に必要な設備投資等を支援する補助金
  • IT導入補助金…労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDXの推進、サイバーセキュリティ対策、インボイス制度への対応等に向けたITツールの導入を支援する補助金

小規模事業者持続化補助金の対象者

小規模事業者持続化補助金の対象者には、以下の条件を満たす法人や個人事業者、特定非営利活動法人が含まれます。

業種ごとに常時使用する従業員の数に基づいて定義されています。

業種常時使用する従業員の数
商業・サービス業
(宿泊業・娯楽業を除く)
5人以下
宿泊業・娯楽業20人以下
製造業その他20人以下

事業規模に関しては、以下の要件も満たしている必要があります。

  • 資本金または出資金が5億円以上の法人に100%株式保有されていないこと(法人のみ)
  • 直近3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと

常時使用する従業員について

「常時使用する従業員」には、会社役員、個人事業主本人および同居の親族従業員、休業休職中の職員、労働時間が短いパートタイム労働者は含まれません。

また派遣社員についても、申請者と直接の雇用関係にないため「常時使用する従業員」には含まれません。

過去に申請している場合について

小規模事業者持続化補助金を過去に活用していても、期間が空いていれば再び申請することができます。

期間については公募要領で確認する必要がありますが、参考までに、第16回公募(2024年5月受付開始分)では「第11回公募(2022年3月受付開始分)以前の補助事業者は、事業実施期間終了日の属する月の翌月から1年間を経過している場合は申請が可能」とされています。

小規模事業者持続化補助金の補助率・補助上限額の一覧

小規模事業者持続化補助金の申請枠には、「通常枠」と「特別枠(①賃金引上げ枠、②卒業枠、③後継者支援枠、④創業枠)」があります。

各申請枠の補助率と補助上限額は、次のとおりです。

類型通常枠賃金引上げ枠卒業枠後継者支援枠創業枠
補助率3分の23分の2
(赤字事業者については4分の3)
3分の23分の23分の2
補助上限額50万円200万円200万円200万円200万円
インボイス特例(+50万円)ありありありありあり

申請類型(通常枠)

小規模事業者持続化補助金の「通常枠」とは、小規模事業者が自ら作成した経営計画に基づき、商工会議所の支援を受けながら実施する販路開拓等の取り組みを支援する通常の申請枠です。補助上限額は50万円になります。

申請類型(特別枠)

通常枠の要件にプラスして一定の要件を満たす場合、補助上限額が50万円から200万円に引き上げられる枠です。該当する特別枠があれば、その枠で申請した方が有利になります。特に赤字事業者が「①賃金引上げ枠」で申請した場合、補助率も引き上げられるので、可能であればこの枠で申請するとよいでしょう。

特別枠については、各申請枠における【追加書類】を確認すると、要件を理解しやすくなると思います。

賃金引上げ枠

通常枠の販路開拓の取り組みに加えて、事業場内の最低賃金が地域別最低賃金より50円以上高い場合に申請できる特別枠です。さらに、赤字事業者(直近1期または直近1年間の課税所得金額がゼロ以下である法人または個人事業主)の場合、補助率が引き上げられます。

【追加書類】

  • 直近1か月間における労働基準法に基づく賃金台帳(役員、専従者従業員を除く全従業員分)
  • 役員、専従者従業員を除く全従業員の雇用条件(1日の所定労働時間、年間休日)が記載された書類(例:雇用契約書、労働条件通知書、就業規則等)
  • 赤字事業者が法人の場合、直近1期に提出した税務署受付印のある法人税申告書の別表一・別表四(e-Taxで申告した場合は、「受付結果(受信通知)」を添付)

卒業枠

販路開拓の取り組みに加えて、雇用を増やし、小規模事業者の「常時使用する従業員の数」を超えて事業規模を拡大する場合に申請できる特別枠です。補助事業の終了時点において、所定の人数を超過させる必要があります。

【追加書類】

  • 労働基準法に基づく最新の労働者名簿(常時使用する従業員分のみ)

後継者支援枠

販路開拓の取り組みに加え、「アトツギ甲子園」においてファイナリストまたは準ファイナリストに選ばれた場合の申請枠です。

創業枠

産業競争力強化法に基づく「特定創業支援等事業」による支援を受けた日および開業日(設立年月日)が公募締切時から起算して過去3か年の間である場合の申請枠です。

【追加書類】

  • 「特定創業支援等事業」による支援を受けたことの証明書
  • 現在事項全部証明書または履歴事項全部証明書
  • 開業届(税務署受付印のあるもの)

インボイス特例による上乗せで最大250万円の補助も可

小規模事業者持続化補助金の各申請枠には、免税事業者から適格請求書発行事業者に転換する場合に適用される「インボイス特例」があります。

この特例を利用することで、補助上限額が一律50万円上乗せされ、特例枠であれば最大250万円の補助を受けることができます。ただし、補助事業の終了時点において適格請求書発行事業者の登録が確認できない場合、この特例の対象外となるため注意が必要です。

なお、インボイス対応を進める際には、IT導入補助金によるデジタル化支援も利用できるため、こちらの補助金もチェックしてください。

【追加書類】

  • 登録済みの事業者:適格請求書発行事業者の登録通知書の写し
  • 電子申告(e-Tax)で登録申請手続中の事業者::登録申請データの「受信通知」

小規模事業者持続化補助金の補助対象科目

小規模事業者持続化補助金の補助対象になる経費は、以下のとおりです。

補助対象経費科目活用事例
①機械装置等費補助事業の遂行に必要な製造装置の購入など
②広報費新サービスを紹介するためのチラシ作成・配布、看板の設置など
③ウェブサイト関連費ウェブサイトやECサイトの開発、構築、更新、改修、運用に係る経費
④展示会等出展費展示会・商談会への出展料など
⑤旅費販路開拓のための展示会会場への往復旅費
⑥新商品開発費新商品の試作品開発に伴う経費
⑦資料購入費補助事業に関連する資料や図書の購入費用など
⑧借料機器や設備などのリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの)
⑨設備処分費新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備の処分など
⑩委託・外注費店舗改装など、自社での実施が困難な業務を第三者に依頼する場合(契約が必要)

「③ウェブサイト関連費」は補助金交付申請額の4分の1(最大50万円)が上限に、「⑨設備処分費」は補助対象経費総額の2分の1が上限となります。この2つはそれぞれ、その経費のみで申請ができませんので、他の経費と一緒に申請する必要があります。

小規模事業者持続化補助金の間違えやすいポイント

小規模事業者持続化補助金の申請において、よくある勘違いをご紹介します。

パソコンや周辺機器の購入費は補助対象にならない

汎用性が高く、目的外での使用が可能なものについては補助対象外となります。そのため、以下のような機器は補助対象になりません。

  • パソコン
  • 事務用プリンター
  • 複合機
  • タブレット端末
  • WEBカメラ
  • ウェアラブル端末
  • PC周辺機器(ハードディスク、LAN、Wi-Fi、サーバー、モニター、スキャナー、ルーター、ヘッドセット、イヤホンなど)

HP開設やロゴデザインのみで申請はできない

ウェブサイト関連費は補助対象経費ですが、それのみで補助金を申請することはできません。HPの構築や改修、HPや動画サービスに載せる動画編集、ロゴデザイン、メルマガなどもウェブサイト関連費にあたります。こうした経費は、例えば、店舗の改装(委託・外注費)や、チラシやカタログの郵送(広報費)など、他の経費と一緒に申請するようにしましょう。

令和6年の小規模事業者持続化補助金「災害支援枠」とは

令和6年に発生した能登半島地震によって、生産設備や販売拠点に大きな損害を受け、顧客や販路の喪失という厳しい状況に直面している被災地域の小規模事業者の事業再建を支援するため、「災害支援枠」が設けられています。この補助枠の対象となるのは、石川県、富山県、福井県、新潟県に所在する、令和6年能登半島地震によって被害を受けた事業者です。

参考:全国商工会連合会 小規模事業者持続化補助金災害支援枠

まとめ

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や業務効率化を支援する重要な補助金です。対象となる経費の範囲は広いため、顧問先の新しいチャレンジで使えそうなものがあれば、積極的に提案しましょう。

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