令和6年4月1日以降の交際費等の損金不算入制度の延長・拡充について解説

令和6年4月1日から交際費(接待交際費)のうち、損金算入できる飲食費(接待飲食費)の額が拡大されました。令和6年3月31日までは、一人当たり5,000円以下の飲食費(接待飲食費)が損金算入できましたが、令和6年4月1日からは「10,000円以下」に拡大されます。

その上で、接待飲食費に係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特例の適用期限が3年延長されることになります。

目次

令和6年度より交際費等の損金不算入制度の見直しが行われた背景

中小企業の営業活動では、交際費は必要不可欠です。しかし、交際費(接待交際費)は原則として、損金算入することができないため、節約しがちです。

特に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、外食の自粛により、企業の交際費(接待交際費)の支出額が激減しました。こうした傾向は景気低迷に拍車をかけかねません。また、依然として厳しい状況にある飲食業を支援する必要もあります。

そこで、令和6年度より、交際費等の損金不算入制度の見直しが行われました。

飲食費(食事代)とは

飲食費(食事代)という勘定科目はありません。

法人が飲食費(食事代)を出した場合は、その内容に応じて、「会議費」「交際費」「旅費交通費」「福利厚生費」などのいずれかの勘定科目として処理されます。

  • 「会議費」は、会議や打ち合わせのための費用のことです。会議や打ち合わせの際に弁当、お菓子、飲み物などを用意した場合は、会議費として仕訳できます。
  • 「交際費(接待交際費)」は、取引先を接待した時にかかった費用のことです。
  • 「旅費交通費」は、出張の際にかかった飲食費のことです。
  • 「福利厚生費」は、従業員の慰安のために飲食費を出した場合です。

令和6年度の税制改正で関係があるのは、主に「会議費」と「交際費(接待交際費)」に仕訳される飲食費です。

「会議費」と「交際費(接待交際費)」の飲食費の違い

飲食費がかかった場合に、どちらに計上するのかが問題となります。まず、自社の従業員のみが参加する会議でかかった飲食費は、「会議費」で仕訳します。

一方、自社の従業員だけでなく社外の従業員も参加している会合でかかった飲食費は、「交際費(接待交際費)」になる場合があります。「会議費」の飲食費ならば、原則として全額損金算入することができます。

一方、「交際費(接待交際費)」の飲食費(接待飲食費)は、損金不算入となるのが原則です。ただ、一人当たり一定額までの飲食費(接待飲食費)ならば、「交際費(接待交際費)」から除外し、損金算入することができます。

これを接待飲食費に係る損金算入の特例と言います。一人当たりの飲食費(接待飲食費)の額は、令和6年3月31日までは、「5,000円以下」とされていました。令和6年4月1日からは「10,000円以下」に拡大されます。

具体的な額は、飲食費(接待飲食費)として支出した額を飲食等に参加した者の数で割って求めます。

交際費(接待交際費)から除外できる飲食費(接待飲食費)とは?

接待飲食費とは、「交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。)」と定義されています。

国税庁の見解によると具体的には次のような費用が接待飲食費に該当すると解されています。

  • 自社の従業員等が得意先等を接待して飲食するための「飲食代」「テーブルチャージ料やサービス料等」「会場費」「お土産代」
  • 得意先等の業務の遂行や行事の開催に際して、差し入れる「弁当代」

一方、次のような費用は、接待飲食費に該当しません。

  • ゴルフや観劇、旅行等の催事に際しての飲食等に要する費用:ゴルフや観劇、旅行等の催事が主な目的で、飲食を目的とするものではないためです。
  • 接待等を行う飲食店等へ得意先等を送迎するために支出する送迎費:送迎費は、飲食費に該当しないためです。
  • 飲食物の詰め合わせを贈答するために要する費用:いわゆる中元・歳暮と同じものなので、飲食費に該当しないということです。

参考:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/settai_faq/01.htm

飲食費(接待飲食費)を交際費(接待交際費)から除外するには?

飲食費(接待飲食費)を交際費(接待交際費)から除外するためには、次の事項を記載した書類を保存している必要があります。

  • 飲食等のあった年月日
  • 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
  • 飲食等に参加した者の数
  • その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称および所在地(店舗がない等の理由で名称または所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名または名称、住所等)
  • その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項

中小法人の交際費課税の特例

交際費とは、交際費、接待費、機密費、その他の費用で法人がその得意先、仕入先その他事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものです。

こうした交際費は、損金不算入が原則です。

ただ、中小法人は、販売促進手段が限られており、外部企業の担当者との接待交際も重要な役割を担っています。そこで、企業の規模に応じて、一定額までの交際費を損金に算入できることとされています。

企業の規模ごとの交際費の損金算入の可否は次のとおりです。

資本金の額等が100億円超の法人全額損金不算入
資本金の額等が1億円超100億円以下の法人接待飲食費の50%につき損金算入可能
中小法人(資本金の額等が1億円以下の法人)定額控除限度額(800万円)までの全額が損金算入可能

なお、中小法人は、「定額控除限度額(800万円)までの全額が損金算入可能」と「接待飲食費の50%につき損金算入可能」のいずれかを選択することができます。

具体的には、申告書等に添付する別表15(交際費等の損金算入に関する明細書)において、いずれかの方法により損金算入額を計算し、申告するだけです。特別な届出等は必要ありません。

接待飲食費に係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特例の適用期限

  • 接待飲食費に係る損金算入の特例
  • 中小法人に係る損金算入の特例の適用期限

この2つの適用期限は、令和6年3月31日までとされていましたが、一人当たりの飲食費の額を「5,000円以下」から「10,000円以下」に引き上げたうえで、令和9年3月31日まで延長されます。

令和6年度交際費等の損金不算入制度の改正に伴う注意点

令和6年度交際費等の損金不算入制度の改正に伴い、注意すべきことが2つあります。

同一事業年度内に「5,000円以下」と「10,000円以下」の2つの基準が混在する

交際費(接待交際費)から除外できる飲食費(接待飲食費)の額が「5,000円以下」から「10,000円以下」に引き上げられるのは、令和6年4月1日からです。

そのため、令和6年3月31日に決算期を迎える企業では、新事業年度の開始とともに新たな基準に切り替えることができますが、それ以外の決算期を設定している企業では、同一事業年度内に「5,000円以下」と「10,000円以下」の2つの基準が混在するため注意が必要です。

インボイス制度の影響

飲食費(接待飲食費)として支払った費用については、インボイス制度の影響も受けるので注意が必要です。まず、税込経理をしている法人では、影響はありません。

一方、税抜経理をしている法人では、飲食店がインボイス発行事業者かどうかにより異なります。飲食店がインボイス発行事業者ならば、税抜10,000円以下まで損金算入が可能になります。

飲食店がインボイス発行事業者ではない場合は、仕入税額控除ができないため、消費税も含めて飲食費(接待飲食費)の額を計算します。そのため、一人当たり10,000円を超えるか微妙な場合は、損金算入できなくなる可能性があるため注意が必要です。

まとめ

令和6年度より交際費等の損金不算入制度の見直しが行われましたが、大きく変わったことは、交際費(接待交際費)のうち、損金算入できる飲食費(接待飲食費)の額が一人当たり5,000円以下から「10,000円以下」に拡大されたことだけです。

これにより、経理処理が変わるため、会計ソフトの設定などについて、顧問先に注意を促す必要があります。

税理士.ch 編集部

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