令和6年度のキャリアアップ助成金は誰が対象?各コースの特徴を紹介

派遣を始めとした非正規雇用者を正社員とするなど、雇用者の待遇改善によってもらえるのがキャリアアップ助成金です。実際は正社員化以外にも様々なコースがあり、条件をクリアすれば受け取れます。
そこで今回は、キャリアアップ助成金の各コースの違いや、令和6年度版での変更点についてご紹介します。

目次

キャリアアップ助成金は全6コース

まずは、キャリアアップ助成金の各コースを見ていきましょう。キャリアアップ助成金は主に2種類・6コースです。種類は正社員化支援と処遇改善支援があり、各コースはいずれかに属します。

また各コースの詳細は次の通りです。

  • 正社員化コース
  • 障害者正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 賞与・退職金制度導入コース
  • 社会保険適用時処遇改善コース

上記の内、正社員化コースと障害者正社員化コースは正社員化支援、残りの4つは処遇改善支援に含まれます。そして社会保険適用時処遇改善コースは、令和5年10月から新たに設置されたコースです。

キャリアアップ助成金の申請方法

キャリアアップ助成金は、各コースを実施する前日までに、労働局もしくはハローワークへ計画書の提出が必要です。
申請をしても、すぐ利用できるわけではない点に注意しましょう。

加えていずれのコースでも、該当する雇用者へ6か月分の賃金を支払っていることにより、初めて支給申請が可能です。その上で、労働局にて審査が行われ、合格した場合に助成金が受け取れます。

万が一、各コースに見合う待遇改善が認められない場合は、審査に通らず助成金も受け取れません。

キャリアアップ助成金を申し込める条件【コース共通】

キャリアアップ助成金は、コース別の条件や待遇改善ができたか以前に、計画書の内容や申請する事業者にも条件が備わっています。ここでは特に注意すべき点について、見ていきましょう。

長期計画の立案と労働者の意見採用

キャリアアップ助成金を申請するには、3年以上5年以下の計画が必要です。
短期計画では受け付けてもらえません。また5年を超えて計画を続行をする場合、今回の期間終了後、再度キャリアアップ計画の提出が求められます。

ちなみに計画書は事業所単位で提出するため、複数の事業所で行う場合は、その分計画書も必要です。そして計画書は、「全ての労働者の代表」から意見を取り入れた内容であることも条件です。あくまでも労働者の待遇改善なので、経営者側がこれでいいだろうと考えただけでは受理されません。労働者1人1人から詳しく話を聞けとは言いませんが、最低限、彼らの意見を把握できる労働側の代表者から話を聞く必要があります。

専門知識を備えたキャリアアップ管理者の設置

キャリアアップ管理者は本件の担当者というイメージですが、複数の事業所および労働者代表との兼任ができません。計画書の項でも触れていますが、事業所単位の申請となるため、担当者も各所に1人必要です。また代表以外であれば、労働者でもキャリアアップ管理者を兼任できます。加えてキャリアアップ管理者には、助成金に必要な知識や経験が不可欠です。

助成金そのものでなくても、人事担当者などキャリアに関する実績を備えた人が良いでしょう。労働局側の審査次第とはいえ、担当者がきちんと対応できなければ、目標達成も難しくなります。助成金を受けるためにも、キャリアアップ管理者の見極めは重要です。

ルール違反は論外

また、キャリアアップ管理者を含めた条件をクリアしていても、労働関係の法令違反や保険料の滞納などを行っていると申請できません。申請前に、念のため該当する行為がないか確認しておきましょう。

令和6年度からの変更1 社会保険適用時処遇改善コース編

ここではキャリアアップ助成金において、令和6年度版及び近年に変更があった内容をご紹介します。まずは社会保険適用時処遇改善コースから見ていきましょう。

社会保険適用時処遇改善コースの新設

コースのところでも触れたとおり、社会保険適用時処遇改善コースは新たに追加されました。
名前の通り、労働者を社会保険に加入させること、それに伴う労働者の負担を減らすことが目的です。具体的には、手当等支給メニューと労働時間延長メニューの2種類に分かれます。まず手当等支給メニューは、賃金の増額や追加支給を条件としており、追加支給には社会保険適用促進手当などがあります。

一方、労働時間延長メニューは、週所定労働時間の延長と共に賃金の増額を行うことが条件です。また、1年目に手当等支給メニュー、2年目に労働時間延長メニューと併用する1本化メニューも存在します。同じ労働者に対して、どちらも適用したい場合はチェックしてみてください。

ただし社会保険の加入は、令和5年10月1日から令和8年3月31日までに行った方のみ対象となります。社会保険適用時処遇改善コース開設以前に加入していても、原則対象外となるので注意しましょう。

支給対象期間の起算方法が変更

手当等支給メニュー及び併用メニューを申請する場合の、支給対象期間における起算方法が変わりました。支給期間の6か月はそのままに、起算日を「事業所の賃金算定期間の1日目」としています。月は社会保険が適用された日と同じです。

ただし実際の賃金支払い日が同月内に含まれる場合(算定期間の同月末払いなど)、起算日は翌月に回ることもあります。

社会保険適用時処遇改善コースにおける対象外労働者への措置

社会保険適用時処遇改善コースでは、ほかの条件を満たしていても、令和5年9月30日以前から社会保険に加入している場合、助成金の対象にはなりません。

ただし、該当者に社会保険適用促進手当を支給する場合、標準報酬月額及び標準賞与額の算定に考慮しない取り扱いにできます。助成金こそありませんが、ほかの賞与などとは別に社会保険適用促進手当の支給が可能です。

令和6年度からの変更2 正社員化コース編

続いては、正社員化コースに関する変更点です。主な内容は下記の通り、また支給額の増加や内容の見直し、新たな加算項目の設置などが行われています。

正社員化コースの雇用上限廃止

正社員化コースでは、有期雇用労働者の通算雇用期間要件を「6か月以上3年以内」と定めていましたが、上限がなくなりました。令和5年11月29日以降は、6か月以上を満たせば対象です。

正社員化コースの2期申請

正社員化コースで申請した労働者が、正社員として6か月雇用された後、さらに6か月継続した場合、キャリアアップ助成金の再申請が可能です。

最初の6か月が1期目、2回目の6か月を2期目の条件として適用されます。また、この場合は1事業所あたりの上限20名に含まれません。つまり、2期目の労働者とは別に、新たに20人分の申請が可能です。

人材開発支援助成金との手続き一本化

キャリアアップ助成金の対象である労働者が、直前に人材開発支援助成金の対象でもあった場合、計画書の提出を省けます。要は、人材開発支援助成金の申請時に提出していた訓練実施計画届を、計画書として扱ってもらえる仕組みです。

ただし正社員化コースのみが対象である点、訓練実施計画届を紙面で作成・提出している場合に限ります。人材開発支援助成金を受給していても、電子申請の場合は別途申請しなくてはなりません。

また、キャリアアップ助成金でほかのコースを選んでいる場合も、新たに手続きが必要です。

令和6年度におけるそのほかの変更点

賃金規定等改定コースなど、上記以外のキャリアアップ助成金については概ね前年度までと同じです。ちなみに、短時間労働者労働時間延長コースに関しては、令和6年度以降であっても、規定日まで引き続き適用されます。

要件の変更に注意

年度途中であっても、キャリアアップ助成金に関する要件が変更される場合があります。令和6年度版の情報を見たからと言って安心せず、申請直前に変更がないか必ず確認しましょう。

ちなみに、社会保険適用時処遇改善コースの内容は、令和8年3月31日までの暫定的な措置です。最終決定ではないため、令和8年までの間にも変化する可能性があります。

まとめ

キャリアアップ助成金は各コースごとの要件達成に加え、労働者の意見を反映した計画書の提出や、キャリアアップ管理者の設置が必要です。労働者の待遇改善も一時的なものではなく常態化が目的であり、実施期間も長期が求められています。

また令和6年度においては、正社員化コース及び社会保険適用時処遇改善コースに大きな変更が見られました。助成金額の増加のほか、要件を分かりやすい表記にしたり、労働者に配慮したりといった変更が多いです。

ただ令和6年4月1日からの変更ばかりでなく、中には令和5年度途中で決定した内容もあります。今後も年度中に変更がある可能性は否定できないため、申請時は都度要件を確認しましょう。

【まとめ記事】令和6年度の助成金・補助金について紹介します

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