誤送金が起きてしまったら?基本的な対処法や防止策を紹介

誤送金が起きてしまったら?基本的な対処法や防止策を紹介

経理業務の中でも、誤送金は致命的なミスの一つです。状況次第では二度とお金が戻ってこないケースもあるため、あってはならないヒューマンエラーと言っても過言ではないでしょう。

誤送金が起きた後の初動はとても大切です。最初にどのような動きをしたかによって、結果は大いに変わってきます。

誤送金を起こさない仕組みづくりも欠かせません。この記事では、誤送金が発生した時の適切な対処法や、未然に防ぐための体制作りについて説明しています。

目次

誤送金とは? 法的対処と組み戻し手続きについて

誤送金のパターンと発生要因、相手方への対処法や組み戻し手続きについて、詳細を説明します。

  • 誤送金のケースと発生要因
  • 誤送金によって相手方が得た不当利得への法的対処

誤送金のケースと発生要因

誤送金の発生パターンは主に次の3通りです。

  1. 振込先間違い:見当違いの人への送金、
  2. 金額間違い:金額を多めに送金してしまう
  3. 二重振込:同じ金額を2回送金してしまう

発生要因は、経理担当者による手入力時のミスや、支払先マスタの登録・更新ミス、あるいは支払承認フローにおける二重チェック体制の不備や承認漏れなど、人為的なヒューマンエラーが大半を占めます。

業務に支障が出ないように早めの組み戻しを実現するには、パターンと原因を早期に特定しなければいけません。

誤送金によって相手方が得た不当利得への法的対処

誤送金された金銭は売買契約や債務履行など、法律上の手続きなく受取人が利益を得ていることから、民法第703条に定める「不当利得」に該当します。

受取人は送金した側に対して、受け取った金銭を返還しなければいけません。受取人が誤送金と知りながら金銭を引き出した場合、不法な行為として詐欺罪や電子計算機使用詐欺罪が成立することもあります。返金に応じない相手には、不当利得の法律を認識してもらうと良いでしょう。

組み戻し手続きと法的手続きの準備

返金手続きの一般的な対処法は、金融機関への組戻し手続きの依頼です。組戻しは、振込先の金融機関に依頼して資金を送金元口座に戻してもらう手続きです。

組戻しは受取人の同意が必須です。金融機関が独断で資金を戻すことはできません。組戻しを依頼しても受取人が返金を拒否すれば、手続きは失敗します。

誤送金発覚後は、ただちに金融機関へ連絡し、組戻しを依頼しましょう。さらに、受取人に対しては、不当利得返還義務に基づき組戻しへの同意を促すための連絡や依頼文書作成の準備をします。組戻しの承諾を得られない場合は、弁護士と連携して法的対処を検討する必要があります。

誤送金が発生した時の実務の流れ

誤送金が起きてしまった時の対処方法の流れを詳しく説明します。

  • 誤送金が発生した時の初動対応
  • 返金がスムーズに進まない時の対応策

誤送金が発生した時の初動対応

まずは、次のステップにて初動対応を行います。

  1. 事実確認
  2. 金融機関への連絡
  3. 相手方への連絡と謝罪

まずは、誤送金の日時や金額、間違えて送金してしまった先の口座情報を正しく特定します。特定できたら、ただちに送金元の金融機関へ連絡し、組み戻し手続きの依頼に進みます。

相手が組み戻し手続きに同意してくれなければ、間違えて送金してしまったお金は戻ってきません。相手先への連絡と謝罪は丁寧に進める必要があります。

返金がスムーズに進まない時の対応策

相手が素直に返金に応じてくれない場合、法的根拠に基づく段階的な対応が必要です。まず、受取人には不当利得返還義務があることを認識してもらわなければいけません。具体的な内容を伝え、粘り強く交渉を続けます。

任意での返還に応じない場合は、内容や期日を記録に残すために、内容証明郵便を送付して、返金を正式に請求します。それでも返還に応じてくれない場合は、弁護士との連携による訴訟が必要です。裁判所を通じて不当利得返還請求訴訟を提起し、法的に解決を図ります。

訴訟を起こす際は、金融機関への組戻し依頼の記録や振込明細などの証拠が必要です。

誤送金・返金処理の適切な会計と税務

誤送金は会計処理にも影響します。会計処理に関連するポイントを3点ピックアップしました。

  • 仕分けの一例
  • 誤送金時の源泉所得税や消費税の扱い
  • 決算をまたぐ時の対応方法

仕分けの一例

誤送金が発覚した場合、送金側は資金が一時的に原因不明な債権となります。したがって、考えられる仕訳は以下の通りです。

借方貸方
仮払金普通預金

相手方から返金された時は逆の仕訳をしてプラスマイナスゼロに戻します。

借方貸方
普通預金仮払金

返金時に組戻し手数料や振込手数料が発生した場合は、勘定科目を「支払手数料」として別途費用処理します。決算までに仮払金の残高を解消し、原因を確定させることを目指しましょう。

誤送金時の源泉所得税や消費税の扱い

誤送金や返金そのものは、原則として源泉所得税や消費税の対象にはなりません。一部の例外や注意すべきポイントについて、詳しく説明します。

源泉所得税

給与や報酬を払い過ぎた場合は注意が必要です。返金を受けた場合、過払い分は本来の給与にあたらないため、源泉徴収簿の調整を行います。年末調整までに返金されない場合は、年末調整時の処理をしなければいけません。

消費税

誤送金や返金は不課税取引です。しかし過剰振込の場合でも、売り上げや仕入れなど元の取引に基づき、消費税の処理を間違えないように注意しなければいけません。原因取引と誤送金分を明確に区分した会計処理がポイントです。

決算をまたぐ時の対応方法

誤送金による仮払金の残高が決算日をまたぐ場合、一時的な仮勘定として放置せず、実態を決算書に正確に反映させます。

決算時点で組戻しや返金手続きが完了していない場合、残高は「仮払金」としてそのまま計上されます。残高は、通常の営業債権・債務とは別に、誤送金によるものである旨を明確に管理台帳に記録しなければいけません。場合によっては、財務諸表に注記して実態を外部へ報告する必要もあります。

翌期以降も返金が期待できない場合は、債権の回収可能性を考慮しつつ、貸倒損失の計上を検討します。原則、誤送金は金銭債権ではないため貸倒損失の計上には慎重な判断が必要です。

誤送金を未然に防ぐために必要な内部統制

誤送金を防ぐための制度と組織作りについて3つのポイントにて詳しく説明します。

  • 二重チェック体制を作る
  • 経理システムやITツールを使う
  • 定期的な担当者向けの研修

二重チェック体制を作る

支払業務の二重チェック体制の構築は極めて重要です。二重チェック体制では、振込データや振込依頼書を作成する人と、内容を執行する承認者、または最終チェック者の二人に作業を振り分けます。

具体的には、担当者が振込先口座情報や金額を入力した後、上長など別の人がそのデータが請求書や支払明細と完全に一致しているかを独立して確認するフローです。

二重チェック体制が構築されると、簡単な入力ミスや誤送金を早期に発見、予防することができます。なお、新規取引先への振込の場合、支払先マスタへの口座登録時にも別途審査を行う二重チェックを加えることで、より強い予防策を構築することも可能です。

経理システムやITツールを使う

経理システムやITツールの積極的な活用は、誤送金防止に効果的です。

具体的には、FB(ファームバンキング)ソフトや会計ソフトの総合振込機能などが挙げられます。経理システムやITツールをうまく活用できれば、振込データを手入力する手間が減り、ヒューマンエラーによる口座番号や金額の間違いを大幅に削減することも可能です。

これらのツールには振込先のマスタ管理機能があり、一度登録した正確な口座情報を繰り返し利用できるため、ミスを構造的に防げます。

さらに、銀行口座の入出金明細を自動で取り込む連携機能を活用すれば、誤送金が発生しても早期に検知し、迅速な組戻し手続きに繋げられます。

定期的な担当者向けの研修

内部統制を進めても業務に携わる人の意識が低いと効果が出にくくなります。誤送金の根本的なリスクを減らすには、定期的な担当者研修が不可欠です。

研修ではシステムの操作方法だけでなく、誤送金が発生した場合の具体的なリスクや、初動対応の重要性を深く理解します。

また、最新の不正事例や発生要因を共有し、日々の業務における緊張感を維持させることも欠かせません。支払先変更時の厳重な確認手順や、二重チェックのルールの徹底を繰り返し教育することで、人為的なエラーや不正の抑止力を高めることができます。

まとめ

誤送金が起きた時は、迅速な対処が求められます。とりわけ、送金先の相手方には早く連絡をとりましょう。不当利得という法律があるものの、接触する際は慎重な対応が求められます。

交渉に失敗すると誤送金したお金が戻ってこないかもしれません。

誤送金の発生要因は、ほぼヒューマンエラーによるものです。根本的に誤送金を無くしたい場合は、設備投資やセキュリティの研修を充実させる必要があります。

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