保険診療と自費診療の違いは?医療費控除の対象になる?美容整形など具体例で解説

保険診療と自費診療の違いは?医療費控除の対象になる?美容整形など具体例で解説

「自費診療は医療費控除にならない」と聞いたことがあり、迷っていませんか。

歯科治療やレーシック、人間ドック、美容整形など、保険を適用できずに自己負担した医療費について、申告できるのかそれとも対象外なのか、判断に悩む方は少なくありません。

本記事では、医療費控除の基本から保険診療と自費診療の違い、さらに自費診療でも控除が受けられるケースまでをわかりやすく解説します。

目次

そもそも医療費控除とは

医療費控除とは、確定申告で所得税や住民税を計算する際に受けられる所得控除の一つです。医師や歯科医師による診療や治療、妊娠や出産、介護にかかる費用、市販薬の購入費など、幅広い支出が控除の対象となります。

そのなかで判断に迷いやすいのが「医師や歯科医師による診療や治療」にかかる費用になります。特に自費診療で医療機関にかかった場合、「これって医療費控除に出来るの?」と悩む人は多いのではないでしょうか。

保険診療と自費診療の違い

医療機関で受ける診療には「保険診療」と「自費診療」があります。まずはこの違いをおさえておきましょう。

保険診療とは

保険診療とは、公的医療保険(市町村の国民健康保険や職場の被用者保険など)に加入している人が、原則3割負担で受けられる診療のことです。

たとえば、1万円かかる検査であっても保険診療の対象であれば、自己負担は3,000円で済みます。

負担割合は年齢によって変わります。

【70歳未満】

年齢自己負担割合
6歳(義務教育就学前)2割(※)
70歳未満3割

(※)子どもの医療費は自治体の助成が受けられる場合があります

【70歳以上】

年齢原則現役並み所得
70歳~74歳2割3割
75歳以上1割3割

さらには、この自己負担が重くなりすぎないための「高額療養費制度」もあります。

医療機関での自己負担額が上限額を超えると超過分の医療費が払い戻される制度であり、上限額は、本人の収入や年齢などに応じて決まります。

このように保険診療の範囲内であれば、少ない負担で医療機関を受診することができるのです。

自費診療とは

自費診療とは、公的医療保険の対象外となる診療を指します。

窓口での支払いは全額自己負担となり、その金額も医療機関が自由に決めることができるため、一般的に高額になることが多いです。

一方で、保険診療では受けられない治療を選べるメリットもあります。必ずしも保険適用の治療より優れていることを意味するものではありませんが、自分に合った治療法や薬を見つけられる可能性があります。

また、ケガや病気の治療だけでなく、美容や健康増進、予防を目的とする診療も自費診療に含まれます。

自費診療の例は以下のとおりです。

  • 先進医療の費用
  • レーシック、オルソケラトロジー・
  • インプラント治療、セラミック素材を用いた治療、歯列矯正、ホワイトニング
  • 美容整形の費用
  • 健康診断、人間ドック、がん検診
  • 予防接種
  • 正常な妊娠・出産の費用

自費診療は医療費控除の対象外なのか

「自費診療は医療費控除の対象にならない」と耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。正しい部分もあるのですが、医療費控除の対象となる自費診療も存在するため、正確にいえば誤りです。

まずは、誤解が生まれる原因から見ていきましょう。医療費控除の対象となる「医師や歯科医師による診療や治療」には、美容や予防を目的とする診療は含まれません。

そして公的医療保険制度においても、美容や予防を目的とする場合、保険診療ではなく自費診療になるものがあります。

たとえば、更年期障害の治療として用いられるプラセンタ注射は保険診療ですが、美容やアンチエイジングのために利用されると自費診療になります。ほかにも、具合が悪くなり診察を受け、医師の判断で実施されたがん検査であれば保険診療となりますが、健康管理のための定期検診として受ければ自費診療となります。

このようなケースでは、自費診療に該当するものは医療費控除の対象になりません。ここから「自費診療は医療費控除にならない」という認識が生まれるのだと考えられます。

一方で、目的にかかわらず自費診療になるものがあります。

たとえば、歯科治療でよく用いられるセラミック素材は、治療が目的であっても医療保険の対象になりません。歯を美しく見せるため健康な歯に使用するのであれば自費診療となるのはわかりますが、虫歯の治療や事故で欠損した歯の治療に用いる場合でも自費診療となるのです。

このように自費診療であっても治療を目的とするものがあり、こうした費用のなかには「医師や歯科医師による診療や治療」として医療費控除の対象になるものがあります。

したがって、自費診療であっても医療費控除を受けられる可能性は「ある」のです。

自費診療で医療費控除の対象となるもの

ここからは、自費診療で医療費控除の対象となる具体例を見ていきます。国税庁が示す基準を踏まえながら整理してみましょう。

金やポーセレンを使用した治療

歯科治療は、使用する素材によって高額な治療代がかかります。そのため国税庁は、一般的な価格水準を著しく超えると認められる素材を用いた治療は、医療費控除の対象にならないとしています。

一方で、金やポーセレン(セラミックの一種)のように、歯科治療で広く使われている素材であれば医療費控除の対象になると示しています。

治療のための歯列矯正

歯並びを整えるための矯正でも、「見た目の改善」が目的なら控除対象にはなりません。  ただし、噛み合わせの改善など治療が目的であれば、医療費控除の対象となります。

レーシック、オルソケラトロジー

視力を回復させるために行うレーザー手術(レーシック)や、特殊なコンタクトレンズで角膜を矯正するオルソケラトロジー治療は、いずれも医療費控除の対象です。

病気が見つかるきっかけとなった人間ドックや健康診断の費用

人間ドックや健康診断は、健康維持や予防を目的とするため、原則として医療費控除の対象外です。  ただし、健康診断の結果、以下の条件に該当すれば、それは医師の治療に先行して行われた診察とみなされ、医療費控除の対象となります。

  1. 重大な疾病が発見されること
  2. 引き続きその疾病の治療を行うこと

高血圧症などと認められたメタボ健診の費用

特定健康診査(メタボ健診)の費用も、通常は予防が目的なので医療費控除の対象にはなりません。  しかし、健診の結果、以下の条件を満たす場合には控除が認められます。 

  1. 高血圧症、脂質異常症または糖尿病と同等の状態であると診断されること
  2. その診査を行った医師の指示に基づき、引き続き特定健康指導を受けること

自費診療で医療費控除の対象とならないもの

自費診療のなかでも医療費控除の対象外となる代表的なケースを紹介します。対象になるものとならないものを区別するポイントは「治療にあたるかどうか」です。

美容整形

容姿を美化するための費用は医療費控除の対象外となります。そのため、美容整形のための費用は控除の対象にはなりません。

歯のホワイトニング

歯のホワイトニングは歯を美しく見せる目的で行われるものであるため、美容整形と同じ理由で医療費控除の対象になりません。

美容のための歯列矯正

見た目を整えることが目的の場合、歯列矯正は控除の対象になりません。 一方で、噛み合わせなどの治療のために行われる矯正であれば対象になります。

予防や健康増進のための費用

病気の予防や健康増進を目的とする費用も、医療費控除の対象にはなりません。  前述のとおり、人間ドックや健康診断、メタボ健診の費用は原則として対象外です。  

予防接種や健康維持を目的としたサプリメントの購入費なども控除の対象になりません。

(参考)国税庁|所得税法基本通達73-4
(参考)国税庁|タックスアンサーNo.1122医療費控除の対象となる医療費
(参考)国税庁|タックスアンサーNo.1128医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例

まとめ

本記事では、医療費控除の基本、保険診療と自費診療の違い、自費診療でも控除の対象となるケースや対象外となるケースについて解説しました。

「自費診療は医療費控除の対象にならない」という誤解もありますが、自費診療であっても医療費控除の対象になることはあります。ただし、美容や予防を目的とした自費診療であれば控除の対象にはなりません。

医療費控除の適用には確定申告が必要です。領収書に基づいて明細書などを作成する必要があります。領収書などは確定申告期限から5年間保存しておく必要があり、場合によっては税務署から問い合わせを受けることもあります。

医療費控除の対象になるかどうか不安があれば、早めに税理士へ相談することをおすすめします。

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