【2025年版】IT導入補助金とは?前年度からの変更点や概要など最新情報を詳しく解説

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者等を対象に、ITツールやクラウドシステムなどを導入する際、その掛かった経費の一部を補助する制度です。
ITツールやクラウドシステム、PC等のハードウェアを導入する際には多額の投資費用が掛かりますが、IT導入補助金を活用することで初期投資に係るリスクを大幅に軽減することができます。IT導入補助金は2017年にスタートしてすでに9年目に入り、2025年にも令和6年度補正として一定の拡充が図られました。
本記事では、IT導入補助金2025の変更点や仕組みを解説するとともに、IT導入補助金に係る留意点なども詳しく解説します。
目次
- IT導入補助金2025とは?
- IT導入補助金2025(令和6年度補正)の概要・主な変更点
- IT導入補助金2025の補助枠の概要
- IT導入補助金2025の事業スケジュール
- IT導入補助金2025に係る留意点
- まとめ
IT導入補助金2025とは?
IT導入補助金は、一定の条件を満たした中小企業や小規模事業者等を対象に、ITツール(ソフトウェア・アプリ)やクラウドシステムなどを導入する際、その掛かった経費の一部を国から補助する制度です。
その目的は、補助事業を通じて中小企業や個人事業主の売上高の向上、業務効率化等を支援することにあります。
IT導入補助金2025については、すでに2025年3月31日までの1次募集が締め切られ、2次及び3次の公募が発表されています。
参照先: IT導入補助金2025事業スケジュール| IT導入補助金2025事務局|独立行政法人中小企業基盤整備機構
IT導入補助金2025の補助スキーム
IT導入補助金2025の補助スキームは以下の通りです。
中小企業・小規模事業者等の補助事業者(※1)が、IT導入補助金事務局に登録されたIT導入支援事業者(※2)(ITツールを提供するベンダー、サービス事業者等)からサポートを受けて、IT導入補助金事務局(※3)に申請します。
(※1) 「補助事業者」とは、最終的に補助金を受ける申請者であり、中小企業・小規模事業者等のこと。
(※2) 「IT導入支援事業者」とは、申請者の補助事業をサポートして補助金を受けやすくする役割を果たす共同事業者のこと。IT導入支援事業者は、申請者が自社の生産性向上を目的としてITツール等の導入を検討する際、ツール情報の提供や事業計画の策定、各種申請手続き等のサポートを行う。
(※3) IT導入補助金事務局とは、補助金に関する交付申請を受付ける本部のことであり、中小企業庁及び中小企業基盤整備機構の監督下で運営されている。
IT導入補助金2025の新規申請及び手続きフロー
中小企業・小規模事業者等の補助事業者とIT導入支援事業者が共同して行う事前準備・申請から最終の事業実施効果報告までの手続きの流れは以下の通りです。
ただし複数社連携IT導入枠については、申請フローが一部異なるのでご注意下さい。

IT導入補助金2025(令和6年度補正)の概要・主な変更点
IT導入補助金については、2024年も実施されましたが、2025年についても令和6年度補正としていくつか制度の拡充が行われています。
以下が補助枠別の主な概要と拡充された内容です。(下線部分が2025事業での変更点です。)

(※)3カ⽉以上地域別最低賃⾦+50円以内で雇⽤している従業員が全従業員の30%以上であることを⽰した事業者
【変更点1】補助対象経費の拡充
2024年までのIT導入補助金では、通常枠、複数社連携IT導入枠、インボイス枠・インボイス対応類型の補助対象経費はソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)でした。
2025年では新たに導入関連費(保守運用やマニュアル作成等のサポート費用に加えて、IT活用の定着を促す導入後の活用支援も対象化)が項目として追加されました。
【変更点2】最低賃金近傍の事業者の補助率の変更(通常枠)
2024年のIT導入補助金(通常枠)の補助率は「中小企業:1/2」のみでしたが、2025年においては、新たに「最低賃金近傍の事業者:2/3」が項目として追加されています。
ただしこの補助率が適用されるのは、「3カ⽉以上、地域別最低賃⾦+50円以内で雇⽤している従業員が全従業員の30%以上であることを⽰した事業者」限定なので注意して下さい。
【変更点3】補助率及び補助額の変更(セキュリティ対策推進枠)
2024年のIT導入補助金・セキュリティ対策推進枠では、「補助率:1/2」「補助額:5万円~100万円」でした。
2025年では、「補助率:中小企業1/2、小規模事業者:2/3」及び「補助額:5万円~150万円」に率・金額とも内容が拡充されています。
IT導入補助金2025の補助枠の概要
IT導入補助金2025の各補助枠の概要について解説します。
なお各補助枠の補助事業者、補助対象経費、補助額・補助率等の詳細については、IT導入補助金2025の公式サイトをご確認下さい。 (以下のリンクより確認できます)
通常枠
通常枠は、中⼩企業・⼩規模事業者等が、働き⽅改⾰、被⽤者保険の適⽤拡⼤、賃上げ、インボイスの導⼊等に対応するため、⽣産性の向上に資するITツール(ソフトウェア、サービス等)の導⼊費⽤を⽀援するための補助枠です。
インボイス枠・インボイス対応類型
インボイス枠(インボイス対応類型)は、中⼩企業・⼩規模事業者等に、インボイス制度に対応したITツールの導⼊を強⼒に推進するため、会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフトの導⼊費⽤に加え、PC・タブレット、レジ・券売機等の導⼊費⽤を⽀援するための補助枠です。
インボイス枠・電子取引類型
インボイス枠(電子取引類型)は、取引関係における発注者が、インボイス制度対応の ITツール(受発注ソフト)を導⼊し、当該取引関係における受注者である中⼩企業・⼩規模事業者等に対して、無償でアカウントを供与して利⽤させる場合に、その導⼊費⽤を⽀援するための補助枠です。
セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠は、中⼩企業・⼩規模事業者等において、サイバーインシデントを原因とした事業継続が困難となる等の⽣産性向上を阻害するリスクを低減するとともに、供給の制約やそれに起因する価格⾼騰の潜在的リスクを低減するための⽀援補助枠です。
具体的には、「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスのうち、IT導⼊⽀援事業者が提供し、かつ事務局に事前登録されたサービスを導⼊する際のサービス利⽤料(最⼤2年分)を⽀援します。
複数社連携IT導入枠
複数社連携IT導入枠は、複数の中⼩企業・⼩規模事業者が、連携してITツール及びハードウェアを導⼊することにより、地域DXの実現や⽣産性の向上を図る取組に対して、複数者へのITツールの導⼊等を⽀援するための補助枠です。
IT導入補助金2025の事業スケジュール
IT導入補助金2025の公募に係る各補助枠の事業スケジュール(申請締切日~事業実施報告期限)は、以下のIT導入補助金事務局の公式サイトで公表されています。
※表示されているのは確定済みの募集回のスケジュールのみです。以降のスケジュールも随時更新されますので、関係者は適宜確認するようにして下さい。
参照先:IT導入補助金2025事業スケジュール| IT導入補助金2025事務局|独立行政法人中小企業基盤整備機構
IT導入補助金2025に係る留意点

IT導入補助金2025の申請・導入に係る留意点及び注意点は以下の5つです。
IT導入補助金2025の受給は1回限り?
IT導入補助金に関し、過去に同じ補助金をもらった中小企業・小規模事業者等がIT導入補助金2025に再度申請して受給できるかという点ですが、結論から先にいえば可能です。
過去にIT導入補助金を申請して採択され受給できた先でも2回目の申請はできます。
ただし2回目の申請については、過去の申請ルールと申請方法、申請条件等が異なっている場合もあるので、きちんと確認した上で対応するようにしましょう。
他の補助金や助成金との併用はできるか?
申請者が気になる点として、IT導入補助金は、国・地方自治体等が実施している他の補助金や助成金等と併用できるかということがありますよね。
結論としては、原則、併用はできません。
ただしIT導入補助金2025と他の補助金や助成金で、補助対象となる事業内容(サービス、ソフトウェア、経費等)が重複しないケースなら、申請して併用が認められる可能性もあります。
他の補助枠との同一公募回での申請は可能?
IT導入補助金2025の中で、他の補助枠との同一公募回での申請ができるかという点ですが、問題ありません。
同一の公募回で複数の枠に同時申請することもできますし、別々の公募回に分けて申請することもできます。(ただし採択されるかどうかは別問題です)
個人事業主でも申請できる?開業したばかりのケースは?
IT導入補助金2025は個人事業主でも申請できます。
ただし申請できる方には、業種ごとに一定の条件が付いているので事前の確認が必要です。
【小規模事業者】
業種・組織形態 | 従業員数(常時使用する従業員) |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
サービス業のうち、宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
さらに申請には、提出書類として青色申告決算書や収支内訳書等の確定申告書が必要ですし、事業実態があることが前提となっています。
また開業したばかりのケースでIT導入補助金2025が申請できるかという点ですが、申請にあたり要件を満たし、必要書類が準備できる方なら開業したばかりの事業者でも申請できます。
ただし実態としては、最低でも開業から1期程度(通常1年間)経過していないと、申請は難しいと思われます。
個人事業主のケースでも述べた通り、申請には直近の確定申告書、納税証明書等の提出が必要であり、これらの書類は最低限、開業から1年以上経過しないと取得できないからです。
IT導入補助金の不正受給をしない、厳しい罰則があるので注意
IT導入補助金の活用や申請にあたっては、補助金の不正受給をしないよう務める必要があります。
補助金の不正受給とは、「要件となっている補助事業を行わず補助金を受給する」「補助事業者になりすまして受給する」あるいは「重要な情報の漏洩をする」等の不正行為をいいます。
そして不正が発覚した場合には、交付決定取消、補助金の返還請求、IT導入支援事業者登録取消等の厳しい罰則が課されます。
特に2025年は、IT導入補助金2025事務局の公式サイトのトップページにわざわざ「IT導入補助金は不正を絶対に許しません」との表記があり、これは事務局の不正に対する強い意思が示されています。
たとえば事業申請者が、ITツール購入時にポイントやクーポンを利用した結果、補助対象の購入額を証明する証憑に記載されている金額と、実際に支払った金額が一致しない場合などでも、事務局に不正を疑われやすくなります。
くれぐれも疑わしい行為はしないよう注意を払って各種手続きを進めましょう。
まとめ
IT導入補助金2025について、前年度2024年からの変更点やIT導入補助金の概要、留意点など、最新情報を含めて、詳しく解説しました。
IT導入補助金2025を利用すれば、ITツールやクラウドサービスの導入、PC等ハードウェア購入の際に掛かる経費に対して一定の補助が受けられます。
業務の効率化による売上アップ、インボイス制度への対応、セキュリティ対策の実施等を検討中の事業者は、IT導入補助金2025をぜひ有効活用して下さい。

税理士.ch 編集部
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