【令和6年度】「イノベーションボックス税制」とは?税理士・会計士が求められること

ビズアップ総研
税理士.ch 編集部

(2024/4/18)

イノベーションボックス税制は近年注目が集まっている制度のひとつです。イノベーションボックス税制を適用することで企業は税制負担というメリットを得られると同時に、社会課題解決にも大きく寄与することが期待されています。

税理士・会計士の観点から、企業への税務コンサルティングを通して、イノベーションボックス税制を提案してみてはいかがでしょうか。

今回は、イノベーションボックス税制の目的や対象についての解説と、税理士・会計士に対して求められる役割をご紹介します。

目次

イノベーションボックス税制とは?

イノベーションボックス税制とは、企業が新しいアイディアや方法を考え、それを具現化して価値を生み出したときの収益に対して税制上の優遇が受けられる制度のことです。

イノベーションボックス税制の目的

企業に対して、新しい技術・製品開発の投資意欲を高めることが目的です。さらには、企業がイノベーションを生み出すことによって国や地域の経済成長の活性化が期待できることから、社会全体の発展や雇用の創出も目的としています。

イノベーションボックス税制の施行時期

イノベーションボックス税制は、令和6年度の税制改正大綱に盛り込まれた新しい税制で、令和7年4月1日から施行予定です。現在は法制度の改正や関連ガイドラインの整備が進行中であり、施行後は7年間の適用期間を経て、制度の効果や国際ルールとの整合性を評価し、必要に応じて見直しが行われます。

イノベーションボックス税制の対象

イノベーションボックス税制の対象は地域によって異なる場合がありますが、一般的には以下が対象となります。

  • 特許権や技術ノウハウに関する収益:技術革新や研究開発によって創出した特許権や技術ノウハウによる収益が対象となることがあります。特許権のライセンス料や技術の使用料などが挙げられます。
  • 著作権に関する収益:創造活動によって生み出された著作権に関する収益が対象となることがあります。ソフトウェアのライセンス料や出版物の売上などが挙げられます。
  • その他:新しい製品やサービスの売り上げなどがイノベーションボックス税制の対象となることがあります。

イノベーション税制との違い

イノベーションボックス税制と似た制度として「イノベーション税制」があります。制度の目的は同じですが、イノベーションボックス税制は特許や技術ノウハウに関する収益に対して税制上優遇があることに対し、イノベーション税制はイノベーション活動全般の収益に対する税制上優遇があります。

つまり、イノベーションボックス制度の対象とならない場合でも、イノベーション税制の対象となる場合があるということです。

イノベーション税制の対象

イノベーション税制も、イノベーションボックス税制と同じく地域によって異なりますが、一般的には下記が対象となると言われています。

  • 新製品開発費:新製品の開発にかかる費用が対象となることがあります。試作品の製造や市場調査をする際の費用などが含まれます。
  • 研究開発費:新しい技術や製品の開発にかかる経費が対象となることがあります。研究者の給与・技術者の給与・設備の購入費・設備の維持費・実験費用などが含まれます。
  • 特許取得費:特許権を取得する際に発生する費用が対象となることがあります。特許権を取得するためには出願手続きや特許庁への手数料などがかかり、これらが控除に含まれます。
  • ソフトウェア開発費:ソフトウェアの開発にかかる費用が対象となることがあります。プログラミングやテスト費・デバッグ(バグ修正)費などが含まれます。

イノベーションボックス税制における税理士・会計士の役割

イノベーションボックス税制における税理士・会計士の役割は、企業がこの制度を最大限に活用するために不可欠です。特にベンチャー企業や技術革新を進める企業にとって、税理士・会計士は戦略的パートナーとしての重要な役割を担います。

税務コンサルティング

クライアントがイノベーションボックス税制の適用を受けられるかどうかを精査し、他の税制措置との調整を行うことで、最適な税務戦略の策定します。企業が開発した新技術が特許を取得した場合、その特許から生じる所得に対する税負担を軽減するアドバイスなどもこれに該当します。

対象経費の確認

研究開発に必要な材料費や外部専門家への支払いなど、イノベーションボックスに関わる具体的な経費を特定し、税制の適用範囲に合致するかの検証を行います。

税務申告・申告サポート

イノベーションボックス税制に関連する情報を整理し、税務申告サポートを行います。書類記入や提出資料の準備などが含まれます。税制の性質上、専門的なテーマを扱うことになりますが、クライアントと密に連携し、対象となる知的財産と、そこから発生した所得を適切に把握・管理することが大切です。

税務調査の対応

企業が税務監査や税務調査を受けた際には、関連する知的財産の詳細やそれに基づく所得計算に関する資料を整備し、税務当局への説明を支援することが求められます。これにより、調査の迅速な解決を図ることができます。

税務戦略提案

長期的な視点でクライアントのイノベーション戦略に合わせた税務計画を提案します。新規プロジェクトの初期段階から参画し、税務面からプロジェクトの実現可能性を高める方法を探ります。

まとめ

イノベーションボックス税制についてご紹介しました。

税理士・会計士のみなさまは、クライアント企業がイノベーションボックス税制を活用する際に重要な役割を担います。クライアント企業のイノベーション活動収益を適切に整理したり、税務上の優遇を最大限活用するためのアドバイスをしたり、税務申告書を準備するなど貢献できることは多々あります。

また、制度活用を促進することも税理士・会計士に求められることのひとつです。企業がイノベーションボックス税制を活用することで経済が活性化し社会発展にもつながるため、積極的に提案していくこともいいでしょう。

【まとめ記事】令和6年度 税制改正について、仕組みや変更点を紹介

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