相続税申告が必要な相続手続きは税理士が活躍できる

2025年以降、団塊の世代が後期高齢者となり、超高齢化社会となりますが、これに伴い、士業の間では、相続関係の業務が増加しています。

税理士も例外ではなく、相続税申告が絡む相続手続きは、税理士に相談したり、依頼するクライアントがたくさんいます。基礎控除が3,600万円からになったこともあり、相続税の対象者も増えています。

税理士が相続税申告や相続関係の仕事を受けるためのポイントをおさらいしておきましょう。

目次

相続税申告は税理士関与割合が約9割

税務申告は税理士の独占業務ですが、税理士の関与割合は、税ごとに異なります。

所得税の申告は、8割の人が自分で申告を行っており、税理士の関与割合は、約2割に過ぎません。

一方、法人税は、自社で税務申告をやる企業は少なく、税理士の関与割合が、約9割に達しています。

そして、相続税も税理士の関与割合が、約9割となっています。

所得税 20.4%
相続税86.3%
法人税89.8%

税理士関与割合(所得税・相続税・法人税) 令和5事務年度国税庁実績評価書(財務省)より

相続税申告は個人が行う場合がほとんどですが、所得税とは異なり、税理士関与割合が法人税並みになっています。税理士としては、相続税納税が必要になる個人のクライアントに対して、積極的にアプローチする必要があります。

相続税申告を税理士に依頼すべき理由を説明する

相続税申告の依頼を受けるためには、相続人の方に、税理士に依頼すべき理由やメリットを理解してもらうことが大切です。

相続税申告書を作成することの大変さ

相続税申告書は、作成すべき書類が多いです。

第1表から第15表まであり、遺産が多額なうえ、銀行預金だけでなく、不動産、株式、生命保険金、退職金と多岐にわたる場合は、作成すべき書類も膨大になります。

個人の方が、その書類すべてを正確に書くには、大変な労力と時間を要します。

相続税・贈与税の申告のしかた・手引きなど(国税庁)

相続財産の評価が難しい

相続税の計算に先立って、相続財産の評価を行わなければなりません。

国税庁が定める「財産評価」に基づき、評価しなければならず、単に、資料に記載されている数字をそのまま埋めればよいというものではありません。

特に不動産や株式の評価は、大変難しく、一般の方が正確に評価することはほぼ不可能です。

不動産の評価方法について解説するのも有効ですが、それだけで理解できる方は少ないですし、個々の事案ごとに異なるため、問い合わせていただけるようにすることが大切です。

財産評価(国税庁)

無駄に税金を支払ってしまう可能性がある

相続財産の評価は、適正に行うべきなのは言うまでもありませんが、一般の方では、相続財産の評価を適正に行うことが難しいです。

また、相続税には控除や特例がたくさんあるため、それら一つ一つを適切に適用して、相続税納税額を減らすことが大切です。

ところが、一般の方が自分で相続税を納税しようとする場合は、控除や特例を見逃してしまい、本来ならば払わなくてよい相続税を支払ってしまうこともあります。

そのため、相続税の控除や特例があることをアドバイスすることはもちろん、税理士に依頼すれば、無駄な相続税を支払わずに済むことをアピールすべきです。

相続税の計算と税額控除(国税庁)

相続税申告は慣れるものではない

所得税の申告は一般の方でも、毎年、確定申告等を行っていれば、慣れることもあります。

しかし、相続税申告は、一生で何度も行うものではなく、ほとんどの方は、親が亡くなった時しか行いません。そのため、一般の方が相続税申告に慣れて、自分でできるようになることは想定できません。

慣れない手続きを自分でやろうとしても多大な労力と時間がかかってしまうため、専門の税理士に依頼すべきであるとアドバイスすべきです。

税理士が関与しないと税務調査の対象になりやすい

相続税申告の税理士関与割合が高い理由の一つとして、税務調査の対象になりやすいことが挙げられます。相続税申告は、被相続人が一生に築いた財産に対して、国が課税できる最後のチャンスと言えるため、税務署の審査も厳しくなりがちです。

とりわけ、相続税申告の作成に税理士が関与していない場合は、税務署も間違いがあるのではないかとの先入観を持って調べるため、税務調査の対象になりやすいと言われています。

税務調査が入り、相続税額が適正に計算されず、相続税が少なかったことが判明した場合は、延滞税や加算税が課されることもあります。こうなると結局、税理士に報酬を支払って依頼した方が、トータルの費用が少なくて済んだという状況になります。

その意味でも、税理士の関与が必要であることをアピールすることが大切です。

相続税申告の流れと税理士の関与場面

相続税申告の流れとどの場面で税理士が関わるのか、おさらいしておきましょう。

まず、相続税申告の流れは次のとおりです。

  1. 相続税申告の必要書類の収集
  2. 遺産分割協議と協議書の作成  
  3. 相続財産の評価
  4. 相続税申告書の作成      
  5. 相続税申告書を税務署に提出

相続税申告の必要書類の収集

相続税申告の必要種類は多数あるため、もれなく集めます。相続手続きに必要な書類と被るものも多いですが、相続税申告だけのために必要な書類もあります。

大まかには次のような書類が必要です。

  • 被相続人と相続人の情報
  • 特例や控除が受けられることを証明する書類
  • 相続財産の情報

これらの書類は、相続人が収集するのが基本ですが、相続人自身で集めることが難しい場合は、税理士に代行を依頼されることもあります。

特に、特例や控除が受けられることを証明する書類は、遺産ごとに異なるため、入念なサポートが必要です。

遺産分割協議と協議書の作成  

被相続人の遺言書がない場合は、相続人同士で遺産分割協議が必要になります。

遺産分割協議は、相続人同士が行うべきことで、税理士は基本的に関与できません。遺産分割調停や裁判が必要な場合は弁護士によるサポートが必要になることもあります。

ただ、遺産分割方法により相続税が異なることがあります。特に、配偶者控除、小規模宅地の特例を活用することで相続税の負担を大幅に抑えることが可能です。

二次相続も見据えて、相続税の節税に有効な遺産分割方法を提案することは、税理士にしかできないことなので、積極的に提案すべきです。

相続財産の評価

相続財産の評価方法の原則は、相続税法22条以下に規定が設けられており、時価で判断するのが原則とされています。

具体的な評価は、国税庁の財産評価基本通達に従って行います。

  • 土地(宅地)は、路線価方式か倍率方式。
  • 建物は、固定資産税評価額。

といったことはよく知られています。

また、上場株式は、被相続人が亡くなった日の終値や、亡くなった月の毎日の終値の平均額等から決められますが、非上場株式の場合は、株主の立場や会社の規模などにより計算方法が異なるため、一般の方では評価が難しいことがほとんどです。

相続に関する他の士業の専門家でも、相続財産の評価については苦手としていることもあるため、税理士が活躍できる場面と言えます。

相続税申告書の作成      

相続税申告書の作成は、税理士が活躍できる場面です。作成すべき書類は、相続財産ごとに異なりますので、前提として相続財産をしっかり把握することが大切です。

漏れがあると、税務調査の対象になってしまうため、見直しも慎重に行います。

相続税申告書を税務署に提出

相続税申告書の提出は、e-Taxを利用することが可能です。

ただ、申告書第1表(続)又は申告書第15表(続)を5枚以上添付する場合は利用できないといったルールがあるため、確認が必要です。

相続税の申告手続(国税庁)

相続税の申告と納付期限は10か月

相続税の申告と納付期限は、相続人が相続開始を知った日の翌日から10月以内です。

相続手続きは、時間がかかることが多いですし、遺産分割協議等はなかなか話がまとまらないこともあります。そのために、相続税の申告と納付期限ぎりぎりになって、慌てて、税理士に相談される方も少なくありません。

ぎりぎりになってから依頼されても、相続税の節税対策を講じることが難しかったり、遺産が多い場合は、そもそも間に合わないこともあります。

そうした事態を防ぐためにも、相続税の相談はできる限り早く、税理士に相談すべきことを周知すべきです。

できることなら、生前からできる相続税の節税対策について、アドバイスを行い、実際に相続が発生した場合は、スムーズに相続手続きのサポートができるようにしておくことが理想です。

まとめ

相続手続きは多岐にわたりますが、その中でも、相続税申告は税理士が活躍できる場面です。

クライアントに対して、遺産の総額が基礎控除額の3,600万円を超える場合は相続税の申告が必要になることと、税率に依頼すべき理由やメリットについて解説し、依頼してもらえるようにしましょう。

税理士.ch 編集部

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