公認会計士試験の勉強法を徹底解説!科目別対策と学習スケジュール
公認会計士は医師、弁護士と並ぶ日本の三大国家資格の一つです。合格率は一次試験(短答式試験)で15〜20%、二次試験(論文式試験)で35〜40%と、膨大な勉強量が要求される狭き門です。
令和5年の金融庁の調査によると、合格者で一番多いのが20〜25歳の人々で、全体の約6割を占めています。この年齢層は受験者も一番多く、将来を見据えた若手社会人や学生の方々が公認会計士試験を多く受験していることがわかります。
この記事では、そんな公認会計士試験に挑戦する若手社会人や学生の皆さんに向けて、効率的な勉強法や学習スケジュールの立て方、各科目ごとのポイントを詳しく解説します。
目次
公認会計士試験の勉強を始める前に知っておくべきこと
それぞれの勉強方法の紹介に移る前に、前提知識として知っておきたいことを紹介します。まず、公認会計士試験自体の概要については、下記記事を参考にしてください。
必要な勉強時間
公認会計士試験合格までに必要な勉強時間は、個々の理解度や学習効率によって異なりますが、一般的には約4,000時間とされています。
例えば、平日に2~3時間、週末に8~10時間勉強する社会人の場合、2~3年で合格を目指すことが現実的です。
一方、大学生は比較的自由な時間が多いため、1.5~2年での合格も可能です。
勉強方法の選択肢(予備校、通信講座、独学)
公認会計士試験の勉強方法には、主に「予備校」「通信講座」「独学」の3つの選択肢があります。
それぞれメリットとデメリットがありますので、自分のライフスタイルや金銭的余裕、学習スタイルを把握し、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
予備校
予備校は、効率的に学習できる環境が整っており、合格率も高いのが特徴です。予備校に通うことで、モチベーションを保ちやすく、他の受験生と切磋琢磨できるメリットがあります。
しかし、費用が高く、通学に時間がかかることがデメリットです。最近は週末のみ授業を行っている学校や、オンライン授業との併用を行なっている予備校もあるので、通いやすい学校も増えています。
通信講座
通信講座は、時間や場所にとらわれずに勉強できるため、社会人にとって便利な選択肢です。費用も予備校に比べて安く済むため、経済的です。ただし、予備校と違って人の目がない分、自己管理能力が求められるため、計画的に学習を進める意志が必要です。
独学
独学は、費用を最も抑えられる方法であり、時間や場所にとらわれずに勉強できます。最近は動画サイトなどで無料で試験の解説動画を観られることも増えてきたため、以前よりも独学がしやすい環境が整っています。
デメリットとしては、公認会計士試験は試験範囲が広いため、全ての科目を独学でカバーするのは難しいという点です。通信講座と同様に学習の進捗管理やモチベーションの維持が課題となるほか、勉強に使用する教材などを見極める必要もあります。
各科目の勉強のポイント
公認会計士試験には複数の科目があるため、各科目の特徴を理解することが大切です。ここでは、短答式試験と論文式試験の主要科目について、具体的な勉強のポイントを詳しく解説します。
短答式試験の勉強のポイント
短答式試験では、各科目の基礎知識を確実に身につけることが重要です。
科目名 | 勉強のポイント |
財務会計論 | 簿記の基礎をしっかりと固めます。日商簿記2級や3級の問題集を繰り返し解き、基本的な仕訳を瞬時に行えるようにします。企業会計原則や財務諸表の基本的な構成要素について深く理解します。テキストの例題や問題集を用いて理論と実務の結びつきを意識しながら学習することがポイントです。 |
管理会計論 | 製造業のコスト管理に関するケーススタディを活用し、実際の企業での原価計算の流れをイメージしながら学習します。経営指針の決定方法や業績評価に関する知識を深めます。過去問を分析し、よく出題される論点を把握しながら、テキストの例題や問題集を繰り返し解くことが重要です。 |
監査論 | 監査業務に必要な理論や制度に関する知識を問われるため、監査基準をしっかりと理解します。具体的な監査手続きをイメージしながら学習するために、監査手続きのフローチャートを作成し、各手続きの目的や具体的な手順を把握します。過去問を解きながら出題傾向を分析し、頻出論点を重点的に学習することが求められます。 |
企業法 | 会社法や商法、金融商品取引法など、企業活動に関連する法律が出題される科目です。会社法を中心に学習し、基本的な条文を暗記します。会社設立の手続や株主総会の運営に関する条文を理解し、その背景や趣旨を把握することが大切です。判例や具体的な事例を交えた学習を行い、過去問や予備校の模試を通じて出題傾向を把握し、知識を定着させます。 |
論文式試験の勉強のポイント
論文式試験では、各科目の深い理解と応用力が求められるため、短答式試験とは異なるアプローチが必要です。
科目名 | 勉強のポイント |
会計学 | 理論と計算を踏まえた応用力が必要です。例えば、財務諸表の問題では、単に数値を計算するだけでなく、背景にある経済活動や企業の意思決定を理解していることが求められます。過去問を繰り返し解き、出題傾向を把握し、実務での適用を意識して学習することが大切です。 |
監査論 | 実際の監査手続をどのように適用するかが問われます。例えば、不正リスクの評価や内部統制の検証方法について具体的に説明できるようにします。論述問題に対しては、論理的な構成と具体例を交えた解答を作成する練習が必要です。 |
企業法 | 知識を基にした応用力が試されます。例えば、ある会社が株主総会を開く際に適用される法的手続きを具体的に説明し、その適法性を論じることが求められます。過去問や模擬試験を活用し、出題傾向を把握しつつ、実際の事例に基づいた論述練習を繰り返すことが重要です。 |
租税法 | 具体的な税務処理やその理論的背景を説明できることが求められます。例えば、法人税の計算において、どのように減価償却を行うか、その理由を論理的に説明することが必要です。計算問題を通じて、税法の適用方法をしっかりと理解し、正確に答える力を養います。 |
選択科目の勉強のポイント
選択科目の勉強は、自分の得意分野や興味に合わせて選ぶことがポイントです。
科目名 | 勉強のポイント |
経営学 | 経営管理や財務管理の基本理論を理解し、過去問やケーススタディを通じて実践的な知識を身につけます。経営戦略や財務分析の手法を学び、企業の具体的な事例を用いて理解を深めます。 |
経済学 | ミクロ経済学とマクロ経済学の二つに分かれ、需要と供給の法則や市場構造、GDPやインフレーションなどの経済指標を学びます。経済学のグラフやモデルを理解し、適切に使えるようにすることが必要です。 |
民法 | 契約法や不法行為法、物権法などの基本的な条文を暗記し、判例を通じて具体的な事例を理解します。契約の成立要件や不法行為の損害賠償について学びます。 |
統計学 | データの分析手法や統計モデルの理解が求められます。回帰分析や分散分析などの手法を学び、実際のデータセットを使って統計ソフトを用いた分析を行う練習が効果的です。過去問を解き、頻出する統計手法を重点的に学習します。 |
効率的な学習スケジュールの立て方
効率的に学習を進めるためには、自分のライフスタイルに合わせたスケジュールを立てることが重要です。ここでは、学生向けと社会人向けの学習スケジュールのモデルケースを紹介します。
その1:学生向けスケジュール
学生は比較的自由な時間が多いため、集中して学習することが可能です。
大学生の場合、授業やアルバイトとのバランスを考慮しながら、以下のようなスケジュールを立てると効果的です。
1年目:基礎固めと短答式試験対策
- 平日:毎日2~3時間の学習時間を確保します。授業の前後や空き時間を利用して勉強するのが良いでしょう。
- 土日:各5~8時間を学習に充てます。週末は長時間の学習が可能なので、過去問を解いたり、模擬試験を受けたりすることをお勧めします。
2年目:短答式試験の合格と論文式試験の準備
- 平日:毎日3~4時間の学習時間を確保します。過去問演習や模擬試験の復習を中心に行います。
- 土日:各6~10時間を学習に充て、論文式試験の対策も始めます。論文式試験の過去問を解き、論述力を鍛えることが大切です。
その2:社会人向けスケジュール
社会人は、仕事との両立が求められるため、効率的な学習スケジュールを立てることが不可欠です。
限られた時間を有効に活用し、無理なく学習を続けるための工夫が必要です。
1年目:基礎固めと短答式試験対策
- 平日:毎日2~3時間の学習時間を確保します。仕事から帰宅後、夕食後の時間を利用して勉強するのが効果的です。
- 土日:各4~6時間を学習に充てます。週末は、平日に学習できなかった内容の復習や、模擬試験の受験に時間を使います。
2年目:短答式試験の合格と論文式試験の準備
- 平日:毎日2~3時間の学習時間を確保します。仕事の後に、短答式試験の過去問演習や論文式試験の準備を進めます。
- 土日:各5~8時間を学習に充て、論文式試験の対策を重点的に行います。特に、論述力を高めるために、模擬試験を積極的に受験することが重要です。
まとめ
この記事では、公認会計士試験の勉強方法について、科目別のポイントに加え、社会人、学生それぞれにおすすめの学習スケジュールを紹介しました。
記事内で紹介したスケジュールはあくまでモデルケースであり、実際には休日出勤が必要な社会人の方や、アルバイトや卒論の準備があり、時間を捻出するのが難しい学生の方もいるかと思います。それぞれの要素を参考に、ご自身に合った勉強法とスケジュールを見つけ、無理なく学習を継続する方法を探ってみてください。この記事が皆様の合格の手助けとなることを願っています。
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